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#67 イーハトーブの空を見上げて

スコップ三味線、バチは栓抜き 毎年開催の大会、コンサートさながら

スコップ三味線を披露する参加者
スコップ三味線を披露する参加者

目次

「イーハトヴは一つの地名である」「ドリームランドとしての日本岩手県である」。詩人・宮沢賢治が愛し、独自の信仰や北方文化、民俗芸能が根強く残る岩手の日常を、朝日新聞の三浦英之記者が描きます。
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イーハトーブの空を見上げて

まるでアイドルのコンサート…

先週に引き続き、岩手で取材をしていて「なんだ、こりゃ?」と思ってしまった出来事シリーズ第2弾。

雪かき用のスコップを津軽三味線に見立て、栓抜きでたたいて音楽を奏でる北東北の宴会芸「すこっぷ三味線」の大会が毎年、岩手県北上市で開かれている。

「すこっぷ三味線・ワールドカップ・チャンピオンシップ・2024・イン・岩手」

2014年に近隣のスキー場で開催されて以来、11回目の開催だという。

北海道や東北、関東の各地から約130人が参加し、音楽に合わせて「カンカンカン!」と得意のバチさばきを披露する度に、大きな笑い声と惜しみない拍手が送られる。

超満員の会場からは音楽に合わせてうちわを振ったり、大きな声で名前を呼んだり、まるでアイドルのコンサートさながらだ。

誰でも間違いなく人気者に…

「実は今、全国的にもスコップ三味線の人気がウナギのぼりなんです」
 
第7回すこっぷ三味線世界大会のチャンピオンである「ひょっとこ太郎」さん(71)が興奮気味に教えてくれた。

「誰でも気軽に始められ、温泉旅行でも間違いなく人気者になれる。笑いながら元気になれる健康法でもあるんです」

団体の部で優勝したのは、宮城県加美町から出場したチーム。

代表の星佳友子さんは「冬場の雪かき用のスコップを洗って持ってきました。ストレス解消にもなり、仲間とみんなで楽しんでいます」。

「あなたもやってみない?」と会場で、参加者の中年女性たちから誘われた。

「岩手勤務なら、雪かき用のスコップ、2、3本持ってるでしょ?」

スコップと栓抜きを渡され、見よう見まねで「カンカンカン」とやると、女性の一人が「随分と脈があるわ。来年の大会、チャンピオンを狙えるかもよ!」と言って笑った。

スコップ三味線ってこんな音色

(2024年11月取材)

三浦英之:2000年に朝日新聞に入社後、宮城・南三陸駐在や福島・南相馬支局員として東日本大震災の取材を続ける。
書籍『五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後』で開高健ノンフィクション賞、『牙 アフリカゾウの「密猟組織」を追って』で小学館ノンフィクション大賞、『太陽の子 日本がアフリカに置き去りにした秘密』で山本美香記念国際ジャーナリスト賞と新潮ドキュメント賞を受賞。
withnewsの連載「帰れない村(https://withnews.jp/articles/series/90/1)」 では2021 LINEジャーナリズム賞を受賞した
 

「イーハトヴは一つの地名である」「ドリームランドとしての日本岩手県である」。詩人・宮沢賢治が愛し、独自の信仰や北方文化、民俗芸能が根強く残る岩手の日常を、朝日新聞の三浦英之記者が描きます。

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