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なぜ芸人がクレープ屋さんでバイト?「なりきる」接客が生きるコント

お笑いトリオ「青色1号」の榎本淳さん

クレープの仕上げに集中する、お笑いトリオ「青色1号」の榎本淳さん=本人提供
クレープの仕上げに集中する、お笑いトリオ「青色1号」の榎本淳さん=本人提供

手軽に食べられるクレープ。今も昔も人気のスイーツですが、お笑いトリオ「青色1号」の榎本淳さんは、クレープ店でバイトをして5年になります。ディズニーでのバイトの接客経験をいかしつつ、仕事で入る「スイッチ」はコントの時にも生きてくるそうで…。どんなお仕事なのか、聞いてみました。(ライター・安倍季実子)

榎本淳:大学4年生の時に、太田プロエンタテイメント学院(6期)に入学。当初はカミムラさんとコンビ「青色1号」を組んでいたが、仮屋さんが加わりトリオに。2022年に「キングオブコント」では準決勝に、「ABCお笑いグランプリ」では決勝まで進んだ実力派。現在は月に約20本のライブに出演している。

研修1日でクレープの焼きをマスター

「クレープ屋の1日は、生地の準備や材料の仕込みからはじまります。僕は早番なので、10時半から15時まで、週1日ほど働いています」

そう話すのは、2019年からオープニングスタッフとしてクレープ屋さんでバイトをしている芸人の榎本淳さんです。今年でバイト歴5年目になります。

なんと、バイト先のオーナーは、「R-1ぐらんぷり」2014のチャンピオンのやまもとまさみさんなのだそう。

青色1号(左:カミムラさん、中:榎本さん、右:仮屋さん)=太田プロダクション提供
青色1号(左:カミムラさん、中:榎本さん、右:仮屋さん)=太田プロダクション提供

養成所を卒業して事務所に所属できたタイミングで、それまで続けていたディズニーリゾートのバイトを辞めた榎本さん。それからは、地元の小学校で学童クラブのバイトをしていました。

「ある時、地元の近くでクレープ屋さんがオープンすると知りました。しかも、オーナーが芸人の大先輩。面識はありませんでしたが、きっと安心してバイトできるだろうと思って応募しました」

接客には慣れていましたが、初めての飲食店バイトということで、当初は調理に対して不安もあったといいます。

「バイトに受かったはいいけど、うまく生地が焼けるか不安でしたね。性格的に、ちょっと心配性なんです(苦笑)。あと、納得できるまで突き詰めたいタイプなので、焼き方を教わった日に、YouTubeで動画を見て自分なりに勉強しました」

クレープをつくる榎本さん=本人提供
クレープをつくる榎本さん=本人提供

すると次のバイトでは「もう一人で焼けるね」と言われ、異例のスピードで合格。その日から店頭に立ち、スタッフデビューしたといいます。

「週末などの忙しい時以外は、基本的にスタッフは一人です。シフトが早番というのもあって、平日は割とゆったり営業できるんですが、週末や祝日は待ちの行列ができることもあります。そういう時は、待たせているのが申し訳なくなって、今でもたまにテンパることがあります」と苦笑します。

シーンにあわせて変わる「接客」

研究熱心な榎本さんは、プライベートでもクレープ作りを自分なりに研究しているそう。

「もちろん、お店のレシピをきちんと守った上でですが、クレープがおいしく見えるように、巻き方や盛り付けに気を配っています。外出先で他のクレープ屋を発見したら、作り方を見たり、実際に食べてみたりすることもあります」

そうして完成したクレープは、「おいしかったです」「また来ます」といった嬉しい言葉となって返ってくるのだそう。

榎本さんがバイトをするクレープ屋(常設のキッチンカー)
榎本さんがバイトをするクレープ屋(常設のキッチンカー)

また、大型スーパーが入る商業施設の入口という立地柄、家族連れのお客さんが多いため、子どもたちとのコミュニケーションも生まれます。

業種は違うけれど、ディズニーと学童クラブでの経験が活きているといいます。

「ディズニーのバイトでは、受け持つエリアの住人になりきって言葉遣いも変えてコミュニケーションを取るので、お客さんの前に行く時にスイッチみたいなのが入るんです」

「でも、ディズニーリゾートにはディズニーファンが集まりますが、クレープ屋には小さい子からお年寄りまで幅広くいろんなお客さんが来ます。来店されたお客さんたちに気持ちよく過ごしてもらおうと、ディズニーとは少し違うスイッチが入っているかもしれません」

「小さな子から『このクレープください!』『ありがとうございます!』と元気よく言われるのも嬉しいです」=筆者撮影
「小さな子から『このクレープください!』『ありがとうございます!』と元気よく言われるのも嬉しいです」=筆者撮影

目指すは賞レースでの優勝

バイト中は、その場に適したスタッフになりきろうと自然とスイッチが入るという榎本さん。

何かになりきることはコントにも通じていて、お笑いトリオ「青色1号」の音響や小道具を使わずに、演技とストーリーで笑わせるという魅力にもリンクします。

「トリオなので、足し算・掛け算の仕方はいろいろありますし、3人のうちの誰にフォーカスを当てるのかで、様々なネタが作れます」と榎本さん。

「ただ、トリオならではの難しさもあります。例えば、2対1の構図になりやすかったり、自由度が高い分コントロールも難しかったりします。そのトリオにしかないスパイスをどうやってうまく追加するのかが、ポイントのひとつかなと思います」

一昨年は「キングオブコント」で準決勝、大阪の若手の登竜門「ABCお笑いグランプリ」(ABCテレビ)で決勝まで進んだ青色1号が今、目標にしているのは賞レースでの優勝です。

「どっちもめちゃくちゃ嬉しかったんですが、ABCの方は東京予選ではウケたけど、大阪での決勝ですごいすべっちゃって……。ABCは出場条件が芸歴10年目まで。僕たちは今年ラストイヤーなんで、今度こそ決勝で関西の人たちにウケたいというのがあります」と意気込みます。

「今度こそ」という思いがあるという榎本さん=筆者撮影
「今度こそ」という思いがあるという榎本さん=筆者撮影

また、「青色1号は、いい感じに準決勝・決勝に進んでも、最後に逃すというジンクスがあるんで、それを払しょくしたい」という裏テーマもあるのだそう。

賞レースにこだわる理由は、ネタを大切にする芸人でいたいから。また、芸人として売れるために必要なピースだからだと話します。

「テレビもライブも、それ以外の仕事でも選ばれるのは、やっぱりチャンピオンだと思うんですよね。だから、賞レースの決勝に残るために、今は月に20本前後のライブに出ています」

ネタ番組への思いも強く、「ENGEIグランドスラム」のようなネタの特番も憧れだといいます。

「そして、テレビを見たバイト先の人たちに『あの芸人さん、実はうちのスタッフだったんだよ』と自慢してもらえるような、そんな恩返しができたら嬉しいです」

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