IT・科学
ICTで豊かな社会を 「デジタルトランスフォーメーション」に注目
提供:NTT
「デジタルトランスフォーメーション」って、何だかカッコ良さそうな言葉・・・。
けっしてヒーローの必殺技ではなく、ICT(情報通信技術)の関連用語です。企業のビジネスの世界を中心に注目されていたデジタルトランスフォーメーションが、私たちの生活にも身近なものになろうとしています。どういうことでしょうか?
川添氏
そう説明するのは、NTT取締役研究企画部門長の川添雄彦氏。
川添氏
川添氏の発言は、9月に東京都内で開催されたシンポジウム「朝日地球会議2018」の特別講演でのもの。デジタルトランスフォーメーションによる豊かな社会の実現を目指して、NTTグループとパートナー企業が取り組む技術やサービスが紹介されました。
それらの取り組みに共通しているのは、「誰も置き去りにしない」。朝日地球会議でも大きなテーマとなった、国連の「持続可能な開発目標(SGDs)」の基本理念でもあります。人々がさまざまな違いを乗り越えて豊かさを実感できる社会に向けて、テクノロジーは何ができるのか。そのヒントが講演から見えてくるかもしれません。
最初に川添氏が例として挙げたのは、コミュニケーションを円滑にするための技術です。音声認識技術はスマートフォンなどで普及しつつありますが、雑音の中での会話や、方言やなまりまでうまく認識できるというわけではない課題があります。
また、翻訳した言葉を音声にする際に、話し手本人の声ではなく合成音で表されるため、本人の言葉として共感しにくいという現状があります。
川添氏
話し手の声質で多言語の音声を合成する技術を開発しているほか、喜びや悲しみといった感情を認識する技術にも取り組んでいるそうです。言葉だけでなく気持ちまで伝えることができれば、コミュニケーションの壁はなくなっていくのではないでしょうか。
初めての場所に移動するのも、今ではスマホのナビゲーションを使えば簡単に行けるようになりました。次のテーマは「移動をスムーズに」です。
便利に見えるナビゲーションの機能も、すべての人にとって使いやすいとは言えません。段差や階段などのバリアフリー情報も盛り込みたいところですが、コストがかかるというのが難点です。
川添氏
解決策の一つとして紹介されたのが、スマホアプリの「MaPiece(まっぴーす)」。ユーザがアプリを起動して歩くだけで、自動的に段差などの情報を取得します。そうやって集められて更新されたデータから、車いすなどで通れるルートの情報を抽出し、地図化することができるようになるのです。
ICTの発達によって人々の心理的距離は近づきましたが、時間と空間の壁はいまだに大きく残っています。その壁を超える技術として川添氏が挙げたのが「Kirari!」。あたかもその場にいるかのように、空間の丸ごと伝送を目指す技術です。
川添氏
例えば大きなスポーツ大会で、離れた場所にパブリックビューイングで臨場感の高い空間を実現するといったことも可能に。世界中の人々が一緒にリアルタイムで楽しむことができれば、お互いのコミュニケーションはきっと広がっていくことでしょう。
さらにNTTグループでは、歴史的な文献をデジタルアーカイブにするプロジェクトも展開中。異なる国の文化を離れた国へと伝え、後世に継承することによって、時間と空間の壁を超えるだけでなく、文化の壁をも超えようという取り組みです。
川添氏
最後のテーマは「健康維持」。健康診断の結果などのデータをAIの技術で解析して、生活習慣病になるリスクを予測。少ないデータしかない場合でも高い精度で予測できる技術にチャレンジしているそうです。
4つの分野でデジタルトランスフォーメーションの例を挙げてきましたが、誰も置き去りにしない真に豊かな社会のためには、さらなる技術の進歩が必要です。
川添氏
川添氏が名前を挙げたのが「LASOLV(ラゾルブ)」という新しい形のコンピュータ。特殊なレーザー(Laser)を用いて問題を解く(Solve)という意味が込められています。複雑化する社会システムの中で、現代のコンピュータが処理能力の限界で解くことのできない問題を、解決できるのではないかと期待されています。
これまでにも技術は、様々な社会課題を解決してきました。でも、時代が進むと、今までになかった課題が生まれます。新しい課題を解決するために技術が進歩する。その繰り返しで社会が少しずつ豊かになってきたと考えると、どんな壁も打ち破れそうな気がしますね。
ちなみに次回は、時間と空間の壁、文化の壁を超える取り組みの実例を、動画を交えて紹介する予定。歌舞伎とバーチャルシンガーという、日本が世界に誇る文化の融合には注目です!