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夜泣きでヘトヘト…睡眠コンサルへ相談 告げられた〝衝撃〟の提案

多くの親が悩む、赤ちゃんの睡眠。ねんねトレーニング(ネントレ)もうまくいかず、悩んだ記者が頼ったのは……
多くの親が悩む、赤ちゃんの睡眠。ねんねトレーニング(ネントレ)もうまくいかず、悩んだ記者が頼ったのは…… 出典: Getty Images ※画像はイメージです

目次

子育てで最初にぶつかる壁のひとつ――。それは、夜泣きや寝かしつけなど、子どもの睡眠に関することではないでしょうか。記者の私(31)もその一人です。万策尽きたと諦めたころに知った、「妊婦と乳幼児の睡眠コンサルタント」。半信半疑で依頼したコンサルに、我が家は救われることになります。想像していなかった、まさかのアドバイスとは。(朝日新聞コンテンツ編成本部・大木理恵子)

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医師のアドバイス「疲れ果てて寝ますよ」

1歳の双子の娘は2人とも、生まれてから一度も抱っこ以外で寝たことがない、筋金入りの「抱っこ好き」。

立って抱っこして揺らすこと数十分。ようやく寝た……と思いスローモーションで布団に寝かせると、目がぱっちり開いている――。

「え、寝てたじゃん!」と心の中でつぶやいた瞬間に泣き出し、寝ていた子まで起きてきて、同時に泣く。振り出しに戻る。

これを延々と繰り返すため、ずっと悩んできました。

最初に調べたのは、赤ちゃんが自分で眠る力を身につける「ねんねトレーニング(以下、ネントレ)」。本やインターネットの情報を頼りに、寝室に子どもだけにしたり、泣いても抱っこしないと決めて寝かしつけたりしましたが、何度試しても、全くうまくいきません。

出典: Getty Images ※画像はイメージです

子育て仲間や経験者からは、「寝ない子っている」「そのうち寝るようになる」といった声。きっと我が子もそうなのだろう、今は辛抱の時だと思い、諦めていました。

職場復帰1カ月前に受けた8カ月健診では、医師から「日中の活動量が足りないのかもしれない。保育園に行き始めたら、疲れ果てて寝ますよ」とのアドバイス。なのに、今年4月に登園が始まっても状況は全く変わりません。

それどころか、1歳を迎える7月ごろから頻繁に夜泣きするように。さらに、2人とも夜になると夫(32)を避け始め、寝かしつけや夜泣きに対応できるのが私だけになりました。

夜中、1人をおんぶ、もう1人を抱っこして何時間も立っていることは当たり前に。ひどい時は30~40分おきに夜泣きすることも。ほとんど眠れないまま出勤する生活が1カ月以上続き、気づけば心身は限界に達しました。

我が家の状況を知った知人から教えてもらったのが、睡眠コンサルタント。初めて聞く存在に、どこか怪しむ気持ちが拭えず悩みましたが、家族会議の結果、勇気を出して一歩を踏み出すことにしました。

こうして出会ったのが、乳幼児の睡眠コンサルタントのロブソン夕陽(ゆうひ)さん(31)です。

依頼したのは、自宅に訪問して寝室の環境を見てもらうプラン。事前面談やアフターフォローなどを含め約1万1千円でした。

調べてみると、30分から1時間のオンライン面談や、1カ月毎日アドバイスをもらえるプランなど、コンサルタントによってサポート内容は様々。料金はコンサルそれぞれが設定しています。

プランによりますが、1回の相談につき数千円~数万円が相場のようです。

衝撃の事実「疲れすぎて夜泣きしている可能性」

早速ロブソンさんとのやりとりが始まりました。まず送られてきたのは、子どもの性格や1日のスケジュールなどを細かく尋ねる、約30項目に及ぶアンケート。それに基づいて初回のオンライン面談を設定してもらい、さらに細かい聞き取りがありました。

そして、衝撃のことが伝えられました。

「原因はいくつかありますが、2人とも、疲れすぎて夜泣きしている可能性が高いです。午後7時台には寝させてみましょう」

元気がありあまっていて寝ない。そう思いこんでいた私たち。

早朝起き防止も兼ね、毎日、娘たちが目をこすり始める午後9時ごろまで、追いかけっこにかくれんぼ、いないいないばあなど大好きな遊びで盛り上げて体力を消耗させていたつもりが、我が子の場合は逆効果だったとは……。

他にも、保育園から帰ったら部屋の明かりを半分消す、興奮する遊びは控えるなどの「寝る雰囲気作り」、寝る前に5分間、それぞれとハグをしながら話す時間を作ることを勧められました。

また、朝5時には起きてしまうことへの対策として、寝室に光が届かないよう台所の小窓にも遮光カーテンをつけ、家電の電源ランプもマスキングテープでふさぎました。

寝室のエアコンの電源ランプには、黒いマスキングテープを貼った
寝室のエアコンの電源ランプには、黒いマスキングテープを貼った

最初の数日間は効果が感じられず、心が折れそうに。それでもロブソンさんに励ましてもらいながら辛抱強く続けること6日目。2人とも、抱っこでの寝かしつけをあっさり卒業しました。

そして、この日を境に夜泣きの間隔が延び、夜通し眠る日も出てきたのです。

こうして、私の睡眠不足と疲労は少しずつ解消されていきました。

寝室に光が入らないよう、台所の小窓には遮光カーテンをつけた
寝室に光が入らないよう、台所の小窓には遮光カーテンをつけた

夜泣きに悩んでいた頃は、一日中イライラ。でも子どもの前ではそれを出さないと決めていて、作り笑顔ばかりしていました。

寝不足が解消されると、不思議と心にも余裕が生まれます。夜泣き以外にも大変なことはありますが、今では娘一人ひとりと向き合うことができ、笑顔も増えました。

顔を合わせれば育児のことをめぐり口論になっていた夫とも、穏やかに過ごせています。家族全員、救われたのです。

ロブソンさん、疑ってごめんなさい。

寝かしつけには自信があったのに…

ロブソンさんの資格「妊婦と乳幼児の睡眠コンサルタント」は、育児に関する資格を付与する米企業「IPHI」の国際認定資格の一つです。IPHIは世界63カ国に拠点をもちます。

ロブソンさんに、コンサルを目指したきっかけや、睡眠に悩む家庭に、どういった視点からアドバイスをしているのか聞きました。

記者の娘の睡眠についてアドバイスをくれた、妊婦と乳幼児の睡眠コンサルタント・ロブソン夕陽さん=本人提供
記者の娘の睡眠についてアドバイスをくれた、妊婦と乳幼児の睡眠コンサルタント・ロブソン夕陽さん=本人提供
――コンサルタントになる前はどういった活動をされていましたか。

大学で看護師の資格をとり、卒業後は新生児集中治療室(NICU)や保育園などに勤めてきました。現在は育休中ですが、現職は小児の訪問看護師です。

――仕事で長年、赤ちゃんと関わってきたのですね。

NICUでも保育園でも、日常的に寝かしつけをしていました。ですから寝かしつけには自信があったし、2021年に長男が生まれても、余裕だと思っていました。

――実際どうでしたか。

それが長男、本当に寝なくて。生後1カ月の頃、自分が一日中抱っこをしていることに気がつきました。寝かせては起きてくる、の繰り返しで、寝かしつけに1、2時間かかり、疲弊していきました。

ネントレの本も読みあさりましたが、うまくいきません。生後7カ月のとき、SNSで見つけた睡眠コンサルタントに依頼して、サポートしてもらうことにしました。

――それが資格取得のきっかけだったのでしょうか。

アドバイスをもらってから、それまで長くても3時間しか寝なかった長男が、初めて10時間寝ました。とても感動して、この感動をもっとたくさんの家庭に届けたいという思いから勉強を始め、2023年に取得しました。

――どういったプロセスで睡眠の問題点を見抜いていますか。

私たちは「睡眠の土台」と呼んでいるのですが、一つ目に音や光、温度湿度などの環境、二つ目に生活リズムや昼寝の時間など一日のスケジュールやルーティン、三つ目にお父さんお母さん、お子さんの幸福度。これらの視点から改善点を見いだします。

――相談の多い月齢は。

資格を取る際は、5歳までを対象として勉強しました。相談が多いのは、生後2カ月から1歳半ごろです。睡眠のリズムが安定しづらく授乳期でもあるので、親も対応に悩みやすいのかもしれません。

――相談することに抵抗を感じる方もいるでしょうか。

日本ではまだハードルが高いかもしれません。私自身が依頼するときも、「お金を払ってまで睡眠の相談をするなんて」と、悩みました。

実際、限界が近づいてから依頼する人が多いです。でも、睡眠不足は人格を変えてしまう。もっと早く相談をしてほしいと思います。離乳食のことに悩んだら自治体の栄養士さんに相談するのと一緒で、睡眠のことで悩んだら睡眠コンサルタントにつながる、そんな公的サービスになることも期待しています。

子どもの睡眠で困っていることは? 母子手帳に質問追加

2023年4月から、母子手帳の記録欄に、新たに「お子さんの睡眠で困っていることはありますか」という質問項目が加わりました。

母子手帳は、母子健康をとりまく社会の状況や育児の知見などを踏まえ、約10年おきに見直しが検討されます。

こども家庭庁などによると、2022年の検討会で、委員が「お母さんたちは、子どもの睡眠のことでとても悩んで眠れないということがある」などと発言、項目に追加することを提案したことがきっかけということです。

「妊婦と乳幼児の睡眠コンサルタント」を付与する米企業「IPHI」の日本代表の愛波文(あいば・あや)さん(米在住)によると、コンサルの養成に用いる資料は、小児科医やアメリカの学会などが乳幼児の睡眠や夜泣きを研究した論文、5年間にわたる追跡調査など、科学的根拠に基づいて書かれているといいます。

「一人ひとりの家庭環境や保育者の状況などに合ったアドバイスを」

そんな考え方のもと、乳幼児の睡眠だけではなく、乳幼児の成長や産後うつに関すること、コーチングなどを約1年間かけて学び、5件の実習を経て資格を取ることができます。

アメリカからオンラインで取材に応じる愛波文さん
アメリカからオンラインで取材に応じる愛波文さん

愛波さんは、自身が長男の夜泣きに悩んでいたことをきっかけに、2014年、在米中に日本人で初めてIPHIの資格を取得。日本に住む友人が、子どもの睡眠が原因で仕事の継続を悩んでいたことから、睡眠コンサルタントを日本に持ち込みました。

友人らを介して口コミが広がり、徐々に利用する人が増加。有資格者も増え、IPHIの資格をもつ日本人は、現在200人を超えたそうです。

「日本には、我慢を美徳とする風潮がまだ残っているかもしれません。夜泣きも、大変だけれど親は耐えるものだと思われているのではないでしょうか。でも、我慢しなくていいんだよとお伝えしたいです」

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