地元
東京タワーに職員も知らない「地下2階」! 実際に探してみると…
東京タワーは何階建て――? 誰もが知る建物でも、知らないことは多いもの。普通は入れない場所もあります。それを誰でも書類上でかいま見ることができるのが「不動産登記」です。今回は「登記から見た東京」をテーマに、さまざまな名所の裏側を調べてみました。
まず調べたのは東京の象徴、東京タワーです。
建物を建てたときは、国に登記を申請しなくてはいけません。登記された情報が載っている「登記事項証明書」は、法務局などで誰でも入手できます。ネット検索をすると、たまに東京タワーの証明書を入手した人がツイッターなどに投稿しています。
ただ、その証明書の内容にはどうにも不思議な点があります。東京タワーには存在しないはずの「地下2階」があると書かれているのです。
来場者には明かされていない、秘密のフロアがあるのでしょうか?
記者も東京法務局で、東京タワーの登記事項証明書を入手してみました。
建物の種類の欄には「電波塔」の文字が。さらに確かに「地下2階付き15階建」と書かれています。
しかし実際に東京タワーに行ってみると、地下2階への階段はどこにも見当たりません。案内板にもエレベーターにも、忘れ物預かり所がある地下1階しか書かれていないのです。
案内窓口にも聞きましたが、職員の人に「地下2階はございません。どういった場所をお探しですか?」と不思議そうな表情で尋ねられてしまいました。
そこで運営会社の日本電波塔に聞いてみると・・・広報担当者から意外な真相が飛び出してきました。
「チケット売り場やエレベーターロビーがある階は、館内で1階とご案内しています。しかし社内で確認したところ、この1階は法律に照らすと『地下1階』にあたるのだそうです」
なぜ、こんなズレが起きるのでしょうか。東京法務局に取材したところ、解説をしてくれました。
「東京タワーは、傾斜した土地に建っていますよね。高低差がある土地に建っている場合、平均した高さより床面が下にあるなど、条件を満たしたフロアは地下階として扱う定めになっています」
言われてみると、とても坂が多い東京都心を象徴するように、東京タワーの敷地は急坂になっています。坂の上にある駐車場から、建物の2階に直接入れる構造になっているほどです。
坂の下の方にある1階は、法令に照らすと「地下1階」になってしまうというわけです。
一方で地上に目を向けてみると、登記事項証明書には東京タワーが「15階建」と書いてありました。
運営会社に内部資料を見せてもらいました。塔のところどころにある機械室などが「階」とみなされています。そして高さ150メートルにある大展望台は10・11階、高さ250メートルにある特別展望台は最上階の15階にあたります。
大展望台に建つと、都内の景色が眼下に見渡せます。ここが一般的なマンションでも耳にする10階だというのは、少し不思議な気がしました。
ほかにも、東京都内の有名な場所を調べてみました。
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2012年に完成した東京スカイツリーは、地上29階建てです(登記では構造の関係で19階建て)。
スカイツリーを「輪切り」にしたような、各階の図面も見ることができます。
たとえばツリーの3階部分を見てみると、断面は正12角形をしています。中央から放射状に床が広がる構造だと分かります。
イメージが沸くように例えると、何となくキュウリの断面に似ています。
運営会社によると、各階には電源やポンプ室など様々な設備が置かれているといいます。
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文京区にある美しい洋館「鳩山会館」は、内閣総理大臣を務めた鳩山一郎氏の邸宅を記念館にしたもの。この洋館で自由党(現・自民党)の創設が計られるなど、戦後政治の舞台ともなりました。
証明書を調べると、現在は孫の鳩山由紀夫・元首相が所有していることが分かります。
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最後に建物ではありませんが、日本最南端にある「沖ノ鳥島」も東京都に属しています。
沖ノ鳥島は広いサンゴ礁と、二つの小島から成っています。そのうち土地の登記に載っているのは、二つの小島だけ。それぞれの広さは7.86平方メートルと1.58平方メートルで、合計しても畳5枚分ほどの広さしかありません。
所有者の国交省に聞いてみると、満潮時にはサンゴ礁は水没してしまいます。二つの小島のうち、満潮時にも水面から出ている面積を登記しているのだと言います。登記からも日本の最南端は、とても小さな島であることが分かります。
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