お金と仕事
週2のバイトも欠勤続き…「価値ない」 子育て優先の専業主婦の悩み
子育てと両立した生活6年、「崩れてしまった」

お金と仕事
子育てと両立した生活6年、「崩れてしまった」
国会でも「年収の壁」の議論が続きますが、子どもの看病のために専業主婦になった女性はそんなニュースを見かけるたびに「肩身が狭くなる」といいます。「働けない状況にいる人のことも知ってほしい」と語る女性に、その心境を聞きました。
西日本に住む38歳の女性は長女の看病のために専業主婦になりました。
12年前に生まれた長女は、生後すぐに手術。その後も呼吸器が弱く、1カ月に1回は高熱などの症状が出ていました。
女性は医療事務として働いていましたが、長女は「1回体調を崩すと回復に時間がかかるので、2週間ほどは仕事も休んでいました」と振り返ります。入院も何十回としたそうです。
出産後は1カ月の半分働ければいい方で、実際はそれもままならない日々。
「職場にいつも『すみません』と言って休みをもらっていました」
同僚からは「気にしないでいいよ」と声をかけてもらっていたといいますが、女性自身が申し訳ないという気持ちでいっぱいになっていたといいます。
「でも、自分がつらいと言ったら、治療をがんばって乗り切っている子どもに申し訳ない。はけ口がありませんでした」
働き方をパートタイムにするなどして調整を続けていましたが、6年が経った頃「自分が崩れてしまった」と話します。
夫は仕事の休みがとりにくく、朝早くに出勤し帰宅は午後8時ごろでした。
女性は夫と話し合い、長女の体調が落ち着くまで、夫婦の中で稼ぎ手と家事育児の担い手を分担することにし、自身の職場を退職しました。
「『私が産んだ子どもなので、自分でどうにかしないといけない』という、変な責任感がありました」
長女はその後、リハビリや投薬治療で症状が改善しました。12歳になったいまは、元気に過ごすことができているといいます。
ただ、いまは学校に行き渋ったり、休んだりすることも頻発しているそう。4歳の次女も体調を崩して保育園を休みがちなのだといいます。
専業主婦として家事育児にあたりながらも、仕事をしたいと考えていた女性は、昨年、週に2回のアルバイトをしてみたといいます。
ただ、週に2回の出勤でも、子どもたちの病欠が多く、そのたびに「休むなら代わりを探して」と言われ、続けることができませんでした。
「『私はなにもできないな』と思ってしまい、価値のない人間に思えてきてしまいました」
在宅の働き口がないかと探しますが、なかなか自分が安心して働ける仕事は見つかっていません。
子どもたちを優先させつつ、その合間を縫って少しでも働けないかともがく女性には、働きたい理由があります。
「休みと、そうでないときの区切りがなく、ずっとお母さん。お母さんでいられることはありがたいことなんですが、お母さんじゃない時間もほしい」
さらに、仕事をしていない「負い目」もあるのだといいます。
「周りには働いている人が多いので、独立したり、会社でいいポジションに就いたりしたという話を聞きます。そういう話を聞くと、人と距離を置きたくなり、でかけることもおっくうになりました」
その負い目から、次女の妊娠中には「働いていないんだから勉強くらいはしないと」と、保育士資格の勉強を始めました。
次女の出産から数カ月で資格を取得しましたが、まだ生かせる環境にはなっていません。
「子どもたちが体調を崩す心配があまりなくなったら、いつかはまた、誰かのために働きたいと思っている」と話す女性。
働きたい気持ちはあるものの、家族の事情でそれが許されない人もいます。
女性は、働き方改革や、年収の壁の話題をニュースで見るたびに「肩身が狭くなる」と話します。
「私も働いていたので、年収の壁の話がすごく大事なことは、わかります。でも、働いている人が中心の話を聞くと、専業主婦の肩身がどんどん狭くなるようにも感じます」
一馬力で家計が成り立つから、女性が働いていないのだと思い込んだ人からは「お金があっていいね」と言われたこともあったといいます。
「物価高で家計も苦しく、特にお米は困っている。我が家もできることなら収入を増やしたい」と女性。
「専業主婦でいる事情は、裕福かどうかだけではありません。『働けない人』のことをもっと想像してほしい」とし、働き手の事情に応じた働き方が自由に選べる風潮や勤め先が、一般的になることを望んでいます。
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