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渋谷の囲い、実はアートでした! 全長200mの物語が心温まると話題に
渋谷区の宮下公園。工事の仮囲いに描かれたアートが、ネット上で注目を集めています。
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渋谷区の宮下公園。工事の仮囲いに描かれたアートが、ネット上で注目を集めています。
再開発工事が進んでいる渋谷区の宮下公園。そこの仮囲いに描かれたアートが、ネット上で注目を集めています。全長200mにわたって描かれているのは、少女と愛犬の物語です。完成から1年以上が経って話題になったこの作品について、企画したNPO法人の担当者に話を聞きました。
JR渋谷駅と原宿駅の間にある宮下公園。
渋谷から原宿に向かって進んでいくと、工事の仮囲いに「A day in the life shibuya」というタイトルと、少女と犬の絵が登場します。
そこから囲いに沿って歩いていくと、物語を読み進めることができます。
モヤイ像の前でダンスに見入っていた少女。犬とはぐれてしまい、道行く人たちに尋ねますが、見つかりません。
道路を横断した先の囲いに目をやると、今度は犬の視点から見た物語に。
しばらくすると、また少女の視点に切り替わり、外国人観光客、車イスバスケのプレーヤー、スケボー少年に、犬のことを尋ねて回ります。
困り果てて座り込む少女。すると、白杖を手にした視覚障害のあるおばあさんに出会います。
おばあさんの行きたい場所を聞いて道案内する少女。
たどり着いた先で、先ほど道を尋ねた男性カップルに会い、犬がハチ公前にいたことを知らされます。
ハチ公前で無事に再会できた少女と犬。最後は、登場した人物たちが集合した絵で物語は終わります。
先日、この囲いに描かれた物語を紹介する動画がツイッター投稿されると、「ウルウルきました」「登場人物の描写の細かさに見入ってしまいました」といったコメントが寄せられ、話題になっています。
「渋谷明治通りPROJECT」と名付けられたこの作品。
特定非営利活動法人「365ブンノイチ」が企画したもので、美大生約100人を含む総勢200人で完成させたものです。
「特殊なシートに描いて、囲いに貼り付けています。下書きをプロジェクターで投影してシートに描く下書き作業から本塗り作業まで、2カ月かけました」
そう話すのは、365ブンノイチのプロジェクトリーダー・田村勇気さんです。
約50コマからなる物語のシナリオや、キャラクター設定は365ブンノイチが考案。
原画はイラストレーターの金安亮さんに担当してもらいました。
シンプルなストーリーながらも、起承転結を盛り込んだ内容に。
事前に渋谷区とも協議した上で、「ダイバーシティ(多様性)」を感じられる仕上がりになりました。
その狙いについて、365ブンノイチのホームページでは以下のように説明しています。
「渋谷区は2015年に全国で先駆けて同性同士のカップルのパートナーシップを公認し、来たる2020東京パラリンピックでは3つの車椅子競技の会場となるなど、多種多様な人たち、さまざまな価値観が、社会の発展につながるという、優しく、前向きな社会を応援しています。その渋谷区の未来志向のメッセージを作品で描いています」
「ストリートアートは目的ではなく手段」という考えから、地元密着型を目指したという今回の作品。
しばらく工事は続くため、当面の間は見ることができるそうです。
「実は完成してからのメンテナンスが、また大変なんです。落書きを消したり、貼られたステッカーをはがしたり、定期的に修繕しています」と田村さん。
話題になったことについては、こう話します。
「設置から1年経って、このように大きく話題になって驚いています。すべて手書きなので、ぜひ近くで見てください。塗り直した跡やムラなど、手作り感がありますから」
そして、こう付け加えます。
「こうした取り組みが、もっと簡単に、頻繁に実現できる社会になったらいいなと思います」
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中目黒では365ブンノイチの新しいプロジェクトが進行中です。詳しくはこちら
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