広告特集 企画・制作
 朝日新聞社メディア事業本部

意思疎通の選択肢を増やすために 文字で伝える「要約筆記」とは

行政機関などに手続きに行くと、手話通訳と並んで、「要約筆記に対応しています」と掲示されているのをご覧になったことがあるかもしれません。「要約筆記」とは、聞こえない・聞こえにくい人たちへの情報保障のひとつで、主に手話が第一言語ではない聴覚障害のある人たちへ、文字でコミュニケーションする支援方法になります。要約筆記とはどんなサービスなのか、どうすれば要約筆記者になれるのか、など音声情報バリアフリー社会実現のために活動する全国要約筆記問題研究会(全要研)の山岡千惠子理事長にうかがいました。

話の内容をまとめ、大事なところを伝える技術

要約筆記は、話の内容をそのまますべて書いて伝えるのではなく、話し手の言いたい内容を分かりやすく、文字で伝える情報保障の手段です。手話通訳と同じように、意思の疎通が難しい人たちへの福祉サービスとして提供されています。人によっては、要約筆記よりも、「ノートテイク」の方が耳慣れた言葉かもしれません。大学などで、講義の内容を要約して聴覚障害のある学生に文字で伝えるアルバイトやボランティアの募集を見たことがある人もいるでしょう。

要約筆記のやり方には手書きとパソコンを用いたキーボード入力があります。どちらも、対象者が2人程度であれば、隣に座って紙に書いたものやパソコンの画面を見てもらいます。説明会など対象者が大人数になる場合は、スクリーンに映すなどして伝えます。

簡単な会話を筆談でサポートするだけなら手伝えるかも知れませんが、話した内容をそのまま全部伝えようとすると、話の進むスピードに書いたり、入力したりする速度が追いつかなくなってしまいます。そのため、要約筆記に従事する人には、大事なところを要約して伝える専門的なスキルが求められます。また、業務として要約筆記にかかわる場合は、医療相談や就労支援など生活に深く関わるシーンに立ち会うことも多いので、責任も大きくなります。

高い専門性を身につけ、対象者のコミュニケーションを支える

そのため要約筆記者になるには、まず専門的な技術と知識を身につけるため、各都道府県で開催される「要約筆記者養成講習会」を受講することが必要になります。受講資格は特になく、誰でも学ぶことが可能です。講習会には、手書き・パソコンの各コースがあり、厚生労働省の「要約筆記者養成カリキュラム」に沿った講習を84時間以上受講し、聴覚障害者のコミュニケーション支援の理念や技術を学びます。講習会修了後、学科と実技の全国統一要約筆記者認定試験を受けて合格すれば、都道府県や市町村に要約筆記者として登録し、派遣依頼を受けられるようになります。

派遣される仕事内容としては、聞こえない人がかかわる各種の手続きや通院、裁判などに同行するほか、講演会や説明会といった場での発言内容の通訳作業になります。依頼の頻度は自治体の規模によってまちまちなので、全要研によれば本業となる仕事を持ちつつ要約筆記者として活動する人が大半だそうです。

要約筆記者の活躍の場を広げ、よりよい社会に

また、新型コロナウイルスの感染拡大による影響も深刻でした。人と人との接触を減らすことが推奨され、現場での要約筆記の派遣依頼も減少しました。音声で簡単にやりとりができないため、聞こえない人は会議もできない状況になりました。全要研は、早速オンラインでの遠隔要約筆記の試みを開始しました。活動中の要約筆記者向けに、Web会議システムを利用した遠隔要約筆記の方法を検討し研修も行いました。今では、地域により遠隔要約筆記の派遣も始まっています。働き方をはじめ人々の生活も大きく変化しました。対面での会議が減り、リモートワークやオンライン会議が増え、要約筆記のスタイルも変化を求められています。全要研としても様々な角度から取り組んでいます。

全要研の山岡千惠子理事長

一方、自宅にいながら遠隔で要約筆記の仕事ができるようになれば、新たな要約筆記のニーズが生まれる可能性や、働き方の工夫で要約筆記に携わる人を増やすことができるかも知れません。「そのためにも要約筆記の存在をより広く知ってもらい、社会状況の変化に合わせて要約筆記というコミュニケーションスタイルを発展させていきたい」と山岡理事長は今後の展望を語りました。高齢化が進む社会において、要約筆記に助けられるのは、聴覚障害者だけではありません。それぞれの人が理解しやすい方法で情報が保障されることで、バリアフリーな社会は実現するのではないでしょうか。

HOME

ARTICLE

本事業は、意思疎通支援従事者確保等事業
(厚生労働省補助事業)として実施しています
(実施主体:朝日新聞社)