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笑い声も、拍手も…字幕で表示 お店の雰囲気や会話をディスプレーに

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レジ横のディスプレーに、店員とのやりとりがリアルタイムで映される――。そんな文字起こしアプリを使ったイベントを取材した記者。イラスト化した文字で、笑い声や拍手も表示されます。このアプリが広がったら、社会はどう変わるのだろうか……考えました。(朝日新聞記者・杉山あかり)
「これが広がったら、私たちの存在意義はどうなるかしら」
要約筆記の仕事をしている女性から言われ、返事に困ったのは、「世界に字幕を添える展」を取材したときのことでした。
東京・原宿の商業施設で5月に開催されたイベントで、女性が使っていたのは、リアルタイム音声認識アプリケーションシリーズ「YYSystem」です。
トヨタ系の自動車部品大手アイシンが開発したもので、店のレジ横に設置されたディスプレーに、店員とのやりとりが文字で表示されます。
記者も耳栓をして店内を回ってみると、アプリの精度の高さと機能に舌を巻きました。
言葉のニュアンスや場の雰囲気がわかりやすいよう、笑い声には「あはは」、拍手には「パチパチ」とイラスト化された文字が現れます。
別のモニターには、認識した店内のBGMの曲名が表示されました。
「パンダが飲み会をしています」と話しかけると、AIで生成された、ササを手にし頰を赤く染めた3匹のパンダのイラストが現れました。
このアプリが利用者として想定するのは、聴覚障害者だけではありません。
聴力検査では異常がないのに、聞き取れないといった「聞き取り困難症」の人なども含みます。
また、英語など31言語の翻訳にも対応していることから、海外からの旅行者とのやり取りにも使うこともできるといいます。
ただ、戸惑う場面もありました。アプリが起動していないうちに店員の説明が始まったり、表示設定に時間がかかったり……。使い方や課題はまだあるのだと思います。
コミュニケーションは、発する言葉だけではありません。細かなイントネーションや雰囲気で、受け取り方も変わります。
アプリの生かし方次第で、きっと様々な立場の人とのコミュニケーションが取りやすくなる――。文字起こしアプリは日頃の取材でも使っていますが、その広がりを感じた取材でした。