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野田クリスタルの地下芸人論「最近、持ち上げすぎたから下げないと」

「そもそも面白い芸人は売れてるんですよ、その鉄則は絶対に破れないんです」

「マヂカルラブリー」の野田クリスタルさん=丹治翔撮影
「マヂカルラブリー」の野田クリスタルさん=丹治翔撮影

目次

2020年、R-1グランプリ、M-1グランプリとお笑い賞レースの栄冠を次々と手に入れた「マヂカルラブリー」の野田クリスタルさん。独創的な芸風とともに注目を集めるのは、その経歴です。ピン芸人時代には事務所に所属せず、芸人たちが自主的に開催するインディーズライブで活動。こうした芸人は「地下芸人」と呼ばれ、野田さんの芸風の背景にあるカルチャーとして、スポットライトが当てられ始めています。自身の活躍から地下芸人が話題になることについて、野田さんはどう感じているのでしょうか。話を聞くと、まさかの展開に……。
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地下芸人の「面白いけど売れない」像に異議

『野田の日記 それでも僕が書き続ける理由』
「魔法のiらんど」で運営されていたマヂカルラブリーのホームページ(現在は閉鎖)で、2006年から掲載されていた野田さんの「日記」を集録。日常で起こった理不尽な出来事や肩を落とすエピソードに、淡々とそして狂気さをはらみながらコミカルに綴られている。2015年に「グッズ」として限定販売されたが、本書では新たにR-1やM-1での予選や控室での様子などを書き下ろした内容も加えられている。『2006-2011(はじめのほう)』『2012-2020(あとのほう)』の全2巻。ヨシモトブックス発行、ワニブックス発売。

――2006年以降の日記をまとめた書籍「野田の日記」には、ゴー☆ジャスさんやアルコ&ピースさんなど、インディーズ時代をともにしてきた芸人さんが登場します。彼らとの関係性について、今振り返ってみていかがでしょうか。

僕は下っ端でしたから、付き人的な役回りをしていました。当時、第一線で活躍していたモダンタイムス、アルコ&ピース、ゴー☆ジャスさんは……でも全員テレビには出ていないんで「第一線で活躍」はしてないんですけど、インディーズの中では華やかな存在でした。僕は出演者のメンバーではなく、チラシを作ったり、モダンタイムスのホームページの運営もしたりしていましたし、スタッフに近かったのかな。なので、今の立場の方が不思議ですね。
――M-1優勝に関連して、過去の野田さんを知るモダンタイムスさんなどがメディアに露出することも増えています。こうして「地下芸人」が注目されていく流れをどう受け止めていますか。

やっぱりモダンタイムスは面白いし、みんな知らないから、見てゾクゾクしてほしいんですよね。

ただ「地下」を説明するのって難しいんですよ。僕らが紹介する「地下芸人」って、「面白いけど売れない芸人」っていう印象が強いじゃないですか。そんなことないんですよ。

そもそも面白い芸人は売れてるんですよ、その鉄則は絶対に破れないんです、実は。

それなのに、テレビでは「面白いけども、独自のお笑いをやりすぎて売れていない人のたまり場」っていう風に、ものすごくいい印象で映っている。でも違うんです。

根本で言うと、面白くないから売れていない。学芸会なんです。地下芸人の9.9割、つまり地下芸人が1000人いたら、990人が見よう見まねのお笑い。「見よう見まね漫才」「見よう見まねコント」しかやってないんですよ。ただ、たまたま10人くらいが変なことをやっていて、僕らが取り上げているのはその10人。

でも10人を紹介しようと思っても、結局面白いから売れちゃうんですよ。アルコ&ピースもゴー☆ジャスさんもそうで、その中でも「面白いのに売れていなかった」のがモダンタイムスだったんです。
――ということは、「これからは地下芸人だ!」という流れにはなりえないと……?

ならないです。だって地下芸人は地下にいようと思っていないですから。地上に上がることができないのは、面白くないからだから。NSC(吉本興業の養成所)の生徒より、一般の社会の人よりもつまんない人たちが多いんだから。
――辛辣な……。

やっぱりそれは最近僕らが「地下芸人」っていう言葉を持ち上げすぎたから、「そろそろ下げていかないと」と(笑)。

僕は遅れをとりたくないっていう気持ちが大きいんですよね。第7世代が話題になって、今逆に「6.5世代」とか「6.9世代」とか言ってますけど、その辺も腐していこうかなと。「お前ら第7世代の養分食ってるだけだろ」っていう、ちょっと一歩先をいきたいという気持ちがある。

だから「地下芸人がまるで面白いみたいな言い方するなよ」っていう風にいこうかと思ってます。
――地下芸人のはしごを外しちゃいますけど……。

時代先取りでいきたいんで、常にもう一歩先を読まなきゃいけない。地下芸人のことも絶対誰かが言い出すことなんですよ。だから気付かれる前に先に言っちゃおっかなって。

地下を経たからこそわかる「NSC生の強さ」

――その「9.9割面白くない」論は、当時も感じていたのでしょうか。

当時も思ってました。「変なネタ」であっても、テレビでやったり、人に紹介できたりするようなネタは完成されてるんですよ。地下は「変」が完成されていなくて、精度が低い。
――精度が低い……。

たとえばこの取材も記事になった時、「シュールなインタビューだな」って思えるのは、きっと文章がしっかりしているからですよね。どれだけ内容がシュールでも、文字の意味がわからない、句読点が変、ひらがなが多すぎるとかだったら、まず読みづらいし内容どころじゃない。

基礎的なスキルがあってこそ、内容が伝わると思うんですよ。それがなかったらおしまいなのに、地下芸人の9.9割には欠けてるんですよ。だから成り立ってないんです。
――なるほど……こうした「常識にとらわれないお笑い」が地下の強みだと受け取っていました。

僕はNSCには通ったことないですし、NSCが「正規ルート」とは思わないですけど、「一般的なルート」のように見えるのは、基礎から学んでいるってことなんですよね。

人に見やすいお笑いを作るために、発声やネタの構成の仕方から知っていくのが正規ルートだとしたら、地下ってそうじゃない。「面白いものを思いつきました。でも、人の見やすいようにはなっていないですよ」っていうのが地下なんです。
――そうした中で、野田さん自身はNSCに通っていないことについてはどう感じていますか。

M-1チャンピオンが3年連続NSC生じゃないっていうのは、ひとつのヒントにはなっていると思う。でも、強いのは絶対にNSC生。選択肢が多いんですよ。

僕らはたまたまの思いつきや発想から始まって、後から「人が見やすいネタ」になっていったパターンだけど、基盤ができていて人が見やすいネタを作れる状態のNSC生が「変なもの」に出会えた時に、またお笑いの賞レースを占めていくんじゃないかなっていう気がしています。

ただこれに関して言うと、NSCの生徒たちはしっかり学べているはずなんで、NSC側に問題ありなんですよね。シンプルな話、インディーズで学べることが教えられていないんじゃないかと思います。僕は通っていないので、何を教えているかは知らないんですけどね。

<野田クリスタル>
1986年生まれ、神奈川県横浜市出身。本名は野田光。相方の村上さんとともに、2007年にお笑いコンビ「マヂカルラブリー」を結成。2020年にR-1グランプリ、M-1グランプリ優勝。「魔法のiらんど」のHP・ブログを愛用し、所属事務所がすすめるサービスを使わず、2020年3月のサービス終了まで貫いたという逸話がある。独学でプログラミングを学び、「野田ゲー」と呼ばれるオリジナルゲームも開発。クラウドファンディングで資金を調達し、Nintendo Switch向けゲーム「スーパー野田ゲーPARTY」を4月29日に発売予定。

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