連載
#22 未来空想新聞
「父親だから育休」になる…ちょっと先の未来 子育てを超えた変化
男性の育休取得率が上昇しています。世の中の変化が顕著になる中で、気になるのは〝その先の未来〟です。育休は「取るか取らないか」で議論しがちです。でも「父親だから育休」が浸透し、取得が当たり前になった時、どんな変化が起きるのか。ちょっと先の社会を考えてみました。
転職サービス「doda」などを展開するパーソルキャリアは今年2月、「オンラインワンオペ育児体験」を実施しました。
子どものいる「パパ管理職」は自宅で「ワンオペ」を体験。子育て経験のない「チャレンジ管理職」はオンラインでワンオペの様子をうかがう一方、「パパ管理職」が食事の準備をしている時間などに、子どもと遊ぶことでフォローする――。そんな試みでした。
ワンオペは家庭が壊れる――。参加した「チャレンジ管理職」の男性は、こんな感想を述べていました。
「チャレンジ管理職」の男性は、取材当時、妻が妊娠中と話していました。育休取得については具体的にイメージがつかめていなかったものの「オンラインワンオペ育児体験」への参加を通じて、取ることを考え始めていました。
私は、仕事と子育ての両立に葛藤する男性を描く「#父親のモヤモヤ」という企画を担当しています。共働きの妻と娘(6)を子育て中で、自身の体験も重ねながら3年近く取材しています。
私自身は育休を取得していません。妻とも相談した結果ですが、育休を取得した妻のワンオペ負担を考えれば、取るべきだったと自戒しています。
「チャンレンジ管理職」の男性が育休取得を企業の取り組みによって前向きに捉えていたことは、意義深く思いました。
妻の妊娠が分かった時、私も育休を考えました。しかし同時に、同僚の負担や自身のキャリアの不安もよぎりました。そうした中、妻に育休取得を相談したところ、「大丈夫」と答えがかえってきました。
いま思えば、それはどこかで私が期待していた答えでした。恥ずかしいことですが、その答えに甘えたのだと思います。
つまるところ、育休が「第一選択肢」になっていなかったのだと思います。あるいは、育休取得が「デフォルト」でなかったということです。
取材を通じて、育休取得を「デフォルト」と捉える男性に出会います。
育休を取った男性に話を聞く場合、経緯を尋ねます。その際、「妻のキャリアや負担を考えて」という回答もある一方、「育休を取るのは、『普通』のこと」「父親だから」といった答えもあります。
そうした男性に出会う度に、「取るか取らないか」で葛藤していた自分自身を古めかしく思うと同時に、旧来の価値観の呪縛から軽やかに解かれていることに羨望に似た感情も抱きます。
10年前に1%台だった男性の育休取得率は2020年度に10%を超えました。変化が顕著になる背景には、意識の地殻変動があるのだと思わずにはいられません。
「男性の育休」が促進されることで、父親のいわば「家庭進出」が進むことが期待されています。それは、突き詰めると、仕事を中心とした公的な社会の偏重を見直すことにつながるでしょうし、家庭にまつわるケア領域を再評価することにもなるのだと思います。
4月には、改正育児・介護休業法が施行され、企業に対し、社員に育休を取る意思があるかを確認するよう義務づけられました。10月には、子どもの生後8週間以内に最大4週間まで父親が育休を取れる「男性産休」の仕組みもスタートします。今年は、男性の子育てに関する仕組みが大きく変わる年でもあります。
ほんのちょっと、10年先には、仕事と家庭をめぐる比重と評価は、がらりと変わっているかもしれませんし、そうなることを期待しています。
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