話題
ガソリンが日本一高い長野「海なし県だから」は本当か?浮かんだ疑惑

話題
長野のガソリンの平均価格は、高い――。隣の県から転勤して記者が実感するようになった「ガソリン価格」の高さ。県境をはさんだ同じ「海なし県」の山梨で給油をする長野ナンバーの車もあります。2月にはガソリン価格を引き上げるカルテルが結ばれていた疑いで、公正取引委員会が立ち入り検査に入っています。記者が取材を振り返りました。(朝日新聞記者・高木文子)
昨年の春、岐阜から長野へ転勤しました。隣り合う「海なし県」ですが、長野県は、ガソリンの平均価格が高いのです。
それは、製油所から遠い内陸で、小規模なガソリンスタンド(GS)も多いから――。
事業者団体の長野県石油商業組合はこう説明してきました。
とはいえ、レギュラーガソリンが、1月まで22週連続で「日本一」の高値。何だかモヤモヤしていました。
そんな長野県で、公正取引委員会が組合に立ち入り検査に入ったのは2月。
長野県北部の支部を中心にガソリンなどの価格を引き上げるカルテルが結ばれていた疑いがあるということでした。
県境をはさんだ隣の山梨県南アルプス市を訪ねると、大型量販店「コストコ」のGSに長野県のナンバーの車がきていました。
有料会員限定ですが、1リットルあたり長野県境のGSより20~30円ほど安い価格でした。
山梨県も同じ「海なし県」。長野県からきた女性は不信感を持っていました。
「(自宅周辺の)GSはあまりにも高い。全県でカルテルの疑いがあるのではないでしょうか」
長野県内のGS関係者は、こう明かします。
少なくとも15年前からガソリンの値動きを事前に知らせる連絡が組合加盟の同業者からあった。その後、社内からもこれと同じ値動きを指示される――。
「十数年前はどのスタンドも利益が薄く、やめていく店もある『冬の時代』。利益をそれなりに取っていこうという流れがありました」
カルテル疑惑が報道されて、同業者からの連絡はなくなりました。一方、お客に「もうけてるんだろう」と疑いの声もかけられるようになったそうです。
人口は減り、燃費がよくなり、ガソリンの需要は右肩下がりとなった現在。
関係者は「ものすごい黒字ではないけれど、利益もある程度とれて、助かる部分はあった。でも本当にもうかっていたら店を改修しています」と打ち明けます。
暖房の灯油も、農業機械の軽油も、地方の暮らしには欠かせないものです。
各地のGSは、災害時に救急車などへ備蓄燃料を提供する役割もあります。山あいの過疎地では、GS存続に向け自治体も住民も努力してきました。
記者も全県を駆け回り、月数千キロを運転しますが、遠くにGSの看板が見えるとほっとします。
買い手にも売り手にも適正な価格とは何か――。人口減少が進むなか、地域拠点のGSをどう維持すべきなのか、カルテル問題を機に改めて考えさせられています。