話題
なぜ「しっぽ」だけのロボ? 発案者は元陶芸専攻の27歳、経緯を聞く
丸いクッションに「しっぽ」がくっついた独特なデザイン。クッション型セラピーロボットを取材しました。
話題
丸いクッションに「しっぽ」がくっついた独特なデザイン。クッション型セラピーロボットを取材しました。
秋の出荷に向けて予約受け付け中のクッション型セラピーロボット「Qoobo(クーボ)」。丸いクッションに「しっぽ」がくっついた独特なデザインで注目を集めています。クラウドファンディングでは目標の2.5倍近い資金を調達。発案者であるデザイナーは数年前まで大学院で陶芸を専攻していたそうです。開発の経緯について話を聞きました。
ロボットやハードウェアの開発や販売を手がける「ユカイ工学」。そんな会社が現在予約販売を受け付けているのが、クッション型セラピーロボットQooboです。
フランス語でしっぽを意味する「クー(Queue)」と、「ロボット(Robot)」を結びつけて名付けられています。
そっとなでるとフワフワと、たくさんなでるとブンブンと、しっぽを振って応えてくれます。放っておくと突然しっぽを動かすこともあります。
「なで方によって変化するしっぽの反応を、なでる人自身が解釈して擬似的な心のやりとりを生み出します」。そう話すのは、ユカイ工学のデザイナーで、Qooboの発案者でもある高岡尚加さん(27)です。
ペットを飼いたくてもマンションで禁止されていたり、アレルギーがあったり、仕事が忙しく世話ができなかったり。そんな理由で飼えない人たち向けに、自社のロボット技術を活用して開発したそうです。
なぜ、顔や足はなく「しっぽ」だけなのか? 高岡さんは理由をこう説明します。
「顔だとどうしても個人の趣味や好みが反映されがちです。さまざまな感情がその動きで表現されるしっぽだけにすることで、手にした方が想像するための余白を残そうと考えました」
2年半ほど前まで、大学院で陶芸を専攻していた高岡さん。「そのまま陶芸の道に進んだ場合の自分の将来が見えてしまった」こともあり、新しいことに挑戦しようとユカイ工学に入りました。
「陶芸で人形も作っていたんですが、ロボット技術で動かせたら面白いんじゃないかと思ったんです」
そんな高岡さんがQooboを発案するきっかけになったのが、昨年春にあった社員旅行を兼ねた箱根合宿でした。
合宿前に4~5人ずつのチームに分かれ、「課題を解決するもの」をテーマに試作品を作り、現地で発表しました。
実家時代に多くの犬と一緒に暮らしていた高岡さん。「疲れて家に帰った時、癒やしの存在が家にいてくれたら……」と考え、チームでプロトタイプを制作して発表したところ、社員同士の投票で見事1位に選ばれました。
その後、社内に置いてあった試作品を見た来客の反応もよかったことから、本格的に製品化に取り組むことが決まりました。
プロモーション動画を制作してYouTubeで公開すると、海外でも話題となり、発表から1週間で動画再生数は1000万回を突破。
昨年10月にクラウドファンディングに挑戦した際は、6日間で目標金額500万円を達成。最終的には目標を大きく上回る1236万156円で受け付けを終了しました。
製品化するにあたって、素材や大きさにもこだわりました。
「軽すぎると動物っぽさがなくなるし、重すぎると扱いにくい。素材についても、ぬいぐるみ屋さんや生地屋さんを巡って何度も自分でミシンで縫った結果、現在のオリジナルのものにたどり着きました」
特にこだわったのが、しっぽの動きと価格設定です。
「しっぽの動きがぎこちないと一瞬で気持ちが冷めてしまいます。価格を上げればよりよいものは作れますが、高くなりすぎると買う勇気がわきません。買いたい・あげたいと思える販売価格はやはり1万円までだろうと考え、その範囲内でできる最高のものを追求しました」
自社のロボット技術を活用しながら、しっぽのメカは10数種類試作したそうです。
昨年12月から予約販売を開始。「ペットを飼うのはあきらめていたのでうれしい」「ガジェット好きなので試してみたい」といった声が寄せられているそうです。
「言葉を通じてのコミュニケーションではなく、触れればわかるシンプルな使い方なので、海外の方にも好評です」。
秋の出荷開始に向けて、高岡さんはこう話します。
「日本でも海外でもロボット推しの流れがきていますが、『本当に要る?』『まだいいや』と思っている方も多いと思います。そんな方にぜひQooboに触れていただき、『そんなに難しくないな』『生活が楽しくなるかも』と感じていただけたら、うれしいです」
◇ ◇ ◇
Qooboのカラーバリエーションは「HUSKY GRAY」「FRENCH BROWN」の2色。早期予約特別価格はいずれも10000円(税抜き、送料別)です。詳しくはホームページで。