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エンタメ

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「トランプさんの物まねは楽。でもね…」プロが見抜いた芸人だましい

トランプ米次期大統領のものまねをする「ザ・ニュースペーパー」の松下アキラさん=東京都中野区
トランプ米次期大統領のものまねをする「ザ・ニュースペーパー」の松下アキラさん=東京都中野区

目次

 1月20日(日本時間21日未明)、米国大統領にトランプ氏が就任します。これまで、日本中の誰よりもトランプさんの言動やしぐさを念入りに観察してきたと思われる人物に「トランプさんの胸の内」を読み解いてもらいました。(朝日新聞大阪社会部記者・阪本輝昭)


「……今日は日本語でいいかな?」

 「ハロー、トランプだ。ホワイトハウスへようこそ。……今日は日本語でいいかな?」

 社会風刺コント集団「ザ・ニュースペーパー」の松下アキラさん(52)が東京・中野の事務所で出迎えてくれました。

 政治家のものまねコントがお手の物で、小泉純一郎・元首相、舛添要一・前東京都知事ら日本の政治家から、オバマ米大統領、プーチン・ロシア大統領に至るまで、持ちネタは広く国境を超えています。

トランプ米次期大統領のものまねをする松下アキラさん=東京都中野区
トランプ米次期大統領のものまねをする松下アキラさん=東京都中野区

「なんかちょっと『来る』ような気が……」

 その松下さんが金髪のカツラを用意し、トランプネタの仕込みを始めたのは昨年3月ごろ。トランプさんはまだ共和党内で指名争いを演じる候補者の一人に過ぎませんでした。

 「ちょっとねえ……不安があったんだ。なんかちょっと『来る』ような気がして……」

 コントの題材として多くの政治家の盛衰を観察してきた経験ゆえの勘でしょうか。

トランプ氏に扮して公演する松下アキラさん=ザ・ニュースペーパー提供
トランプ氏に扮して公演する松下アキラさん=ザ・ニュースペーパー提供

 「トランプさんは表情で語るタイプで、とにかく表情がよく動く。だから私も表情筋を鍛えるようになったよね」

 演説の内容まではしっかり聞いていなくても、その表情でだいたい何の話をし、誰を攻撃しているのかがわかる。

「これはすごい芸当。役者の立場から言うと、本物の政治家にこれをやられちゃたまんないよ」

「自分がバカにされるのをいとわない」

 役者になる前はプロの看板職人だった松下さん。こつこつ第一線で働く労働者の気持ちをつかむうまさを、トランプさんの話術にも見いだします。

 「大げさな言葉で、自分がバカにされるのをいとわない。お高くとまっていない。でも、その裏には、『バカにされてもいい、それで最終的に自分がもうけられたら勝ち』という冷静な思考もかいま見える。トランプさんには『芸人だましい』があるね」

会見場で記者を指さすトランプ氏=2017年1月11日、ロイター
会見場で記者を指さすトランプ氏=2017年1月11日、ロイター

「演じがいがあるのは小泉さんだね」

 同じ「劇場型」政治家という点で、小泉元首相とトランプさんの類似性を指摘する意見もあります。しかし、小泉さんが「はまり役」だったという松下さんの目には「二人は全く別のタイプ」と映るそうです。

 何か不都合に直面したり、痛い指摘を受けたりした時に、小泉さんは言葉を巧みに操ってはぐらかす。一方、トランプさんは瞬時に反発する、怒鳴る――。

 「小泉さんの物まねは、お客さんにいったん言葉の意味を考えてもらう『間(ま)』が大事だった。トランプさんは『バカ』『間抜け』って言っていればいいので楽だし、客席の反応もいいけど、演じがいがあるのは小泉さんだね」

電動二輪車「セグウェイ」に乗って官邸に向かう小泉純一郎首相(当時)=2005年12月16日
電動二輪車「セグウェイ」に乗って官邸に向かう小泉純一郎首相(当時)=2005年12月16日 出典: 朝日新聞

一番ウケる「壁」ネタ

 今のところ、トランプネタで一番ウケるのは「壁」をめぐるコント。

 「メキシコ国境との間に壁を作る」とのトランプ発言をもじって、地方での公演で「隣の○○県民が入ってこられないように県境に壁を作ろう。費用は、そのまた隣の××県に払わせる!」とやると、大きな笑いがとれるとか。

 「ただ…」と松下さんは言います。「人を傷つける笑いはしたくないから、ネタとしてはこのあたりがギリギリ。これ以上、トランプさんが『分断』や『排除』のメッセージを強めていくと、笑いにはなじまなくなるよね」

メキシコのティフアナで、海の中まで伸びた米国との国境の柵。左側がメキシコ=2016年11月5日、田村剛撮影
メキシコのティフアナで、海の中まで伸びた米国との国境の柵。左側がメキシコ=2016年11月5日、田村剛撮影 出典: 朝日新聞

冷静にそつなく務める?

 一方、大統領になった後のトランプさんは「超えてはいけないレベル」を冷静に意識しつつ、そつなく務めるのではないか、ともみる松下さん。日本との関係も良好に維持できるはずと考えているそうです。

 「本人の方が面白いじゃないか、と言われるのが役者としては一番つらい。そうならないよう私も頑張らないといけないね……」

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