連載
#88 夜廻り猫
「家の周りの落ち葉をはいて」夫にそう伝えたら… マンガ夜廻り猫
「ちょっと外を掃除してくるわ」と出かけた夫。お隣さんに文句を言われないように、「自宅周りをはいて」と伝えたら……。「ハガネの女」「カンナさーん!」などで知られる漫画家の深谷かほるさんが、SNSで発表してきた「夜廻り猫」。今回は、夫と暮らす女性のエピソードです。
きょうも夜の街を回っていた猫の遠藤平蔵。心の涙の匂いに気づきます。
猫と暮らしている夫婦。夫が「ちょっと掃除してくるわ」と言い、女性が「あら大丈夫? 助かるわ」と応じます。
お隣さんから、いつも「うちの敷地に、またお宅の落ち葉が」と指摘されている女性。夫を追いかけると、自宅のはるか向こうを掃除していました。
近寄って「うちの周りをはいてよ。叱られるんだから」と伝えると、夫は「母さんは視野が狭くていけない」とにやり。「俺は地球を掃除してんだ」と天を仰ぎます。
そう言って笑う夫につられて、女性も思わず「あっはっは」と笑います。
そんな女性の心の涙の匂いに気づいた遠藤が、理由を尋ねると、女性は「夫がね…がんの手術するの 明日入院」とつぶやきます。
「無事に帰れますように また地球を掃除できますように」と願う女性。遠藤も手を合わせて祈るのでした。
作者の深谷かほるさんは、何かを思い悩んでいたとき、ふと聞こえてきた「ひとこと」をきっかけに、今回のマンガを描いたといいます。
「誰かに怒られたとき、『それは違う』と言いたくても言えないことも、『そんな言われ方は不当だ』と思うこともありますよね。そして、逆に自分が誰かへ不当なことをしてしまうこともあると思います」
「私などは、いつもそんなことでくよくよと考えているんですが、ある時、ひと様の会話の一部が不意に聞こえたんです」
『いいさ、俺は地球を耕してんだ、ハハハ』
「ふわっと、私の胸に溜まった、せせこましい悔いが消えた気がしました」と深谷さんは振り返っています。
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