連載
#53 コミチ漫画コラボ
「フリスクは2個食い」の理由 背伸びした夏の思い出、漫画で描く
別れ、恋の味、家族の愛を知った「わたしの特別な夏休み」
虫が苦手な幼い娘・ぽんすけ。サイエンス教室でカブトムシが配られることになり、最初は悲壮感でいっぱいです。しかし、カブトムシをつかめるようになった自信や、世話をして育てる楽しさを知っていく――。最終的に訪れる別れには、かつて経験した大人も心を動かされます。
経験が少ない子どもたちにとって、ひとつの成功/失敗から吸い込む情報はこんなに大きいんだということを感じます。初めて生まれた感情で体の中をいっぱいにして成長していく姿からは、大人ではもう真似できない切なさも。この世の大切なことを詰め込んだ、輝く宝物のような作品です。(選評:野口みな子)
「さりげなくできたら大人」の関門みたいなものは、人それぞれあって。インクがなくなるまでボールペンを使い切れた時とか、メニューを見ずジンジャーエールの辛口を頼めた時とか。
そんな初めて上れた階段の場面ってたいてい覚えていません。上書きされるとリカバリーしにくい類いのものですが、ちょっとだけ視界が開けた気持ちになったはず。たしかにあった、あのかけがえのない瞬間を思い出させてくれるフリスク2個の辛みでした。(選評:奥山晶二郎)
多くの人がお墓参りをする季節。亡くなった家族に思いを馳せる時間もいつもより長いかもしれません。
作者のうんたばさんがおじいさんの最期に立ち会ったのは高校3年生の時。そこでおばあさんがおじいさんにかけた言葉が忘れられません。なぜそんな言葉をかけたのか、当時のうんたばさんには理解できませんでした。しかし、後にそれが「愛情」だったことに気づきます。
最愛の人の最期とどのように向き合えるか。避けては通れないその時を考えるきっかけになりました。(選評:河原夏季)
野良犬から愛犬となった、愛嬌たっぷりで賢い「クック」。世話をしたり、遊んだり、散歩に連れて行ったり……父母妹、そして僕は、それぞれの接点でクックとの関係性を築いていく。こうして14年間過ごしてきた家族であるクックに異変が起こったのは、夏。実家から離れて暮らしていた作者は、帰省してクックを家族と看取ったのでした。
終盤の「あの時代は家族そろってクックを送れてよかったなぁ…」というセリフからは、帰省がしにくいウイルス禍の今夏が際立ちます。この数カ月で、もどかしい別れを経験した人もいるかもしれません。せめてこれが、どうか今年だけの「特別な夏休み」であってほしいと願います。(選評:野口みな子)
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