IT・科学
「鉄道+自転車」でもっと早いルートは? 一目で分かるマップを開発

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急いでいるときに、鉄道だけで移動するよりも、自転車を組み合わせたほうが早く到着できる経路はココ――。そんな場所が一目でわかる地図サービスが1月にウェブ上で公開されました。その名も「急がば漕(こ)げマップ」。制作者は「街の新たな見方に気づくきっかけになればうれしい」と話しています。(朝日新聞デジタル企画報道部・篠健一郎)
「急がば漕げマップ」は首都圏が対象。出発駅を指定すると、各駅への最適な移動ルートと平均所要時間が地図上で確認できます。
一般的な鉄道乗り換え案内と異なる点は、①「鉄道のみ利用」②「鉄道+シェアサイクル利用」の2種類のルートが示されて、時間の比較ができることです。
例えば、JR中央線の吉祥寺駅から西武新宿線の上石神井駅までの経路を調べます。
両駅は直線距離では3キロ弱。ただ、路線が並行しているため、「鉄道のみ」の場合は、高田馬場駅に出て西武新宿線に乗り換える必要があり、45分かかります。
一方、「鉄道+シェアサイクル」の場合は、鉄道は使わず、駅周辺にあるサイクルポートからシェアサイクルを使うことで所要時間は27分に。「鉄道のみ」と比べて18分早く着くことができると算出されました。
地図上では、鉄道にシェアサイクルを組み合わせることで、移動時間がどのぐらい変わるのかが駅ごとに数字で示されています。次の予定までの時間が短く、効率的に移動をしたいときに役立ちそうです。
マップを作製したのは「西片トコトコ探索会」。東京大学で都市計画を専攻した、社会人4人からなる有志の集まりです。
鉄道やバスなどの公共交通のオープンデータを使ったアプリケーションのコンテスト「公共交通オープンデータチャレンジ2024」(公共交通オープンデータ協議会、国土交通省主催)への応募を目指し、木村颯希さんの呼びかけでメンバーが集まりました。
議論を重ねる中で話題に上がったのが、「アウトローな乗り換え」です。
深夜の終電間際に乗り換え検索をした際、自宅にできるだけ近い駅まで電車で行き、そこから歩いて帰ることを提案された――。そんな体験を思い出しながら、同じ地域でも、いつもとは異なる地理空間として捉えることができるのでは、と考えたそうです。
メンバーの應武遥香さんは「普段は鉄道の路線に沿って地理空間を認識している人が多いと思います。便利な乗り換えサービスを作るというよりは、その結果を通して、新たな街の見方や楽しみ方に気づくきっかけ作りができないかと考えました」と話します。
さらに、普通列車しか止まらない駅を使うよりも、快速や急行が止まる隣の主要駅まで歩いたほうが早いことがあるという経験談から、自転車を使うことでその選択肢が広げられるのではないかと考え、地図上で鉄道とシェアサイクルを組み合わせた経路案内を作ろうと決めました。
鉄道運行や路線、シェアサイクルのデータは、オープンデータを使いました。
ただ、路線や時刻表のデータを公表していない事業者もあり、メンバーの中井諒介さんと高山広太郎さんらが手分けをして、事業者のウェブサイトを見ながら自力でデータを作製しました。
4人ともウェブ開発の経験と知識はほぼなく、独学で習得。休日や夜間にオンラインでやりとりを重ね、従来の乗り換え案内サービスには見られない、「かゆいところに手が届く」アプリケーションを作り上げました。
マップは、2月にあったコンテストの最終審査の結果、一次審査を経た17作品の中から最優秀賞に選ばれました。
メンバーは「実際にマップを使って遊んでいただき、これまでと違った視点から街を楽しんでもらえるとうれしいです」と話しています。
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