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「将軍と呼ばれた男」菊池桃子さんと結婚、官僚・新原浩朗さんとは?

 タレントの菊池桃子さんと経済産業省の新原浩朗・経済産業政策局長の結婚が話題になっています。新原局長とは、どんな方なのでしょうか。単行本『ドキュメント 「働き方改革」』に、新原局長に関する記述があります。この本からは新原局長の仕事に対する厳しい姿勢が読み取れます。

1億総活躍国民会議で同席した菊池桃子さん(右)と新原浩朗さん(左)
1億総活躍国民会議で同席した菊池桃子さん(右)と新原浩朗さん(左)

目次

タレントの菊池桃子さん(51)と経済産業省の新原浩朗・経済産業政策局長(60)の結婚が話題になっています。菊池さんと新原さんは2015年、安倍政権の「1億総活躍社会」の実現に向けた国民会議で知り合い、交際に発展したそうです。新原さんとは、どんな人なのでしょうか。単行本『ドキュメント 「働き方改革」』に、新原さんに関する記述があります。この本からは新原さんの仕事に対する厳しい姿勢が読み取れます。

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「明るい社会保障」を議論する審議会に出席する経産省の新原浩朗・経済産業政策局長
「明るい社会保障」を議論する審議会に出席する経産省の新原浩朗・経済産業政策局長 出典: 朝日新聞デジタル

「従わないと銃殺されますから」

単行本『ドキュメント 「働き方改革」』は、 2019年6月1日に旬報社から出版されました。書いたのは朝日新聞の取材チームです。安倍政権が作った「働き方改革」実現会議の内幕を描く第1章「将軍」の中で、新原さんの仕事ぶりをこんな風に記しています。

 実現会議を取り仕切ったのが、内閣官房の働き方改革実現推進室の事実上のトップとなった新原である。
 新原は、実現室の職員に恐れられていた。
 有無を言わせない部下への命令と厳しい叱責は日常茶飯事。新原に意見を言おうものなら、「ボロカスにおとしめられる」(経験者)。すべての情報が新原に集まり、そのほかのメンバーには一部の情報しか伝えないという、「分断統治」が敷かれた。
 こうした状況で働くメンバーの一人が、あるとき「新原さんに従わないと銃殺されますから」と周囲に漏らすと、「笑えない話」として霞ケ関に瞬く間に広がった。新原は次第にこう呼ばれるようになった。
 「将軍」
『ドキュメント 「働き方改革」 』より。文中のかっこ内は加筆
新原浩朗・経済産業政策局長について記述されている単行本『ドキュメント 「働き方改革」』

「もう経産省には戻ってこない」

エリート中のエリートの新原さんですが、一時は出世コースから外れたこともありました。そこから出世コースに再び乗ったのは、安倍政権で存在感を示すようになったからでした。

 新原は、東京大学経済学部卒。一九八四年、旧通商産業省(現経済産業省)入省。途中、米国ミシガン大学経済学部大学院への留学をへて、情報経済課長や紙業生活文化用品課長などを歴任。二〇〇三年には、『日本の優秀企業研究』(日本経済新聞社)を出版している。
 新原はその後、厚生労働省に出向し、健康医療戦略と職業能力開発を担当する大臣官房審議官に就任。経産省内では「もう経産省には戻ってこない」と思われた。
 二〇一四年には内閣府に移り、経済財政の審議官などを務め、局長級の政策統括官に昇進。内閣官房の一億総活躍推進室次長の兼任となり、二〇一六年九月に働き方改革実現推進室長代行補の兼任もついた。
『ドキュメント 「働き方改革」 』より。文中のかっこ内は加筆
1億総活躍国民会議であいさつする安倍晋三首相(左)。菊池桃子氏(右)と新原浩朗氏(中央奥カメラマンの右)も同席していた=飯塚晋一撮影
1億総活躍国民会議であいさつする安倍晋三首相(左)。菊池桃子氏(右)と新原浩朗氏(中央奥カメラマンの右)も同席していた=飯塚晋一撮影 出典: 朝日新聞デジタル

「新原による、新原のための、新原絶賛劇場」

新原さんは、報道対応も1人で仕切っていました。

 報道対応も新原が仕切った。会議の前や事後に毎回開かれる記者向けのブリーフィングは、基本的に新原が一人で行った。記者ブリーフィングには、実現会議に関わる各省庁の官僚がずらりと出席しているが、新原が自分以外の官僚に発言させることはめったになかった。
 会議後には毎回、働き方改革担当相である加藤(勝信)も記者会見を開くが、内容は手元の資料を読み上げるだけ。その後に新原のブリーフィングがあるため、記者も加藤にはほとんど質問をしない。
 ある官僚は、実現会議の状況をこう皮肉った。
 「新原による、新原のための、新原絶賛劇場」
『ドキュメント 「働き方改革」 』より。文中のかっこ内は加筆
1億総活躍国民会議を終え、報道陣の質問に答える菊池桃子さん=首相官邸、飯塚晋一撮影
1億総活躍国民会議を終え、報道陣の質問に答える菊池桃子さん=首相官邸、飯塚晋一撮影 出典: 朝日新聞

安倍首相を「彼」「ニュータイプ」と呼ぶ

新原さんは、安倍晋三首相のとても近くで仕事をしています。新原さん本人は、その近さを本の中で記者に語っています。

 新原の執務室は、首相官邸の向かいに建つ合同庁舎八号館新館一二階にある内閣府政策統括官室だった。
 二〇一七年五月、記者は、ここで新原に話を聞いた。
 新原の部屋は、書類や新聞、書籍、ファイルで、散らかり放題だった。応接用とみられるソファセットは書類で埋まり、一〇人ほどが座れそうな長机では積み重なったファイルが雪崩を起こしていた。
 取材が始まりしばらくして、新原は「僕は一応、行政で調整のために切った張ったやってますけど、半分は学者でもあるんですね」「企業経済については相当なエクスパティーズ(専門知識)がある」といって、机に置いてあった写真を見せた。満面笑顔の新原と外国人男性のツーショット写真だった。
 「この人(外国人男性)は、オリバー・ハートっていう人なんですけど、ノーベル経済学賞を受賞した企業経済の専門家」。さらにもう一枚、満面笑顔の新原と外国人男性ツーショット写真をもってきて、「この人の上にいる人がホルムストローム。これもノーベル経済学賞を受賞した」とたたみかけた。
 さらにその後、安倍についての論評も披露した。
 「総理は、僕の知っている経営者で言うと、『ニュータイプ』だと思う。ビジョンをはっきり言う人なんですよ、(世の中では)はっきり理解されていないんだけど。昔ながらの経営者って、下から上がってきたものをみて『はい、はい、みんな頑張ってね』とか言って酒でも飲ませながら、という手法だった。一方、最近の経営者は『この方向でやってくれ』とビジョンをはっきりと示して、下にうまく発注する。これが良い経営者。安倍さんは明らかに後者のタイプ。みなさんが思っているより、考え方をはっきり言うんですよ」
 安倍を「彼」と呼び、「彼のエクスパティーズ(専門知識)というのは、豊富な人脈なんです」とも解説。こんな調子で、安倍との近さを強調した。
『ドキュメント 「働き方改革」 』より。文中のかっこ内は加筆。本文中の「記者」は実名
1億総活躍国民会議であいさつする安倍晋三首相(左から2人目)=2015年11月12日、首相官邸、飯塚晋一撮影
1億総活躍国民会議であいさつする安倍晋三首相(左から2人目)=2015年11月12日、首相官邸、飯塚晋一撮影 出典: 朝日新聞

安倍政権の「官邸官僚」の象徴

仕事への厳しい向き合い方で知られる一方、その剛腕ぶりを評価する声もありました。

 「官僚では珍しく、自分の意見を主張する。議論をしたいと思わせるタイプ」(経済学者)「あの交渉力なくして経済界との話はまとめられなかった」(厚労省官僚)などの評価もある。
 恩讐が入り交じったこんな声もあった。
 「たしかに厳しく叱責されるのだが、時折、ねぎらいの言葉をかけられる。そういう『人心掌握術』にも実はたけている」
『ドキュメント 「働き方改革」 』より

新原さんは、菊池桃子さんと出会った「1億総活躍推進会議」のあと、「働き方改革実現会議」をへて、さらに「人生100年時代構想会議」と、首相官邸が作る会議を次々と仕切っていきます。

「エピローグ」では、そんな経緯を記しています。

 新原は古巣の経済産業省に戻り、筆頭局長の経済産業政策局長に就任した。安倍や今井尚哉・首相秘書官から高い評価を受けていると言われ、次の経産省事務次官の有力候補だ。目玉政策をぶち上げては「看板」を次々と掛け替える安倍政権の指示を忠実にこなし、「官邸官僚」の象徴となっている。
『ドキュメント 「働き方改革」 』より

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