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「お金をかけずに」旅する選択肢に 中高年に広がる現地の〝手伝い〟

地方に「お金をかけずに」旅をするサービスが広がっているというが……。※画像はイメージ
地方に「お金をかけずに」旅をするサービスが広がっているというが……。※画像はイメージ 出典: Getty Images

目次

旅行はしたいけれど、お金がかかる――。そんな悩みを解消するような、旅先で農家や旅館などの“手伝い”(アルバイト)をして報酬を得るサービスが利用者を増やし、Z世代から中高年へと広がっています。どのようなサービスで、なぜ人気なのでしょうか。運営会社を取材しました。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎)
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「行くきっかけがない」地方にも魅力

「なるべくお金をかけずに旅をしたい」。そんなニーズに応えるサービスが、近年、広がりを見せています。旅先で農家や旅館などの“手伝い”(アルバイト)をして報酬を得る「おてつたび」です。

運営会社の株式会社おてつたびによれば、立ち上げの2018年から7年で、登録ユーザー数は2025年3月現在約7万人に。また、受け入れをする事業者数は全国1800にのぼると言います。

登録事業者のうち、約4割が旅館やホテルなどの宿泊業、約4割が農業などの一次産業、残りの2割が地域の飲食店、酒造、アクティビティ事業者など。大きな偏りはないものの、自然が好きな人は農業の仕事に応募する傾向があり、例えば温泉が好きな人には「特典として温泉入浴可能」な宿泊施設が人気だということでした。

同社の広報担当者に話を聞きました。おてつたびは「お手伝い」と「旅」をかけあわせた造語で、「日本各地の素敵な地域へ行く人が増えてほしい」という思いから生まれたサービスだと言います。

「代表の永岡(里菜)は漁業と林業のまちである三重県尾鷲(おわせ)市出身なのですが、『行ってみれば素敵なものがたくさんあるが、行くきっかけがない』『“どこそこ?”と言われてしまう』という課題感を持っていました。

短期的・季節的な人手不足で困っている地域の人と、地域に興味がある旅行者をマッチングすることで、地域経済の活性化や関係人口の創出、地域のファン作りができるのでは、と考え、このサービスを立ち上げました」

利用者は“お手伝い”によりアルバイト代と宿泊場所を得られ、旅行に行く際の旅費が軽減されます(交通費は自己負担)。利用者は休日や空き時間にその地域を観光でき、事業者は旅を切り口に全国から働き手を集めて人手不足解消ができる、という仕組みです。

このサービスに、近年、変化がみられるといいます。参加者数のうち、約半数はZ世代である一方、2021年には全体の8%だった50歳以上の参加者が、2024年12月時点では26%に。中高年層の利用者数が急増しているのだそうです。なぜ、中高年にサービスが広がっているのでしょうか。

社会貢献より「自分の人生を豊かに」

その理由について、広報担当者は、「コロナ以降、テレワークの普及やワーケーションの利用で居住先の自由度も地方移住への関心が増えたこと」を挙げます。

また、JTB総合研究所が実施した「シニアのライフスタイルと旅行に関する調査※」において、旅行や外出の頻度が減った理由として「お金がない」(54.5%)、「同行者がいない」(13.2%)などの回答があったことを例に、次のように説明します。

※シニアのライフスタイルと旅行に関する調査(2016) - JTB総合研究所
https://www.tourism.jp/wp/wp-content/uploads/2016/03/20160331_senior_lifestyle.pdf

「こうしたシニア世代の旅行に対するハードルに対し、『おてつたび』では旅行費用を抑えられるだけでなく、一人でも参加できるというメリットがあります。実際に、参加者のうち93%がひとり旅で、現地での仕事を通じて地域の人々と交流することができることも、ご好評を頂いています」

同社が50歳以上のおてつたび参加経験者に実施したアンケート調査の結果、もっとも多かったサービス利用の理由は「日本各地、いろんな地域に行ってみたい」というもの。続いて「新しい経験がしたい」「旅行や温泉が好きだから」「滞在費や旅費を節約できる」などの回答があったそうです。

「『社会貢献をしたい』といった奉仕活動のような目的よりも、自身の人生をより豊かにすることや、経済的負担を削減しながら旅を楽しめることに魅力を感じていらっしゃるようです」

また、アルバイトという形態ではあるものの、「生計の維持のため(生活費を補うため)」や「貯蓄・貯金をするため」という理由を選んだ利用者は少数派。ただし、「滞在費や旅費を節約できる」は上位に入っており、お金を稼ぐためではなく、コストを抑えて旅を楽しむ意図がうかがえる、ということでした。

現在、課題になっているのは「受け入れ先の拡大」。利用者数に対して受け入れ事業者が少なく、募集定員以上に応募が集まり、「おてつたびにいきたいけど参加できない」という人も多くいると言います。

広報担当者は「人手不足に困っている事業者の方に『おてつたびという人材確保の方法があること』を知っていただき、活用いただきたいと考えています」とコメントしました。

>>利用者が話す「バイト旅」の意外な楽しみ 「この年でも…」子どもも驚く親の変化と新しい〝人生の目標〟<<

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