連載
#15 はたらく年末年始
「これがあるから勤務が楽しみ」ZOZO、年末年始でも人気の理由
クリスマスプレゼントや福袋など、年末年始はネット通販の繁忙期です。加えて、年の瀬は人手の確保に苦労する時期でもあります。ファッション通販大手のZOZOTOWNで、年末年始の働き方や、現場を動かすための工夫、思い出などを聞きました。(朝日新聞デジタル企画報道部・武田啓亮)
2024年12月中旬、茨城県つくば市にあるZOZOTOWNの配送拠点「ZOZOBASEつくば1」では、年末年始のセールで購入された衣料品を発送する作業が佳境を迎えていました。
配送作業を行うエリアでは、商品を乗せたカートを押す人が行き交い、ベルトコンベアの上を在庫からピッキングされた商品が絶え間なく流れていきます。
カートに入った状態の商品が続々と梱包作業のラインへと運ばれていきます。
作業をしているスタッフの前には格子状に細かく仕切られた棚があり、それぞれの区画には数字が書かれた樹脂製の板でフタがされていました。
スタッフがカートから取った商品のバーコードを読み取ると、「ピロン」という電子音が鳴り、たくさんあるフタのうち1カ所だけが開き、そこに商品が入れられ、仕分けられていきます。仕分けられた荷物はダンボール箱に梱包され、注文した人に届く仕組みです。
この拠点での作業をとりまとめている関俊彦さんが説明してくれました。
「商品をお客様ごとに迅速かつ正確に仕分ける仕組みです。複数の注文を一つの荷物として発送する場合でも、こうすることでヒューマンエラーを防ぎながら素早く梱包することができるのです。自動化できる部分については年々自動化が進められていますが、人間の目と手が必要になる作業もまだまだ多いです」
商品の発送のための作業を行うエリアは、コンクリートの床と高い天井の、いかにも倉庫という雰囲気です。
しかし、不思議と寒さは感じません。
「快適に作業できるよう、施設内は温度管理されています。特に夏場は体を動かす作業者に合わせて冷房を効かせているため、動かずにじっとしていると、少し肌寒く感じるくらいです」と関さん。
記者は学生だった10年ほど前、夏休みに別の通販会社の倉庫で働いたことがありますが、その時は空調設備が十分ではなく、汗だくになりながら働いていた記憶があります。
「作業環境が快適でないと効率も落ちますし、何より『ここで働こう』というモチベーションが下がってしまいますよね」
ZOZOBASEでは休憩スペースの整備にも力を入れているそうです。
配送作業スペースとはがらりと変わって、隣接する休憩スペースは広々としており、暖色系の落ち着いた色合いで統一されています。
イスやテーブルは木製で、暖かみのあるお洒落なデザイン。まるでカフェかレストランのようです。
コンビニや自販機類も設置されているため、外に出ることなく食事や飲み物を購入することができます。
「休憩スペースはアルバイトのみなさんからも評価されているポイントの一つです。他の物流倉庫などでも働いた経験のある方から『次もまたZOZOで働きたい』と言ってもらえるのは嬉しいですね」
「人気のバイト先」となっているZOZOBASEですが、それでも年末年始は人手が不足しがちだそうです。
「年末年始はクリスマスプレゼントや福袋などで発送する商品の数が増えます。一方で休みを取る方が増えて働き手は減るため、一年で最も忙しい季節です」
こうした繁忙期に働いてくれる人のために、ちょっとした「お楽しみ」も用意されているそうです。
総務部の平澤美樹さんによると「飲み物や食べ物などの差し入れに加え、毎年、クリスマスの前後にはプレゼント抽選会が恒例行事になっています。ハズレ無しで、楽しみにしてくれるバイトさんも多いです」とのことです。
抽選会の景品は「参加賞」のお菓子のつかみ取りにはじまり、湯沸かしポットやトースターなどの電化製品、特賞は東京ディズニーリゾートのペアチケットなど豪華な賞品が並ぶそうです。
「他にもお正月に書き初めをやったり、オリジナルデザインの升を配ったりした年もありました。警備員の方から『これがあるから、毎年、年末年始の勤務が楽しみなんだ』と言ってもらえた時は嬉しかったです」と平澤さんは話します。
どうしても商品の発送作業が逼迫している場合は、「夜勤」と呼ばれる特別な勤務体制を設けて夜通しで発送して乗り切る年もあるそうです。
「通常の拠点の稼働時間は午前8時から午後11時までなのですが、年末年始の繁忙期には午後8時から翌朝5時までのシフトを設け、発送作業を続けます」
最後に夜勤体制が「発動」されたのは2年前の年末のことだったそうです。
「急な呼びかけだったこともあり、人繰りは厳しかったです。普段と比べると、夜勤に入ってもらえたのは3分の1程度の人数でした」
ちょっとした「事件」が起きたのは、関さんたちが休憩時間に入った深夜0時過ぎのことでした。
平澤さんたち総務部のメンバーから、夜勤に入っている人たちへ差し入れが届きました。
「ゼリー飲料やお菓子類、プロテインバー、それからカップ麺がありました。アルバイトのみなさんと一緒にありがたくいただきました」と関さんは振り返ります。
みんなでカップ麺にお湯を注いだ後に、関さんはあることに気づきました。
「あれ?箸が無い」
いつも現場をサポートしてくれる総務ブロックの人たちも、急な夜勤体制に、いかに慌てて用意したかが分かるエピソード。
互いの苦労に思いを馳せつつ、差し入れの中にあったトッポを箸代わりに、少し伸びてしまった麺をすすったそうです。
最近は配送拠点が増強されているため、年末年始に夜勤をする機会は減っているそうです。
「とはいえ、忙しいことには変わりありません。クリスマス商戦が終わったら、その後はすぐに福袋ですから、1年で一番活気のある季節です」と関さん。
ZOZOTOWNでは11月末ごろから福袋の取り扱いが始まっており、ブランドによっては、すぐに売り切れてしまうものも少なくないそうです。
「年末年始に使用したい商品は少し早めに注文していただければ、お客様には早く確実に商品が届き、私たちも注文が分散して助かるのでWin-Winになるのではないかと思います」
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