連載
#3 水の事故を防ぐ
海の事故、最多は「遊泳中」ではなかった 3割を占めるレジャーは?
誰がどういった場所で水の事故に遭っているのか調べました
きょう7月の第3月曜日は「海の日」。海水浴やシュノーケリングを楽しむ人が増えてきた季節に、気をつけたいのが水の事故です。海上保安庁がまとめた過去10年間の全国の海での事故を分析すると、実は最も当事者数が多いレジャーが明らかになりました。水の事故の被害に遭わないための注意点も紹介します。
海上保安庁がまとめた、2013~22年に全国でおきたマリンレジャー中の事故8329件を、朝日新聞が活動内容や年代ごとに分析しました。
すると、活動内容別では釣り中に事故にあった人が最も多く、全体の3割ほどにあたる2822人が事故に遭っていました。
次いで多かったのは遊泳中で2162人、サーフィン中が690人でした。
死亡したり、行方不明になったりした人も釣りが最多で979人。次いで、遊泳中が626人、シュノーケリングが300人、磯遊びが254人でした。
釣り中の死亡・行方不明者の年代を見てみると、60歳代が最多で274人。次いで70歳代が267人、50歳代が153人と中高年を中心に事故に遭っていることも分かりました。
では、どういった場所で事故が多く起きているのでしょうか。
マリンレジャーの事故が起きた場所のデータを元に、死亡したり行方不明になったりした人が5人以上いた場所を朝日新聞が調べたところ、見つかった海岸は41カ所。その中で、釣り中の事故の死亡・行方不明者がいたのは24カ所でした。
最多は伊豆半島東部の城ケ崎海岸(静岡県伊東市)と兵庫県の日本海側にある香住海岸周辺(兵庫県香美町)で、転落などで8人が犠牲になっていました。
関東近郊の海を管轄する第三管区海上保安本部によると、城ケ崎海岸は獣道を通って断崖絶壁の岩場から釣りを楽しんでいる人が多い場所だそうです。
そのため人目が少なく、担当者は「釣りをするのは早朝や夜などの暗い時間帯が多く、足を滑らせるリスクが大きい。単独で事故に遭うと覚知まで時間もかかるため、『入ってほしくない場所』です」といいます。
近くで観光客を乗車させることが多いというタクシードライバーの男性も「捜索が始まると近くのハイキングコースが閉鎖されることも多い。残念がっている観光客を度々目にします」と話していました。
その他には、北海道岩内町の岩内港で6人、島根県浜田市の海岸で5人が犠牲になっていました。
釣り中に死亡したり、行方不明になったりした979人のうち、769人がライフジャケットなどの救命胴衣を着ていませんでした。
海に転落した場合、まずは海に浮いていることが大切。そのためにはライフジャケットの着用が有効です。海上保安庁によると、ライフジャケットを着ることで釣り中の事故の生存率は55%→79%と大幅に向上するとしています。
ただ、釣りは暖かい時期だけでなく、年中通して楽しめるのも魅力の一つ。ライフジャケットを着ていたとしても、秋や冬の冷たい海に落ちてしまうと溺れて死に至るリスクが高まってしまいます。
そのため、海保の担当者は「釣りを楽しむ場合は極力複数人で行くか、単独の場合は行き先や時間などを家族などに知らせて行くようにしてほしい」と話しています。
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