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お金と仕事

「生活だけで精いっぱい」の母親たち コーヒー飲み、思いをはせて

面接での「お子さんが風邪を引いたときはどうするんですか」に……。

「子どもの支援は広がっているが、大元の親の貧困をなんとかしないといけない」と担当者。写真はイメージです=Getty Images
「子どもの支援は広がっているが、大元の親の貧困をなんとかしないといけない」と担当者。写真はイメージです=Getty Images

目次

「濃い人生を送ってきたシングルマザーたちのことを知ってほしい」――。
コーヒー店がオリジナルで用意する「濃い」コーヒーを飲みながら、シングルマザーの置かれた状況を知ってもらおうとするキャンペーンが、3月8日の国際女性デーに合わせて各地のコーヒーショップで展開されます。

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子どもの支援は広がっているが…

キャンペーンを展開しているのは、シングルマザーを中心に、困窮リスクを抱える女性へのマイクロファイナンス(少額融資)や就労支援をしている「グラミン日本」。ノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス氏がバングラデシュで創設した「グラミン銀行」の日本版で、2018年に日本での活動を始めました。

キャンペーン名は「濃ぃヒー」で、2024年に続き2回目のキャンペーン。
キャンペーンを通じてシングルマザーの実情を知ってもらおうという趣旨に賛同したコーヒー店が、「濃い」をコンセプトとしたオリジナルコーヒーを販売し、その売り上げの3%を寄付する仕組みです。店舗では、シングルマザーの実情を紹介した、特設ページ(https://grameen.jp/coffee/)のQRコードを掲載したリーフレットも配る予定です。

広報の担当者は、「寄付キャンペーンであるものの、大きな目的はシングルマザーの実態を知ってもらうこと」だと説明します。

「日本では子ども支援活動は広がっていますが、そもそも、大元の親の貧困をなんとかしないといけないという問題意識を広めたい。シングルマザーの実態と、どうすれば経済的自立を果たしていけるのかというプロセスを知ってほしい」
濃ぃヒーのイメージ=グラミン日本提供
濃ぃヒーのイメージ=グラミン日本提供

経済的余裕なく、子どもに我慢

特設ページでは、グラミン日本が支援しているシングルマザーの座談会の様子を動画でみることができます。

動画では、座談会参加者が、一馬力で子どもを育てつつ、働くことの困難さを語ります。就職活動で面接に行ったときに「お子さんが風邪を引いたときはどうするんですか」という質問に答えられなかった経験や、経済的な余裕がなく、子どもに我慢をさせているという思いを悔しそうに語ります。

動画内では母子家庭の約半数が相対的貧困に陥っているともいわれる状況を紹介し、シングルマザーは起業や就労が難しいことを説明。キャンペーンに参加するコーヒー店の店主は「仕事も育児も頑張る女性に思いを馳せるようなきっかけをつくれたらいい」と話します。

グラミン日本のYouTubeチャンネルで紹介されている動画 出典: 「濃ぃヒー|シングルマザーの応援になる、濃いコーヒー_グラミン日本」

コロナ後に「シングルマザー苦境」鮮明に

現在、グラミン日本の支援対象の中心はシングルマザーですが、2018年にスタートした当初は、経済的に困窮している人全般を支援対象としていました。ただ、コロナ禍を経て、シングルマザーの苦境が鮮明になったことなどから、シングルマザー支援の方向性を明確にしたといいます。
理事長の百野公裕さんによると、世界40カ国以上でソーシャルビジネス を展開するグラミン銀行は、各国共通して、「金融へのアプローチが難しかった」(百野さん)女性を支援。貸し付け先の99%が女性だといいます。

ただ、「女性のスモールビジネスは、ヘッドスパや、ネイルサロンなど、人と会うものが多かった」ことから、対面での事業が難しくなったコロナ禍を経て、小額貸し付け事業以外にも、デジタルスキルを使った就労支援にも力を入れています。

「デジタルスキルを身につけることで、地方における女性も都市部の仕事を受けることができる。病気を抱えていたり、介護や育児がある人でも、在宅で単価の高い仕事を受注できることにつながります」(百野さん)。

就労支援プログラムとして、2022年から「でじたる女子」「副業デビュープロジェクト」「副業ママ養成講座」を実施しています。

地域格差拡大に危機感

これまでに1000人以上が受講している、起業に向けたワークショップ「ミライWorkshop」や金融トレーニングを通じて、多くのシングルマザーの声を聞いてきた理事・山口聖子さんは、日本のシングルマザーの置かれた状況について「地域格差が拡大している」と危機感を募らせます。

「地方は圧倒的に仕事が少なく、職につけても低賃金で、掛け持ちをしている人も少なくありません。キャリアを積める環境の少なさが女性の生きづらさにつながり、経済格差も生まれています」と、地方に仕事の選択肢が少ないことを問題視。

これまで関わってきた地方の女性は、都市部に比べて非正規雇用の人も多かったといいます。さらに、地方では「ジェンダーロール(性別役割)が固定化されやすい」ことも課題として挙げます。

ワークショップや金融トレーニングを受けた女性たちについて、山口さんは「(参加し始めたばかりの頃は)家事や介護、育児と、いまの生活だけで精いっぱいなので、子どもが独立したあとの自分の将来について考えられていない人が多い」。ただ、ワークを通じて、自分のこれまでや、今後の人生を整理していく中で「このままでは自分の将来にとってリスクがあると気付きます」。

オンラインで参加するワークショップは寄付やプロボノで運営されており、参加は無料。
参加者は、「人生曲線ワーク」などを通じて「新しい一歩を踏み出す原動力を見つけ出し、アイデアを形にしていきます」(山口さん)。その後、開業プランを設計し、起業や副業に向けた活動へと移っていきます。

マイクロファイナンス(少額融資)を希望する場合、グラミン銀行と同じ枠組を使って、5人組のグループをつくり、お互いの事業を応援し合いながら返済していきます。

     ◇
「濃ぃヒー」の特設ページでは、各種プログラムを受講するなどグラミン日本の支援を受けて経済的自立を果たし、生活をしている人たちの体験談も掲載されています。
キャンペーンには、現在、首都圏や岐阜県、愛知県、鹿児島県など約30店舗が参加を表明。昨年の10店舗を大きく上回ってスタートする予定。開催期間は3月8日から5月7日までです。

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