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福井駅前が「氷河期」に…雪の日の〝静寂と絶望〟表した写真に驚嘆
「あえて入れた」ものが伝える地元愛
冬らしく、冷え込む日々が続いています。〝最強寒波〟が各地で大雪を降らせるなど、暮らしへの影響は少なくありません。そんな厳寒の季節ならではの写真が、ツイッターユーザーたちの目を楽しませています。JR福井駅前に現れた「氷河期」の光景を、幻想的に記録したものです。撮影者のフォトグラファーに話を聞きました。(withnews編集部・神戸郁人)
「寒波に襲われた福井駅は完全に氷河期」。2023年1月24日、そんな文章と共に、4枚の画像がツイートされました。
写っているのは、JR福井駅前(福井市)の「恐竜広場」です。かつて福井県内で化石が発見された、3体の恐竜の実物大モニュメントが設置されています。
恐竜たちは頭や背中が雪まみれで、周囲は一面の銀世界。降りしきる雪の粒一つひとつが、震えるほど寒い日に撮られたことを物語ります。そして、時が止まったかのような静けさが、見る者に忘れがたい印象を残すのです。
「福井が絶滅してしまう」「ものすごい景色だ」。ツイートには18万以上の「いいね」がつき、リツイート数も4万回を超えています。
寒波に襲われた福井駅は完全に氷河期。 pic.twitter.com/Dw23o1JNnq
— tomosaki (@photono_gen) January 24, 2023
写真を投稿したのは、福井市に住むフォトグラファー・tomosakiさん(@photono_gen)です。
同市で生まれ育ち、ファインダー越しに地元の風景を記録し、写真集『あの頃に見た青は』(KADOKAWA)などの著書やSNS上で発表しています。
tomosakiさんいわく、話題を呼んだ写真の撮影時期は、実は2年前の冬です。当時も福井県内は、寒波に見舞われていました。そんな中で、少年時代から親しんできた、恐竜のモニュメントを被写体にしたいと考えたそうです。
「モニュメントは僕が中学生の頃に完成し、青春を共にしました。今も毎日のように福井駅前を通っているので、とてもなじみ深いです。他県から福井へと戻ってくるときに目に入ると、『帰ってきた』という安堵(あんど)感があります」
「毎年冬になると、SNS上にモニュメントの写真が出回り、話題になります。ただ、一眼レフカメラで撮った写真は、僕が知る限り見たことがなかったんです。実際にやってみようと思いました」
撮影時、雪が多く積もっている恐竜に着目。ローアングルを意識し、モニュメントの迫力や、襲ってくるかのような絶望感を演出しました。ストロボも併用し、宙を舞う雪を画角に収め、しんとした静けさや寒さを伝えることにも成功しています。
さらに、画像データを専用のスマートフォンアプリで加工し、青色の彩度を高めて〝氷河期感〟を強調。酷寒に耐え、30分かけて撮ったという写真に、もう一手間加えました。
一連の写真を確認してみると、福井駅の建物や、駅名を示すロゴが写りこんでいます。恐竜たちだけを単独で撮った方が、より雰囲気が出そうです。あえてそうしないという判断には、tomosakiさんなりのこだわりが影響しています。
tomosakiさんがカメラに触れ始めたのは、まだ学生だった3年ほど前のことです。新型コロナウイルスの流行により、授業が休講に。時間を持て余していたところ、福井出身のフォトグラファーの手に成る写真と出会いました。
目に飛び込んできたのは、同県内の風景を刻んだ作品の数々。この体験がきっかけで、地元の魅力に気付きます。故郷について、少しでも多くの人々に知って欲しい――。そんな思いを「氷河期」の写真にも込めたのです。
「福井県民にとっては当たり前の恐竜のモニュメントですが、県外の方々にとっては違います」。だからこそ、日常の一瞬に潜む美しさや尊さを浮き彫りにし、表現したかったのだと、tomosakiさんは語りました。
実際、今回の写真を見た人々からは、「こんな幻想的な福井駅見たことない」「目の当たりにしたくなる」などのコメントが寄せられています。こうした意見をめぐっては、次のように話しました。
「福井県民と思われる方々からも、『福井を誇らしく感じた』といった声が届いており、とてもうれしいです。そして2024年春に北陸新幹線が延伸予定なので、県外在住の方には、ぜひ観光で足を運んで頂きたいと思います」
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