「特別じゃない日」をテーマにした単行本が発売された漫画家・稲空穂さん。SNSで発表して注目を集めた漫画「隣にいる人」に込めた思いを聞きました。
大ゲンカしたまま彼氏が実家の手伝いに行ってしまったカップル。
彼女はムカムカしながら自宅のテレビで映画『ミッドサマー』を鑑賞し、ヒロインが恋人に裏切られるシーンを見て「わかる~。クソな彼氏にそうなる気持ちわかるわ~」と一人でつぶやきます。
翌朝、アパートの大家さんが家賃を受け取りにやってきました。
彼女は「このあとヒマ?」と大家さんを誘ってホラー映画を一緒に鑑賞。
「ホラーは誰かと観るのが楽しいからさあ」という彼女に、大家さんが嫌そうな顔をしながら「よくこれを私に見せようと思ったわね…あんた達2人してこんなの好きなの」と聞くと、「あいつホラー超苦手! 初めて見せたときとか死ぬほど笑えた」と返事が。
その様子から「彼氏に早く戻るように言ったら?」と言う大家さん。
「私が寂しがってると思ってるー? もう付き合いも長いからそんなんないってえ」
「わかるわよ」
「顔見るとケンカするから、今スゲー平和だしい」
「ふふ、わかる。ウチもケンカ多かったから」
大家さんは亡くなった夫とのケンカを思い出し、強がる彼女にこう伝えます。
「…けど、いないとつまんないのよね」
彼女は一瞬真顔になり、それから恥ずかしそうに「まーそれはある」と認めるのでした。
現在の家に引っ越す前に借りていたアパートにて、居間のテレビ台として置かれていたパイプラック。
自分たちから見て左の空きスペースには、私のお気に入りのホラー映画のDVDが幅の許す限り置かれていました。
遊びに来てくれた友人に「運気下がりそう……」と真顔で言われてしまうほどでした。
そんな自分の趣味を、若干引き気味ではあるものの一緒に鑑賞までしてくれた夫には感謝の気持ちで一杯です。
一緒の空間で過ごす人が、自分の好きなものも丸ごと一緒に受け入れてくれるということは本当に幸せなことだと思っています。