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オークション管理のバイト「シビれる値段交渉」 芸人が感じた醍醐味

ピン芸人の加藤ミリガンさん

「オークション管理」のバイトをしている、ピン芸人の加藤ミリガンさん=筆者撮影
「オークション管理」のバイトをしている、ピン芸人の加藤ミリガンさん=筆者撮影

芸人の仲間内でよく紹介されている、意外なバイトのひとつが「オークション管理」です。芸歴19年目のピン芸人の加藤ミリガンさんは、オークション管理のバイト歴10年近くになる〝ベテラン〟です。そのバイトの経験が、自身の芸風にいい影響を与えているといいます。どんなお仕事か聞いてみました。(ライター・安倍季実子)

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加藤ミリガン:青森県出身。2005年にスクールJCA(14期)へ入学するが中退し、翌年よりフリーのピン芸人として活動スタート。R-1ぐらんぷり2020では準々決勝にまで進んだ実力者。今は腕を磨くために、月に20本前後のライブに出演している。

ブランド品オークションの運営アルバイト

次から次へと思わぬ方向に展開する漫談で会場を盛り上げる、芸歴19年目のピン芸人の加藤ミリガンさん。

芸人活動と並行して、オークション管理のバイトをしています。

パチンコ店や飲食店などでバイトをしていましたが、「仲のいい先輩に『バイト先が潰れそうだ』とこぼしたら、『だったら、うちに来なよ』と誘われました」と話します。

加藤ミリガンさん=ラフィーネプロモーション提供
加藤ミリガンさん=ラフィーネプロモーション提供

「オークション管理は、昔から芸人の中で紹介があったバイト先のひとつだったんで、存在自体は知っていました。ただ、初めてやる業種だったし、当時はマニュアルもなかったので、当初はとまどうことも多かったです。でも、芸人が多くて楽しくやれるし、スタッフの方もやさしくて、気づいたらバイト歴10年になってました(笑)」

仕事内容は、ブランド品を扱う業者間で行われる、クローズドなオークションの運営管理です。

月に3日あるオークション本番日に向けた準備と、売買成立した商品の発送を担います。扱うのはブランドモノのバッグや靴に時計などがメインです。

シフト制で、出勤は月に10日ほど。10時~19時までの1日8時間労働が基本ですが、融通がききやすく、ライブがある日は夕方に早上がりさせてもらえるのだそう。

届いた出品物をダンボール箱から出す加藤さん=本人提供
届いた出品物をダンボール箱から出す加藤さん=本人提供

「出品物が届いたら、出品内容に間違いはないか、傷の有無などをチェックします。その後、商品の写真を撮ってタグをつけ、パソコンにデータを入力してから専用サイトにアップします」

オークション本番の数日前には、参加業者が現物を確認する「下見期間」があり、ほしい商品と購入価格のめどをつけるそうです。

そしてオークション後は、売買が成立して入金確認ができた商品を購入した業者へ発送します。

「1回のオークションの出品数はバラバラで、過去に8000点近く出品された回がありました。あの時は全然終わりが見えなくて、つらくて……今でもよく覚えています(苦笑)」

コロナ禍をきっかけに仕事の一部がオンライン化され、今はサイト上でオークションを行っていますが、コロナ前は大きな会場でリアル開催していました。

「当時は、市場の競りのようなスタイルで入札していました。専門用語も飛び交って、めちゃくちゃ活気がありましたね。出品者と入札者の値がマッチしない時に間に入って、価格を調整してもらえるように交渉する『保留交渉』を担当していたんですが、今考えると、これがこのバイトの醍醐味でしたね」

ドキドキハラハラの値段交渉

オンライン化と、今は加藤さんがライブに力を入れているため、保留交渉役は少なくなりました。

「当時は顔と顔を突き合わせて値段交渉をしていたんで、たまにシビれることが起こったりするんですよ」と振り返ります。

お客さんに値段交渉の電話をする加藤さん=本人提供
お客さんに値段交渉の電話をする加藤さん=本人提供

元々ブランド品に興味がなく、バイトを始めたばかりのころはブランド名や相場を知らなかったそうです。

出品者にも購入者にも気持ちよくオークションをしてほしいという気持ちもあり、「どちらにも『任せてください!』とか調子いいことを言ってました。それで交渉がうまくいくと、『加藤くんのおかげだよ。本当にありがとう!』とめちゃくちゃ感謝されるんですが、反対に、どちらも強気の値段を出して交渉が長引いたり、交渉成立しなかったりすることもあって、その時はめちゃくちゃ怒られました」と苦笑します。

「それからは心を入れ替えました。回を踏むごとに少しずつ相場感もついてきて、お客さんの提示する値段が現実的かどうか分かるようになってきたんです。基本的な対応は変えずに、でも期待を持たせたらいけない。そう思って言葉を選ぶようになると、難しそうな交渉もうまくいくようになりました」

「気持ちよくオークションをしてもらいたい」という気持ちで働いていた経験は、加藤さんの芸風に大きな影響を与えたと言います。

「どんな場面でも笑顔で。プライドは持ちつつも頭は低くして。相手を楽しませるためには、手八丁口八丁も意外と大事。僕の芸風と見事にマッチしています」

漫談、アクセル全開で「マイワールドを展開」

かつて、R-1ぐらんぷりで準々決勝にまで進んだ実力を持つ加藤さん。チャンピオンになりたいという思いは年々深まっています。

「目標のR-1ぐらんぷり優勝のために、今はバイトの出勤数を抑えてライブに力を入れています。出演するのは、ひと月20本くらいで、1日にライブをはしごすることもあります」

「漫談に必要なのはマイク1本だけ。『ここは宇宙』と言えば、その場を宇宙と仮定して話が展開できる。めちゃくちゃエコで自由な演芸です」=筆者撮影
「漫談に必要なのはマイク1本だけ。『ここは宇宙』と言えば、その場を宇宙と仮定して話が展開できる。めちゃくちゃエコで自由な演芸です」=筆者撮影

加藤さんが考える漫談の魅力は、ストッパー役がいないために、アクセル全開で「マイワールドを展開できる」ことだと言います。

「関係ない話題を自由につないでいくから話がアチコチに飛ぶので、きっとお客さんは『この人、何言ってるんだろう?何でか分かなんないんだけど、笑っちゃう』という感じなのでしょう」と分析します。

テレビのネタ番組で漫談する芸人は少なく、漫談の面白さに気づいていない人が多いのではないか……と憂慮する加藤さん。

「実は、漫談芸人ってライブシーンではけっこういるんですよ。だから、今後は漫談がたくさんの人の目に触れるように色々なライブに出ていきたいですし、自主ライブや単独ライブもやりたいです。そうやって、少しずつ漫談の面白さが世間に広まればいいなと思います」

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