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経歴詐称がバレて収入3倍? しかもカツラ疑惑まで…冠二郎の潔さ
10年間苦しんだ末、「旅の終りに」のミリオンセラーで、ようやく人気歌手の仲間入りを果たした冠二郎さん(72)。ところが昨年、年齢詐称が発覚しちゃったんです。後のKさんのように表舞台からいなくなるのかと思いきや、自ら進んでネタにし、露出を増やしていった二郎センパイ。「ヅラ疑惑」に対しても「引っ張って!」と即レス。自分をさらけ出す潔さ、勉強になります!(朝日新聞文化くらし報道部記者・岡田慶子)
私がセンパイに初めて会ったのは、今年4月の上旬。音楽担当の記者として、新曲のインタビューをしに行ったはず……。でした。
「ようこそ!」。ペコリと頭を下げて迎えてくれたセンパイは、失礼ながら、大御所の風格や威厳のようなものは全く感じさせず、漂うのは底抜けの明るさと人のよさ。
冒頭、演歌を始めたきっかけを尋ねると、「あっ、その前に実は私、去年、年齢詐称で……。ご存じでしょ?」
センパイは1967年のデビュー時、23歳でした。ところが、レコード会社や事務所の方針もあって、公式プロフィルは5歳若い18歳に。以来48年間ひた隠しにした実年齢がバレたのは、昨年2月の週刊誌のスクープでした。
「書いた記者の奥さんが秩高(ちちこう=母校の秩父高校)の後輩で。最初は、人のこと暴いて何の恨みがあるんだって思った。でも、彼とはこないだ握手したよ。あなたのおかげで収入が3倍になった。ありがとうって」
「いっぺんに全国に後輩が増えちゃった。『冠くん、冠くん』って言ってた千昌夫さんの二つ上になって、突然舟木一夫さんの先輩になっちゃった」
もはや吹っ切れたかのようにネタにしていますが、サバを読むことに、葛藤はなかったんでしょうか。
「パスポートや運転免許証、保険証は、いっつもコソコソ持って絶対見せない。インタビューも、つじつまが合わないときがあって。結婚すると相手にバレちゃうでしょ。ずっと独りだったのは、そのこともあったよ。恐ろしいよ。人をだますのは。つらいよ」
そして、こう付け加えました。「一時カツラ疑惑も出たけどね。俺の毛、本物だよ。これ、ぜひ引っ張って。ガバーッてやって」
そう言うなり、頭をぐいぐい突き出して検証を求める二郎センパイ。恐る恐る手を伸ばし、整髪料で固められた毛束をひとつまみ……と、センパイは私の両手をつかんで、髪の毛をガシガシ引っ張らせます。
「7人目かな、引っ張ったのは」。地毛認定に、ニカッと笑っていました。
そんなセンパイは来年、デビュー50周年。記念曲としてこの2月にリリースしたのは、52年前に録音したものの、移籍に絡んでお蔵入りになったあの曲。幻のデビュー曲「友情の海」です。
「ワインの50年モノみたいに、熟成したんじゃないかな。冠二郎の50年間は泣き笑い。人間的なものもいろいろ乗り越えてきたし、味とか渋みとかは50年前と比べると、違いますね。年齢詐称の私がね、いろいろやった分だけね」
ちょいちょい年齢詐称ネタを挟んで、笑いを取ろうとする二郎センパイ。とはいえ、実年齢がバレたからこそ、つかめた幸せもあります。
今年3月末、31歳年下の歯科衛生士(41)と結婚。生涯で初めての伴侶を得ました。
飯島直子さん似という奥さまは「年のことは言わないで。私にとっては58歳だから」と、言ってるとか、いないとか。 「歌もあと2、3年でやめようかと思っていたら、伴侶が天から降ってきました」
「ここまできたら、歌えるとこまで歌い続けて、いい骨董品になってやろうと思ってね。自分で言うのもおかしいけど、俺は人の3倍遠回りしてるから、人の3倍生きてやろうって。そう思ってる」
「冠二郎のすごすぎる人生」は5月21日発行の朝日新聞夕刊紙面(東京本社版)「ココハツ」と連動して配信しました。
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