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「即供養!」でバズった僧侶芸人 「坊主バー」でアドリブの仏教法話
お笑いコンビ「ドドん」石田芳道さん
東京・四谷にある一風変わったバー「坊主バー」。スタッフはみんな現役の僧侶で、その中にお笑いコンビ「ドドん」の石田芳道さんの姿もあります。「お笑い」と「僧侶」は相性がとてもいいと語る石田さん。芸へのいい影響とは?(ライター・安倍季実子)
今年、芸歴15年目を迎える「ドドん」。ボケの石田さんは現役の僧侶でもあり、東京・四谷にある「坊主バー」で10年ほどアルバイトをしています。
坊主バーは2000年にオープンしたアットホームなバーで、スタッフはみんな修行を終えて、所属宗派に登録された籍を持つ僧侶です。
仏教用語にちなんだ名前のオリジナルカクテルと、おいしくてヘルシーな精進料理を味わいながら、現役の僧侶と楽しいトークができると人気のバーです。
石田さんが坊主バーでアルバイトをはじめたのは、芸人の仕事がきっかけでした。
「事務所の先輩のキャイ~ンさんのラジオ番組の企画で、坊主バーに潜入レポートしました。最後の決めゼリフ『僕も働いていいですか?』と言ったところ、『いいですよ』と言われたんで、すぐに履歴書を持っていきました」
当時していた居酒屋バイトで、ホール・キッチン・ドリンカー・レジ締めまで、何でもこなしていた石田さん。
「普通の居酒屋よりも、僧侶のいるバーでバイトしている方が芸人として面白いだろうと思った」そうです。
石田さんの考える坊主バーのウリは、「沈んだ気持ちで訪れても、お店を出る頃には清々しい気分になっていること」です。
「お客さんには、好きなだけ話をしてもらって、愚痴を置いて帰ってもらうように心がけています。『まわりにちょうどいい相手がいないから』とライトに相談される人もいれば、泣きながらやってくる人も。その場合は別室に案内して話を聞くこともあります」
「抱えているものを吐きだして気持ちが軽くなり、お客さんが笑顔になって帰っていく姿を見る度に、やっていてよかったと思う」と話します。
バイトのある日は、ライブの出番が終わり次第、坊主バーに向かいます。
閉店時間の深夜1時を過ぎたら、残っている常連さんの接客をしながら片付けをはじめて、お店を出るのは深夜2時ごろ。
インバウンドの観光客が戻ってきたこともあり、国籍・性別・年齢を問わず、様々なお客さんが訪れるため、四谷にあるお店は常に満席状態です。
英語はあまり得意ではないので、会話中に翻訳アプリでボケる苦労もありますが、「毎回、色んな人と色んな話をするのが楽しい」と石田さん。さらに、「『仏教って、意外と面白いんですね。勉強になりました』などと言われると、僧侶としてのやりがいも感じる」と笑顔で話します。
また、お客さんとの会話の中には、ネタのヒントが隠れていることもあるのだそう。
「2015年に『歌ネタ王決定戦』(毎日放送)で決勝戦に残ったのですが、この時に披露した煩悩の歌ネタは、実はお客さんとの会話から思いつきました」
「僧侶」であることが、芸風とバイトでいずれもメリットがあることを度々感じるそうです。
さらにバーでは毎日2回開催される短い法要と法話タイムがあり、お笑いの勉強になっているのだそう。
「毎回10分くらいですが、お客さんにお経が書かれた紙を配って、一緒に読んだり、その時々のテーマに合った説法をしたりします。お釈迦様の教えは生きてる方に対するものの方が多いんで、煩悩とは何かといったことや、心が軽くなるような説法を毎回アドリブでやります」
僧侶として説法の練習になっているのはもちろん、お客さんに興味を持ってもらえるように、分かりやすく面白く伝えるなどを意識しながら話すので、「めちゃくちゃお笑いの練習にもなっています」と笑います。
芸人でも、バイトでも「お笑い×仏教」を大事にしてきた石田さん。
デビューした後に東日本大震災があったため、一部では「不謹慎だ」という声もありましたが、ブレずに「お笑い×仏教」を続けていくうちに、理解者が増えてきたのだといいます。
「お釈迦様の教えを皆さんに伝えたいけど、伝える場所や術が少ないことが、仏教界のひとつの課題でした。芸人を始めて15年。その間に考え方や価値観が変わってきたようで、お寺で開催される仏教のイベントに芸人として呼ばれるようにもなりました」
さらに、2018年に「仏教×笑い×音楽」をコンセプトにしたエンターテインメントバンド「THE 南無ズ」での活動をスタート。
YouTubeで「敵を倒したら即供養」というルールでゲームをしたところ大バズりしました。
「芸人を始めた時は、仏教とこんなに深く関わる芸人人生になると思っていませんでした。でも、僕らのネタや活動を通して、仏教に興味のない人たちに関心を持ってもらえるとわかり、お笑いが仏教の入口になってもいいんだと自信がついてきました。今後も、入門編のお坊さんとして貢献できればいいなと思います」
芸人としての目標は、ラストイヤーである今年のM-1グランプリで準決勝以上に残ることです。
「これまでの最高成績は準々決勝なので、今年は何とかして準決勝に行きたいですね。やはり本業は芸人なので、悔いの残らないように力を出し切りたいです」
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