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異性の入浴介助に苦痛、雨の日も前向きに…車いすの大学生が商品開発

「ごめんね」が「ありがとう」に

牧野友季さんが、インターン先の「フットマーク」で開発した、車いす用レインウェア
牧野友季さんが、インターン先の「フットマーク」で開発した、車いす用レインウェア

目次

異性による入浴介助が苦痛だった、雨の日の車いす移動が憂鬱――。車いすを使う当事者である大学生が、自身の経験を元に開発した商品があります。背景を聞きました。

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日常の不便を商品開発に


「障害者の日常を入り口に、誰もが小さなことでも自己表現をできる世界を目指したい」

電動車いすユーザーの、情報経営イノベーション専門職大学3年の牧野友季さん(29)は、そう語ります。

10月5日に東京ビッグサイトで開催された、世界の福祉機器が集まる国際展示会(H.C.R)の一角で、牧野さんがインターン先の企業と共同開発した商品を発表しました。

牧野さんは現在、介護用品や学用品などを手がける「フットマーク」(東京都墨田区)でインターンをし、新商品の開発に携わっています。

電動車いすで生活し、食事や入浴に介助が必要な牧野さんが、日常生活で不便に感じたことを、商品開発でかたちにしました。

レインウェアについて説明をする牧野さん(中央)
レインウェアについて説明をする牧野さん(中央)

膝元に大きな透明の窓、意図は

牧野さんは雨の日が苦手です。これまで自身が使用してきた車いす用のレインウェアは、「お世辞にもかわいいとは言えない」し、介助者にも自分にも着脱の手間がかかり、裾が風にあおられて視界が遮られることもあり、危険を感じることもあるのだそう。

そこで開発した車いす用のレインウェアには、不便な点を解消するポイントを盛り込みました。

裾が風であおられないよう、車いすに固定するためのスナップボタンをつけたり、フード部分は顔にフィットするよう、調整するためのアジャスターを付けたりしました。配色も柔らかな寒色系の色を使い、おしゃれさも意識しました。

また、レインウェアを着たままでも、膝元が見えるように付けられた、大きな透明の窓があります。これは、車いすに座ったときの太もものあたりにデザインしました。

「ウェアから手を出さず、ウェアの中でも手元に置いたスマートフォンを操作し、外から見ることができるようにしたい」という牧野さんの思いからつけた機能です。

「スマホのマップに頼って移動することもあるので、手元が見えることは重要でした」と話します。

他にも、背中部分には大きなファスナーを付け、着脱を手伝う介助者がびしょびしょにぬれることがないように、脱ぎ着を楽にさせるような工夫も施しました。

牧野さんは「雨の日の外出がわくわくするものになってくれたらうれしい」と話します。

透明な窓があることで、手元での操作が、レインウェアの外からでも見ることができる
透明な窓があることで、手元での操作が、レインウェアの外からでも見ることができる

入浴時の不快さ、「仕方ない」にしたくない

もう一つの商品は、入浴時の肌の露出を抑えるための、介助される人のための入浴着です。エプロンのような形で、座ったときは膝が隠れるあたりまでの長さがありますが、介助者が身体を洗いやすいよう、脇の部分は大きく開いています。
この商品の開発にも、牧野さんの経験が生かされています。

介護市場には、入浴介助を「する人」のための防水エプロンはありますが、入浴介助を受ける側のものはあまり見かけません。

牧野さんは大学に進学する前、障害者施設で生活をしていた時期がありました。1年ほど、施設の介助者の人員配置の関係でやむを得ず、週に数回、同世代の異性が担当者となり入浴介助を受けた期間があったといいます。

施設側から謝罪を受けましたが、施設の事情を考え、当時の牧野さんは「つらかったけれど、『嫌だ』と言えなかった」といいます。

自宅での介助を受けるときにも、家族や同性のヘルパーさんから裸を見られることは、気分のいいものではありません。

牧野さんは、「この商品は、作りとして特殊なものではありませんが、みんなが我慢していることを『仕方がない』で終わらせたくなかった」と話します。

「入浴は本来はリラックスできる時間のはず」と牧野さん。この商品を試してみたら、自分自身と介助者、いずれも精神的な負担が減ったと感じたそうです。

「これまで『ごめんね』とばかり言っていたのですが、『ありがとう』という気持ちが自然にわくようになり、私にとってはそれが一番うれしいことでした」

フットマークでは今後、いずれの商品も発売する予定だといいます。

介助を受ける人のための入浴着。エプロンのような形で、脇の部分が大きく開いている
介助を受ける人のための入浴着。エプロンのような形で、脇の部分が大きく開いている

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