連載
#9 未来空想新聞
自分の「おもしろい!」が社会課題の解決に 挑戦の原動力は好奇心
山内奏人さん・辻愛沙子さん 次世代の起業家2人に聞く
Sponsored by パナソニック株式会社
人口減少、経済の低迷、ジェンダーギャップ。多くの社会課題を抱える日本で、どのように未来を切り開いていけばいいのでしょう? 新しいサービスを生みだし、挑戦を続けてきた次世代の起業家2人に、「こうあって欲しい」ビジネスや社会の未来について語ってもらいました。
対談に臨んだのは、IT企業経営者の山内奏人さんと、クリエイティブ・ディレクターの辻愛沙子さん。
山内さんは幼い頃からパソコンに親しみ、プログラミングを独学で学びました。2016年に15歳で会社を創業。2018年には、レシートの写真を撮ってアップロードすれば現金を得られるアプリ「ONE」を開発し、ローンチ後16時間で8.5万ダウンロードされるなど大きな話題を呼びました。現在はWED株式会社の社長として、新たなサービスの開発に取り組んでいます。
辻さんは中学時代に自分の意思で日本を飛び出し、イギリス、スイス、アメリカで学生生活を送りました。帰国後、慶応大学在学時から、広告会社に勤務。その後、株式会社arcaを創業しイベントや商品開発、ブランドプロデュースなど、様々な活動をしてきました。クリエイティブを通して社会にメッセージを発信していると同時に、報道番組でコメンテーターを務めるなど活動の領域を広げています。
山内さんと辻さんは、1995年以降に生まれた世代。辻さんは「『失われた30年』とよく言うけれど、私たちは、生まれたときからずっと失い続けている世代」と話します。
そんな時代に事業を立ち上げた2人に共通しているのは、「自分たちの世代が日本のモメンタム(勢いや推進力)を取り戻す」という気持ちです。
山内さんは10代の頃から「僕らの世代が勝っていきたい」と考えてきたと言います。「(人口減少などで)市場がシュリンクしていることには抗えないけど、その中でもモメンタムを取り戻せる手応えは感じています」
山内さんが経営するWEDのフィロソフィーは「あたりまえを超える」。「自分たちのパフォーマンスとしても、ユーザーの体験としても、現状のあたりまえを超えたものを提供できているかを重視してきました」
辻さんもまた、若い世代が行動することの重要性を、事業を通して実感しています。「差別や戦争、貧困などの問題がある世界で、『社会ってこういうものだから』と上の世代に諭されたとしても、『いや、それって変えていくべきじゃない?』と行動する若者は少なくないように思います。個人としても会社としても、これまで蔑ろにされてきた痛みや声を可視化するべく努めてきました。社会課題って経済合理性と相反するものと言われてきましたが、そういう見て見ぬ振りされてきた痛みに寄り添うことで、ちゃんと事業として成立すると証明したいんです」
自ら新しいサービスを作り、様々な分野で社会に発信をしてきたにもかかわらず、2人には「自分たちが社会を変えた」という意識はないと言います。
山内さんは「好きで始めた事業が、結果として社会課題も解決しているような感覚」。辻さんは「私がみんなを導こうなんて思っていなくて、『小さな声のn数』を増やすことが自分の役割で、そこにあるものをただ『そこにあるよ』と言葉にしているだけ」と話します。
経営者であるプレッシャーや、失敗を恐れる気持ちも当然あるものの、それでも2人が突き進めるのは「自分の好奇心に従って動いているから」。
「私は、自分がおもしろいと思える社会にしたいし、未来の可能性を信じている。私たちが夢見た未来をこれからの世代の誰かが見届けてくれたら勝ちだなって思うから、自分も全力でバトンを渡すためにがんばれます」(辻さん)
「1人で始めた会社ですが、現在は志を同じくする優秀な仲間が集まっています。チームに自信を持っているからこそ、いま何かを失っても長い目で見ればリターンの方が大きいと信じられるし、何事もおもしろがって挑戦していけるんです」(山内さん)
2039年には、山内さんは38歳。辻さんは44歳。山内さんは、自身のように若くして起業する人が増えると良いと考えています。
「起業するならキャリアを積んでから、と考える人が多いですが、最初から経営者を目指す10代が増えてほしい。年収1億円以上の20代がたくさんいる、なんてニュースも見たいですね」
その上で、後進を育てる立場として、山内さんは「次の世代を全力で潰しにいきたい」と話します。
「手加減をしないのは最大のリスペクトです。僕もそうされてきたので。全力で潰す気で戦って、負けたいです。創業したときに僕は中卒でしたけど、ノンキャリアで起業しても会社を成長させられる良い前例になりたいと思っています。例えばソフトバンクグループの孫正義さんは、僕にとって『こんな道もあるんだ』と示してくれた前をゆく人。いま大成功していても過去に結果が出ない空白の期間があったという前例は、若くして起業する人にとって大きな安心材料になるはずですから」
「私も、自分の意思で中学校を辞めて海外の学校に行ったときは周りに不良娘だと言われたこともありました」と、辻さん。「でも、自分の可能性を信じてくれる人のポジティブな言葉だけをふるいにかけて残してきた。これからも言葉の力を信じて人に接していきたいです」
「それから、未来に解決していてほしい課題はたくさんあるけど、その中でも同性婚は実現していてほしいです。『小さな声のn数』を増やし大きくすることで、一人ひとりの個が尊重され、幸せに暮らしている人がたくさんいる未来になってほしいですね」