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〝異形〟に魅せられ「妖怪」を描く コーヒーで古紙風に表現する画家
きっかけは『ゲゲゲの鬼太郎』でした
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きっかけは『ゲゲゲの鬼太郎』でした
妖怪をモチーフにした作品をSNSで発信する絵描き・Oka Yukaさん。古紙風に仕上げるため、下地に〝コーヒー〟を使っているそうです。作品に神秘的な印象を与えるその技法や、妖怪を描き続ける理由を聞きました。
「妖怪って変な形やし、『異形』が好きやったんちゃうかな。おったら楽しいやろなぁと思って」
妖怪を描く大阪府在住の絵描き・Oka Yukaさんはそう話します。
幼稚園のころ、テレビアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』を見て衝撃を受け、人間ではない〝異形〟なものへの関心を深めてきました。
「『釜鳴り』という、長年使われた釜に魂が宿った『鳴釜(なりかま)』をモチーフにした妖怪が、鬼太郎を吸い込んでいたんです。それが記憶にへばりついていました」
その後も、小学4年生でエジプト神話に、中学生で日本神話に興味を持ちました。「テレビで見たエジプトの壁画は、人のような絵がずっと並んでいて『あれはなんや!?』と衝撃でした。その後、中学生のときにテレビを見ていて日本にも神話があることを知りました」
異形の存在に惹かれる気持ちは、幼少期から一貫しているそうです。
絵を描くことも幼い頃から好きでした。記憶に残っているのは、幼稚園の先生が毎月手作りしていたカレンダーです。
「先生が季節に合わせて絵を描いていて、その過程を見るのが大好きでした。みんなが遊んでいる間も、横でじっと見ていました」
小学1年生から中学3年生までは絵画教室に週1回通い、アクリル絵の具や色彩を学びました。高校は美術科に進み、油絵や水彩画、粘土、木工などを経験。芸術大学のデザイン学科へ進学し、イラストやCGを極めました。
大学生になって古本屋で水木しげるの漫画を探すうちに神話を題材にした漫画にも出会い、「日本神話の神様にも名前が付いている」ことを知りました。
そこから日本書紀や古事記を読み、実際に描かれた地域を訪ねて日本神話の絵を描くようになったといいます。
友人に勧められて妖怪が題材になった推理小説を読んだり、江戸中期の浮世絵師・鳥山石燕(せきえん)の妖怪画集『画図百鬼夜行』も手に取ったりして、妖怪を詳しく調べていきました。
当時は就職氷河期。絵の仕事を希望してデザイン事務所を受けましたが思うようにいかず、飲食店などでアルバイトをしながら生活しました。
趣味で妖怪を描き始めたのは、10年ほど前のことです。それまではアナログとデジタルを融合させて創作していたOka Yukaさんですが、大きな作品に挑戦したいとアナログで妖怪を描くことにしました。
「飽き性なので、好きなものしか描けないと思って妖怪を描くようになりました」
人間の形を描くのは苦手だったことに加え、妖怪は人間に比べて自分の世界観で描けることも気持ちが楽だったと言います。
「以前夫に、『人間は自分たちが見ている一番身近な動物やから、粗が探しやすい』と言われたんです。『ここが変』というのがみんなに分かりやすいけれど、動物だと多少の違和感があっても粗が目立ちにくい。それなら、中国の妖怪は動物のような姿が多いので、楽しく描けそうだなって」
「妖怪も、もしかしたら詳しい人から『こんなん違うで』と言われるかもしれませんが、『うちのイメージはこれやから』って、そういう逃げ道があると思いました」
2017年頃からは、専業作家として活動を始めました。
大きさにもよりますが、ひとつの作品にかかる時間はおよそ1カ月。作品は古紙風に仕上げるため、下地にコーヒーを使います。
「木製パネルに紙を水張りして、その上からコーヒーを塗っています。美しく描きたいとは思っていますが、下地がどう定着するか分かりませんし、こちらがコントロールできないんです。色を置くのも苦手なので、だいたい青、赤、白、黒、コーヒーの5色で仕上げています」
偶然性が高いからこそ、納得のいく作品は自身の想像を超える出来になります。特に代表作と胸を張れるのは、「鵼(ぬえ)」を描いた作品です。
「2023年に京極夏彦さんが17年ぶりに書き下ろした推理小説『百鬼夜行シリーズ』の『鵼の碑(ぬえのいしぶみ)』を読んでイメージしました。小説で鵼の説明を読み、『自分の中ではこんな感じかな』と解釈しました」
妖怪の背景を調べ、知識もすべて創作に活かすのがOka Yukaさんのスタイルです。
「鵼はもともと姿がない妖怪ですが、一般的には顔がサルで胴体がトラとされています。私が描いた鵼は、よく見るとお面で顔を隠しています。背景と体の色も同じ茶系にしてぼかし、存在を曖昧にしました。思っていた以上に仕上がりが良く、納得のいく作品になりました」
今めざしているのは「小説などの装画」と「海外での個展」です。愛する妖怪を、海外の人にも知ってもらいたいと考えています。
「私の絵そのものよりも、妖怪に興味を持ってもらえるとうれしいです。もっともっと妖怪好きが増えたらいいなと思います」
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