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「1週間」で「1カ月分」売れた! 書店の〝嬉しい悲鳴〟の理由は…
「歩いていける距離」の有名メーカーとコラボ
1週間で1カ月分の文庫本が売れた――。全国で書店が減っていく中、そんな「嬉しい悲鳴」を上げた書店があります。デザインの力で、書店の盛り上げに一役買っている書店に話を聞きました。
《なんと!
夏休みの1週間で、前年の1ヶ月の文庫本が売れました
近隣のみなさんはじめ、帰省ついでに、旅行の目的にまで..
生活圏外からもたくさんご来店いただき、ほんとうにありがとうございました
夏の読書、楽しんでいただけていると嬉しいです》
なんと!
— 正和堂書店 (@SeiwadoBooks) August 28, 2024
夏休みの1週間で、前年の1ヶ月の文庫本が売れました😵
近隣のみなさんはじめ、帰省ついでに、旅行の目的にまで..
生活圏外からもたくさんご来店いただき、ほんとうにありがとうございました😭
夏の読書、楽しんでいただけてると嬉しいです🙇 pic.twitter.com/3iTikcF5Bn
つぶやいたのは、大阪市鶴見区にある「正和堂書店」です。3代続く書店を、現在は兄弟で切り盛りしています。
この書店では、2017年からスイーツや文具などをモチーフにしたオリジナルのブックカバーを作成し、来店し本を購入したお客さんには1冊につき1枚のブックカバーをプレゼントしています。
デザインを担当する、兄の小西康裕さんがこれまで世に出したデザインは70以上。「四角の中にデザインを収める苦労はあります」としつつ、ブックカバーのファン層である、20代から40代の女性が好みそうなものをイメージしながら作っています。
実は7年以上、ブックカバーのプレゼントは続けていて、何度もSNSでの「バズ」を経験しています。
では、なぜこの夏、文庫本の売り上げが伸びたのでしょうか?
聞くと、今年は地元企業でもある牛乳石鹼共進社(本社・大阪市城東区)とのコラボがあったといいます。
牛乳石鹼の工場は、正和堂書店と同じく鶴見区にあり、城東区にある本社にも「歩いていける距離」だといいます。
コラボのきっかけは昨年、小西さんが地元で配布されていた牛乳石鹼の写真とともに「いつかコラボできたらいいな」とXでつぶやいたこと。フォロワーからも「ほしい」という声が聞かれ、それをみた牛乳石鹼から連絡を受け実現したのだそう。
1回目のコラボは昨年実施。1千枚用意したところ、半日ですべて出払ってしまうほどの人気でした。
今回のコラボでは、1回目のデザインにもあしらった、「『積ん読』のイラストの本を少し増やしてみました」と遊び心ものぞかせます。さらに、ブックカバーとセットのしおりからは、牛乳石鹼のにおいがするような工夫もしました。
お盆に配布を開始し、今回は2千枚の用意が1週間でなくなりました。
小西さんは「この夏の伸びは、牛乳石鹼とのコラボはじめ、インフルエンサーの方の発信など複合的なものだと思います」と喜びます。
そもそも、正和堂書店でブックカバーを配り始めたのは「お客さんがお店に来るきっかけにしたい」という思いからでした。
「かつては定期的に発行される雑誌があることが、町の本屋さんへの来店のきっかけでした。しかし、雑誌が売れにくくなった昨今、それがなくなってきました」(小西さん)
なんとか来店のきっかけをつくれないかと、同書店では2017年からSNSで本の紹介を始めましたが、それが集客に繫がっている実感は持てずにいました。
本の紹介をするだけではだめだと気付いた小西さんは、とオリジナルブックカバーの製作を思いつきます。
はじめは「SNSを見た」と言ってくれるお客さんにだけプレゼントしていたブックカバーでしたが、コロナ禍で来店が難しくなった時期、「オンラインで売ってほしい」という声が届き始めたのだといいます。
元々、ブックカバーはサービスで付けるという書店独自の文化がある中で、「販売していいんだろうか」と悩む気持ちがあったという小西さん。ですが、「購入したい」という声に押され、試しに販売をしてみると、売れ行きは上々だったといいます。
いまとなっては、作ったブックカバーは店頭でのプレゼントが1割、店頭やオンラインでの購入が9割となっているそうです。
50年以上続く家業を見てきた小西さんは、「町自体は発展していますが、それにともなって、お客さんが増えているかというと、そうではない。逆に減っているくらいです」と書店の苦境を語ります。
一方で、ブックカバーがきっかけで店頭に足を運ぶ人の存在も、確かに感じているのだといいます。
「いま、お客さんの4分の1から3分の1は生活圏外から来てくれています。旅行鞄を持って来店してくれる人は毎日のように見かけますし、SNSを見たと声をかけてくれる人もいます」
ブックカバーの集客効果を感じつつ、読者にとっても「読書を楽しむツールになるとうれしい」と小西さん。
「本を読むのが楽しくなった」「ブックカバーがあるから、久々に本を読もうと思った」という声をSNSで見かけることもあるといい、「プロダクトから読書につなげるアプローチがあってもいいなと思っています」。
いまや、お店で本を購入する人の8割から9割がオリジナルのブックカバーのプレゼントを希望するようになっているといい、月に6千枚ほどをプレゼントしているそうです。
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