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#34 小さく生まれた赤ちゃんたち

Xの「リポスト」で広がる支援 赤ちゃん救う「母乳バンク」への寄付

11月17日は「世界早産児デー」です

10人に1人が2500g未満で生まれています(画像はイメージです)
10人に1人が2500g未満で生まれています(画像はイメージです) 出典: Getty Images

目次

小さく生まれた赤ちゃんたち
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2500g未満で小さく生まれた「低出生体重児」をサポートするキャンペーンが、X(旧Twitter)で展開されています。紙おむつブランド パンパースの公式アカウントによる企画で、1リポストにつき5円を「日本母乳バンク協会」へ寄付するという内容です。すでに12万件以上リポストされていて、支援の輪が広がっています。11月17日は世界早産児デーです。

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寄付につながるリポスト

10月10日、パンパースの公式アカウントがキャンペーンについてXに投稿しました。

ユーザーからは「ご協力させていただきます」「素敵な取り組み」「うちも低出生体重児だったのでお世話になりました!」といったコメントが寄せられ、リポストは12万件を超え、1100万件以上表示されています。

パンパースを展開するP&Gジャパン合同会社(神戸市中央区)によると、小さく生まれた赤ちゃんと家族を支援するキャンペーンは、2020年に始まりました。

NICU(新生児集中治療室)の医師や看護師から、「低出生体重児のママたちの中には、出産直後に周りから『おめでとう』を言ってもらえなかったという方も少なくない」と聞いたことがきっかけだったといいます。

日本では、およそ10人に1人が2500g未満で生まれる低出生体重児です。厚生労働省の人口動態統計によると、2023年に生まれた子ども約73万人のうち、低出生体重児は約7万人でした。

 

「おめでとう」と言ってもらえなかった

P&Gが2020年に低出生体重児の母親206人を対象に調査をしたところ、46.6%が「赤ちゃんがNICU入院中に出産報告をした際『おめでとう』と言われないことがあった」と回答しました。

特に、1500g未満で生まれた赤ちゃんの場合は、「『おめでとう』と言われなかった」との回答が73.1%(n=26)にのぼりました。

出典: P&Gジャパン合同会社提供

多くの赤ちゃんは妊娠37~41週(正期産)で生まれ、平均体重は約3000g、平均身長は49cmほどです。

一方、妊娠22~36週の早産では、より早く小さく生まれるほど命の危険や障害、病気のリスクが高く、医療的ケアが必要になることもあります。

23週552gで生まれた赤ちゃん
23週552gで生まれた赤ちゃん

十分な体重で生まれた丈夫な赤ちゃんの場合、粉ミルクを与えても問題ありません。

しかし、1500g未満で小さく生まれた赤ちゃんの場合、粉ミルクを消化吸収できず病気になって命を落としてしまうこともあるため、母乳が推奨されています。

今回、キャンペーンの寄付先である「母乳バンク」は、早産などで1500g未満の小さな体で生まれ、母親の母乳を得られない赤ちゃんのために、ほかの母親(ドナー)から寄付された母乳(ドナーミルク)を提供する施設です。

P&Gは母乳バンクの取り組みに賛同し、SNSを通じて「多くの方々に低出生体重児の存在を知っていただくことで、支援の輪を広げていきたい」と考えたといいます。

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研究用の母乳を使用し、デモンストレーションする様子=東京都中央区の日本橋母乳バンク
研究用の母乳を使用し、デモンストレーションする様子=東京都中央区の日本橋母乳バンク

「温かいまなざしにつながる」

今年で5回目となるキャンペーンは、毎年11月17日の「世界早産児デー」の前後に行われてきました。

2020年のRP(当時はリツイート)数は1万件に届きませんでしたが、2021年は3万件を超え、その後も1万件以上拡散されてきました。2023年は7.4万件と過去最高のRP数で、今年はさらに上回っています。

出典:Xのパンパース公式アカウントより

日本母乳バンク協会の代表理事で小児科医の水野克己さんは、「世界早産児デーに合わせた貴重な取り組みです。早く小さく生まれた赤ちゃんへの温かいまなざしにつながると思います」と話します。

「母乳バンクを利用する赤ちゃんは、早産や極低出生体重児が大多数です。小さく生まれた赤ちゃんが元気に育ち、ご家族が負担を感じることなくお子さんの成長を祝っていける社会になってほしいと思っています」

日本母乳バンク協会代表理事で小児科医の水野克己さん
日本母乳バンク協会代表理事で小児科医の水野克己さん

P&Gの担当者は、「今後も同様のキャンペーンを通じて、NICUに入院している赤ちゃんとそのご家族のみなさんが快適な時間を過ごすための支援の輪を広げる活動を続けていきたい」と考えているそうです。

「引き続き、生まれてくる全ての赤ちゃんの明るく健やかな成長を応援するとともに、多様な子育てや家族のありかたを認め合える社会の実現を目指し、さまざまな取り組みを進めていきます」

キャンペーンは11月17日まで。日本母乳バンク協会に届けられた寄附金は、ドナーミルクの容器の購入などに使われるそうです。

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【関連リンク】10人に1人が2500グラム未満 小さく生まれた赤ちゃんのリスク(朝日新聞デジタル)

低出生体重児に関する情報・サポートがあります

◆「低出生体重児 保健指導マニュアル」(厚生労働省・小さく産まれた赤ちゃんへの保健指導のあり方に関する調査 研究会) https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000592914.pdf

◆早産児育児ポータルサイト「Small Baby」 https://www.small-baby.jp/

◆「はじめてのNICU」 https://www.nicu.jp/

◆日本NICU家族会機構(JOIN) https://www.join.or.jp/

◆母子手帳サブブック「リトルベビーハンドブック」に関して NPO法人HANDS
https://www.hands.or.jp/activity/littlebabyhandbook/
 
 

日本では、およそ10人に1人が2500g未満で生まれる小さな赤ちゃんです。医療の発展で、助かる命が増えてきました。一方で様々な課題もあります。小さく生まれた赤ちゃんのご家族やご本人、支える人々の思いを取材していきます。

みなさんの体験談や質問も募集しています。以下のアンケートフォームからご応募ください。
【アンケートフォームはこちら】https://forms.gle/dxzAw51fKnmWaCF5A
 

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