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「キングオブコント2023」本格的に競技化が始まった〝大会元年〟

『キングオブコント2023』決勝の模様を放送したTBS本社
『キングオブコント2023』決勝の模様を放送したTBS本社 出典: 朝日新聞社

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今月21日、日本一のコント師を決定する大会『キングオブコント2023』(TBS系)決勝の模様が放送され、サルゴリラが見事16代目王者に輝いた。たびたび審査員の口から「レベルが高い」との言葉が出る中、上位3組のネタは何が際立っていたのか。今大会の特徴を振り返る。(ライター・鈴木旭)

例年以上にレベルの高い大会

「(筆者注:審査が)めちゃくちゃ難しかったです。本当、3位4位ぐらいが優勝してても、何年か前ならぜんぜんおかしくなかったレベルでしたね」

今月21日に放送された『キングオブコント2023』のラストでダウンタウン・松本人志はこう口にした。その言葉の通り、今年は例年以上にレベルが高かった。

サルゴリラが歴代最高得点の964点で優勝したのは、実際に決勝メンバー全組が面白く、点数を上げざるを得なかったのだと思う。そんな中で勝負を分けたものとは何か。今大会の特徴を振り返ってみたい。

ファイナリストは、ゼンモンキー、隣人、ファイヤーサンダー、カゲヤマ、サルゴリラ、ラブレターズ、蛙亭、ジグザグジギー、や団、ニッポンの社長の10組。結成4年目の若手から4度目の決勝進出を果たした中堅まで実に多種多様なメンバーがそろった。

とはいえ、ファイナルステージに進出したサルゴリラ、カゲヤマ、ニッポンの社長は、“ネタにインパクトがあった”という点で共通している。それは、審査員コメントからも感じたことだ。

審査員は、松本人志、東京03・飯塚悟志、バイきんぐ・小峠英二、ロバート・秋山竜次、かまいたち・山内健司の5人で、2021年から変動はない。存在感だけでなく、腹落ちする採点と分析力からも、しばらく顔ぶれが変わることはないのではないか。
 

今大会の色を決めたカゲヤマ

大会のトップバッターがカゲヤマだったことは、今大会を象徴しているように思えてならない。彼らが1本目で披露したネタは、「得意先の極秘資料をなくし、料亭の一室で待つ先方に謝罪する」というものだった。

先方が待機しているであろう部屋の前の廊下で、しくじった後輩(タバやん。)が先輩(益田康平)に戸惑いつつ相談。すると、先輩が「今回は俺が代わりに謝ってくる」と襖を開けて飛び込み「申し訳ございませんでしたぁ~!」と連呼する。

堪え切れなくなった後輩が「一緒に謝ろう」と襖を開けると、下半身裸で土下座する先輩のおしりが現れる。逆側の襖を開けると、なぜかそちらも先輩のおしり。毎度その姿を見て襖を閉め、戸惑い続ける後輩のリアクションに笑ってしまう。

ともあれ、先方の機嫌を取った先輩が部屋から出てくるが、今度は後輩が新商品のサンプルを忘れたことが発覚し、同じ要領で先輩の裸ネタがエスカレートしていくネタだった。まさにインパクトの強さとリアクションの面白さが光ったネタだ。

審査員の松本が「(筆者注:『キングオブコント2015』で披露した)ロッチの『試着室』の進化系」と語っていたように、襖の開け閉めで一貫して臨場感をキープする秀逸なコントだった。

彼らは1本目で469点という高得点を叩き出し、見事ファイナルステージへと駒を進め「トップバッターは不利」という賞レースのジンクスを覆した。優勝こそ逃したものの、堂々の準優勝と言えるのではないか。
 

狂気で笑わせたニッポンの社長

カゲヤマに続き、今大会3位となったのがニッポンの社長だ。1本目は「同じ女性を好きになった2人の男が、フランスへ飛び立とうとする彼女を巡ってケンカする」という青春ドラマのワンシーンをパロディー化したものだった。

最初から辻はナイフを持ち、ケツは丸腰でケンカする。次第に辻の武器が、銃、手榴弾、地雷とエスカレートしていくが、なぜかケツは刺されても撃たれても死なない。むしろ、辻が劣勢なままストーリーは展開していく。

交わされるセリフもアベコベで、辻がどんな手を使ってもケツは「もっと思いっきりこいよ!」「卑怯な手を使ってでも勝ちにこいよ!」と動じることなく、時折「今のはちょっと効いたぜ」などと反応するため、見る側はその“ズレ”に期待することになる。

おかしいのは卑怯なケンカを続ける辻か、それとも何をされても死なないケツなのか。ベタなパロディーを、ブラックかつ非日常的なシステムに落とし込んだ彼ららしいコントだった。

審査員の小峠は、「狂気の連鎖というか。撃ったりとか切ったりとかバーンって。普通引くんですけど、それがウケてる感じが僕はなんか初めて見てすごいなと思いました」と称賛。

飯塚は、「めちゃくちゃなようでちゃんとルールがしっかりしてるというか。『ケツくんが不死身なんだ』って飲み込んじゃったら、あとはもうこの2人の日常」と突飛なキャラクターながら一貫性のある世界観を評価した。

カゲヤマと1点差でファイナルステージに進んだが、そこで明暗を分けたのはリアリティーだったと感じてならない。カゲヤマは「優秀な部下が部長の机にうんこを置く」という日常の狂気を描いたのに対し、ニッポンの社長は「盲腸の手術で、なぜか異常に臓器を取り出す医者」という、やはりブラックで非日常的なネタで臨み3位となった。

飯塚がカゲヤマのネタに対して「あんなぶっ飛んだ人だけど、仕事はちゃんとできてっていう。本当になんかいそうな気がして」と口にしていたように、「周りにいてもおかしくない」「今まで描かれていない変わった人」という新鮮な共感が、見る者の感性をもっとも刺激するのかもしれない。

キャラの深みで勝利したサルゴリラ

インパクト、リアリティーという2つの武器を併せ持っていたのが、今大会の王者となったサルゴリラだ。とくに1本目のネタは、よくある設定ながらキャラクターに奥行きが感じられた。

テレビディレクター(赤羽健壱)が“ルール”と名乗るマジシャン(児玉智洋)に特番の出演を持ち掛けたものの、「小箱にカシューナッツ、中箱にマカデミアナッツ、中箱Bにバターピーナッツを入れ、マジシャンのパワーで入れ替える」という地味でわかりにくいテーブルマジックを披露され困惑する。

カードマジックに変えるよう促すも、「こっちもわかりやすいですけど……」と渋々受け入れるマジシャン。続いてのカードマジックで「冬の筑波山のカードをパソコンケースに、夏の筑波山のカードをパソコンケースBに……」と既視感のある展開を見せるとディレクターが激怒。

最後は「靴下にんじんをイカ箱に入れると、ペンチピーチになる」という意味不明の小道具が飛び出し、呆気にとられるというネタだった。

さりげないセリフによって、家族から距離を置かれているであろうマジシャンの哀愁が透けて見える作りも巧みだ。この点を審査員の小峠は「途中で出てくる『市役所(※筆者注:ネタ中では「区役所」)行かなくちゃいけない』とか『家で居場所がない』っていう、あそこでやっぱあいつの人間性が出るというか。それでよりバカバカしさに深みが増した」と高く評価していた。

トップ通過したサルゴリラは、2本目で「甲子園出場の夢を果たせなかった生徒に対し、あり得ないほど『魚』に例えて教訓を語る野球部の監督」というネタを披露。こちらも状況設定は真新しいものではないが、コンビの演技力と“うまいこと例えようとして失敗する大人”のデフォルメが功を奏したように思う。

彼らの優勝を受け、ライス・関町知弘がX(旧Twitter)に“パンサー・向井慧がうれし泣きする動画”を公開した。若手時代、サルゴリラの2人(当時は松橋周太呂を含めたお笑いトリオ・ジューシーズ。2015年に解散)とパンサーは深夜番組『333 トリオさん』(テレビ朝日系)で切磋琢磨した盟友であり、コンビ名「サルゴリラ」の名付け親であるピース・又吉直樹、向井、児玉の3人は、一時期ルームシェアしていた間柄でもある。

かねて又吉が「面白い」と称賛していたコンビは、実際に日の目を浴びるまでにだいぶ時間がかかった。それだけに、今大会最年長の優勝は胸に響くものがあった。
 

本格的に競技化され始めた

そのほか、ファイヤーサンダーは「サッカー日本代表メンバー発表記者会見を見守るものまね芸人」というユニークな着想で4位、前大会で勢いづくや団はガラスの灰皿がゴロゴロと回る独特な臨場感を笑いにしたネタ「演技の稽古」で5位となった。

ジグザグジギーは、『IPPONグランプリ』(日本テレビ系)の大会チェアマン・松本人志を彷彿とさせる市長を演じて笑わせ、ラブレターズは「隣人トラブルを抱えた彼女の実家へと結婚の挨拶に訪れる」というシチュエーションが秀逸だった。

蛙亭は、「振られたばかりの女と、キックボードで転倒し大好きなお寿司が崩れた男」という男女コンビならではのネタで健闘し、隣人は「チンパンジーに落語を教える仕事を任された男が、逆にチンパンジー語をマスターする」独特の展開が光っていた。

ゼンモンキーは「縁結びの神社で巻き起こる、同じ女性に恋をした3人の抗争劇」というシチュエーションで勝負。残念ながら最下位となってしまったが、まだ結成4年目なだけに来年に期待したいところだ。

今年は準決勝の時点で、審査が大変であろうことが読み取れた。様々なタイプのコント師がそろっただけでなく、それぞれのスタイルで磨き上げた強いネタが驚くほど多かったからだ。

ネタの世界観や構成力、演技力もさることながら、インパクトを持続させる展開とリアリティーまでもが優劣を分ける。今年の大会から、いよいよ本格的に競技化され始めたのを痛感した。

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