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2017年11月27日

ニコラにーさん「求められるのはホストクラブ的な回答。だけど…」


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「ニコラにーさん」こと米原康正さん

「ニコラにーさん」こと米原康正さん

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 私、リアルタイムでつながれることがオンラインの強みなら、手紙のよさは、時の流れに逆らえることだと思うんです――。先日読んだ小説『リバース&リバース』(新潮社)に登場する一節です。主な登場人物は、ティーン誌のお悩み相談ページ担当者と、その愛読者。著者の奥田亜希子さん(34)は、執筆にあたってティーン誌「nicola(ニコラ)」の編集部を取材したそうです。それでは、ニコラでお悩み相談を担当している「ニコラにーさん」は、この本を読んで何を思ったのか? 話を聞きました。

ニコラ編集部には多くの寄せ書きが

ニコラ編集部には多くの寄せ書きが

本のあらすじは


 本の帯に書かれたあらすじは以下の通りです。

 ティーン誌の編集者の禄(ろく)は読者のお悩み相談ページを担当しているが、かつて手紙を送って来た少女との間にトラブルを抱えていた。

 一方、地方に暮らす郁美はその雑誌の愛読者。東京からの転校生が現れたことで、親友との関係が変わり始める。

 出会うはずのない二人の人生が交差する時、明かされる意外な真実とは――。

 禄は「ろく兄」としてお悩み相談コーナー「ハートの保健室」を担当。読者からのお便りに真剣に向き合う編集者です。

 ニコラには、1997年の創刊当初から続く読者ページ「おしゃべりくらぶ」があります。20年にわたって「ニコラにーさん」として担当しているのが米原康正さん(58)です。

 米原さんは、インスタントカメラ「チェキ」をメイン機材にする異色の写真家です。雑誌「egg」を出したり、AKB48の立ち上げに関わったり。インスタグラムのフォロワーは11万6千人、中華圏でも人気で中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」は236万人に上ります。

 同じ立場の人が、この小説を読んだらどんなことを感じるのか? 米原さんに『リバース&リバース』を読んでもらった上で、話を聞きました。

「ニコラにーさん」こと米原康正さん

「ニコラにーさん」こと米原康正さん

「ニコラにーさん」米原康正さんに聞く


 「恋愛ものだと思って読み進めたら、『えっ、そっちだったの?』という展開になって、小説として面白く読めました」と米原さん。

 ろく兄と自分との違いについては、こう話します。

 「ろく兄は優しい。こんなに優しいんじゃ、悪意ある読者のかっこうの餌食になっちゃうよ」

 米原さんが心がけているのは、「若いから」「大人だから」と区別せず、思ったことを素直に書くこと。その上で「自分のことは自分で決めよう」と答えているそうです。

 「求められている回答はホストクラブ的なもの。気持ちのウジウジに対して『そうだよね』『つらいよね』といった言葉をかけてもらいたいんだと思うけど、それじゃ解決にならない」

 「それに乗っかって商売している大人も悪いと思う。悩んでいる人に対して『自分で解決しなさい』じゃカネにならない、というのはわかりますけどね」

 「整形手術を受けたいんです」という相談に対しては、手術にはお金がかかること、さらに年齢を重ねた時にメンテナンスが必要になる可能性があることなど、具体的な事実を紹介した上で、自分で決めなさいと回答しているそうです。

ニコラ編集部にはサインや寄せ書きがズラリ

ニコラ編集部にはサインや寄せ書きがズラリ

コーヒー苦手だったけど


 歯切れのいい発言が印象的な米原さんですが、昔からそうだったわけではないといいます。

 「親から薦められた高校を受験するとき、『なんで、いい高校に行った方がいいの』と聞いたら、『いい大学に行くため』と言われました。『なんで、いい大学に?』と聞くと、『いいところに就職するため』。『なんで、いいところに就職?』と聞くと『いい奥さんと結婚するため』……。これを聞いて『長げぇーな』と思いましたよ」

 反抗しなければ、自分が思うのとは違う場所に連れて行かれる。どんどん違う場所に行って、自分がわからなくなる。そんな思いが募り、「嫌なものは嫌だ」と言うように。

 それまで、好きではなかったコーヒーが出されても黙って飲んでいましたが、「コーヒー苦手で飲めないんです」と断るようになったそうです。

ニコラ編集部に寄せられたお便り

ニコラ編集部に寄せられたお便り

「優しさにヤンキーっぽさを感じた」


 かつては多い月で2000通ほど寄せられていた相談も、現在は300~400通ほどに。手紙よりもメールの方が多いそうです。

 「SNSの影響か、文章が短くて3~4行で終わるものも多いです。読者世代の子たちに求められているのは、『いま来たものに、どう答えるか』という瞬発力なんです」

 小説に登場する「手紙のよさは、時の流れに逆らえることだと思うんです」というセリフ。米原さんもメールよりも手書きの方がいいと考えています。

 「イラストや文字で、書いた子の精神状況がわかる。同じ『バカ』と書いてあっても、メールで読むのと手書きじゃ全然違いますよ」

 ろく兄に対する印象を尋ねると、「あの優しさにヤンキーっぽさを感じました」と意外な答えが返ってきました。

 「自分の問題なのに、別な対象を作って依存していく点です。ヤンキーって『悪いのは大人や世の中だ』っていう理屈じゃないですか」

ニコラ編集部の本棚にはバックナンバーがズラリと並んでいます

ニコラ編集部の本棚にはバックナンバーがズラリと並んでいます

「オッサン社会」の弊害


 一方で「オッサン社会」の弊害についても、こう話します。

 「今まではオッサンの『こうしなさい』というやり方で世の中が回ってきました。でも、今はそうじゃない。オッサンの発想じゃYouTuberは生まれない。若い世代に対して勉強することなく『ついていけない』と怒るのは、やめた方がいい」

 これから『リバース&リバース』を読んでみたいという人に向けて、米原さんはこう言います。

 「ニコラ世代の人は納得して読めると思います。でも、若かったころの気持ちや悩みを忘れている人にこそ読んでほしい。どの世代にも共通することが描かれているから」

 著者の奥田さんに対しては、「もっと、ろく兄が相談に答えてるとこを読みたかったな。でも、こういうことを書ける大人がいることに安心しました」。

22日に発売された小説『リバース&リバース』(新潮社)

22日に発売された小説『リバース&リバース』(新潮社)

著者・奥田亜希子さんの感想は


 「1ページ目に本の全部が書いてあります」と話す著者の奥田さん。執筆にあたってニコラとニコ☆プチの編集部を取材したそうですが、あえて「ニコラにーさん」こと、米原さんには会わなかったそうです。

 「知ってることが多すぎると、そっちに合わせて書いてしまうと思ったので」と奥田さん。

 ニコラにーさんの仕事については、「人ひとりの相談を受けることの重圧で、気力をもっていかれるのでは。どこかで自分のメンタルを整えないと続けられない、尊いお仕事だと思います」。

 読み終えた米原さんの感想に対しては、こう話します。

 「もし事前に取材させていただいていたとしても、米原さんをモデルにしたろく兄は、私にはたぶん書けなかったな、と思いました。自分で自分を引き受けること、君にもそれができるはずだと相手を信じること。どちらにも強さが必要で、私自身にまだまだ欠けているものだからです」

 米原さんから「こういうことを書ける大人がいることに安心しました」と言われたことについては、「小説を書くという“仕事”に就けたことの意味を問われたようで、背筋が伸びました。感想をうかがえてよかったです。ありがとうございました」。

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