連載
#67 コミチ漫画コラボ
祖父の葬儀・書類との決別・忘れられない一曲……漫画で描く「別れ」
マンガのSNSを運営する「コミチ」とのコラボ企画として、「#別れ話」をテーマにマンガを募集しました。
幼いころからそばにいて、大好きだったじいちゃんが亡くなった。祖父の訃報が届いた昨年の秋。シャンプーさんは、東京から葬儀に参列する準備をしますが、実家の姉から返ってきたのは「帰って来なくていいって」の一言でした。
新型コロナウイルスの影響が、大切な人との別れにも及び、オンラインで葬儀を見守ったシャンプーさん。直接見送れない悔しさと、「これで良かった」と自らを納得させる思いと。そんなシャンプーさんの心を解きほぐしたのは、安らかな表情の祖父に画面越しでも伝えることができた言葉でした。
最後のコマのリアルな思いも含めて、シャンプーさんのおじいさんへのあふれる愛が伝わってくる作品です。(選評:丹治翔)
年を経るごとにだんだんと気付いていくのが、自分が「達成しやすいこと」には限りがあるということ。でもその限界がわかっていなかったり、「頑張ればできる」という言葉に心のコントロールを握られていたりすると、理想と現実の乖離に自分を否定してしまうことも……。
作者のうさ/さんは長年積み重なっていく紙の書類が、「できないこと」を具現化して心も逼迫していました。しかし、まず自分が「できること」を認めることで、無理のない充足感を得ることができました。
心のすり減るような「できない」を抱えている人たちに、ぜひ読んでいただきたいです。(選評:野口みな子)
音楽は、日々の暮らしを彩ってくれるもの。気分を盛り上げたいときは、アップテンポの曲を。恋に破れたら、思い人が好きだった曲を。「歩」は、主人公の女性に寄り添いながら、いつも優しく歌い上げます。思春期の僕にも、こんなパートナーがいてくれたら……。読みながら、ついつい考えてしまいました。
大好きな曲を耳にすると、それにまつわる記憶が、鮮やかによみがえります。実は家族や友人よりも、長く、深く人生に根差しているのかもしれません。漫画に登場する二人の関係は、そう思わせてくれます。だからこそ、歩の「正体」の告知とともに訪れる別れは、読み手に深い余韻と喪失感をもたらすのです。
読み終えた後、忘れられない一曲を聴きながら、また始めから目を通したくなる。そんな気持ちにさせてくれる、素敵な作品でした。(選評:神戸郁人)
コロナ禍で存在の大きさに気付いたものの一つに、「時間」があると思います。
コロナ前、作者のまのゆうすけさんが描く主人公は終電を逃すまいと奮闘する生活を送っていましたが、いまとなってはむしろ終電を逃すことすら懐かしむ日々のようです。
そしていまは、終電にこだわらなくていい日々だからこそ、前まで気付くことはなかった、ファミレスで卒園式の打ち合わせをしている人たちや、梅の開花にも気付いているよう。
失ったものを懐かしむ一方で、新たに得るものを喜ぶ気持ちもあって。
なくしたものも、得たものも、そのどちらもが愛おしい日々ってなんだかとっても贅沢で素敵だなと思いました。(選評:金澤ひかり)
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今回ご紹介できなかった応募作品は、コミチのサイト(https://comici.jp/stories/?id=418)でご覧ください。ご応募いただき、ありがとうございました!
withnewsは2018年10月から、マンガのSNSを運営する「コミチ」とコラボ企画を始めました。毎月のお題に沿って、身近な出来事や思い出をストーリーにした作品を募集しています。4月のお題は「#わたしのスタート」です。期待と不安、継続や挫折……。「スタート」にまつわる、あなたの話を教えてください。締め切りは3月28日です。
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