連載
#75 「きょうも回してる?」
商品コラボのガチャガチャ増加中 企業向け商品も参入「本気の監修」
「笑ってもらえる商品作るために不断の努力と技術を」
最近、ガチャガチャ売り場で「企業」の商品などをミニチュアにしたような商品をみかけませんか?実はトレンドにもなっているこの流れ、ガチャガチャ評論家のおまつさんが取材しました。
一般的に、企業はテレビをはじめ、新聞、雑誌、ラジオ、インターネットなどのマスメディアで自社商品をPRしています。
総務省の令和4年版 情報通信白書の放送・コンテンツ分野の動向によると、2021年はインターネット広告が2兆7052億円となり、マスコミ4媒体(テレビ、新聞、雑誌、ラジオ)広告の2兆4538億円を初めて上回ったそうです。インターネット広告が伸びているなか、最近では企業がガチャガチャを広告の一環として、ガチャガチャメーカーとコラボし、商品化(以下、企業ガチャ)するケースが増えています。
例えば、22年2月は企業ガチャの商品数は14アイテムでしたが、23年2月は28アイテムとなり、前年同月比で2倍の伸びを見せています。他の月も昨年と比較しても、2倍以上の企業ガチャがありました。まさに、企業ガチャは23年のガチャガチャのトレンドのひとつであり、企業ガチャブームになっています。
企業にとって、企業ガチャを作るメリットが2つあります。
まずは、ガチャガチャ専門店が増えたことで、商品をよりPRできることです。コロナ禍の3年半で、全国で200店舗以上の専門店が増えました。その結果、今までガチャガチャに関心がなかった人がガチャガチャを回すようになり、子どもから大人まで商品を知ってもらうきっかけに繋がります。
2番目は、ガチャガチャと相性が良いSNSでの商品の拡散です。企業の商品が好きなお客様はもちろんガチャガチャを回します。さらに、購入したお客さんがX(旧ツイッター)をはじめ、インスタグラム、TikTokなどSNSで拡散するようになり、企業自身がPRしなくても、お客さんが宣伝に貢献してくれます。これらの理由から企業ガチャが増えていることがわかります。
企業ガチャの多くはBtoCの商品が圧倒的に多いですが、BtoBの商品もあります。BtoBの製品は、一般の人があまり目に触れる機会が少ないですが、トイズスピリッツは、物流機器・物流システムの総合メーカー「オークラ輸送機(以下、オークラ)」が手がけるベルトコンベヤをガチャガチャにしてしまいました。
今回は、「つなげる。遊べる。ベルトコンベヤマスコット(オークラ仕様)」を紹介します。全商品オークラ使用のBOX付きです。1/64スケールのベルトコンベヤになっています。
オークラは、2027年に創業100年を迎えるコンベヤリーディングカンパニーです。そのオークラのベルトコンベヤをトイズスピリッツがオークラとともに共同開発しました。
きっかけは、トイズスピリッツの代表の西村圭太さんが以前から、TVでベルトコンベヤが物を搬送するCMを見て、「なんて可愛い! これをガチャガチャにできないか」と考えていたことにあります。そして、オークラも自社のベルトコンベヤをミニチュアにできないかを思っていたところ、トイズスピリッツの商品の高さに魅かれ、西村さんに声をかけ商品化につながりました。長年ベルトコンベヤを作り続けてきたオークラも本気で監修したそうです。
一見しただけでも、トイズスピリッツが作るベルトコンベヤのミニチュアはクオリティが高く、満足できる商品に仕上がっていると思っています。しかし、実物を手に取ると、ただのミニチュアではないことがわかりました。
西村さんは「段ボールが載ってベルトコンベヤが動いたら面白い」と、連結できる作りにしています。製作工程で、ただのベルトコンベヤのミニチュアでは納得できず、ベルトコンベヤを動かすため、本体の高さに合わせて固定バーのサイズ設定とベルトコンベヤ本体の可動を調整しています。専用ベルトで連結することで、最大2セットまで動きます。
ベルトコンベヤの質感にもこだわりました。短いパーツや長いパーツもすべて計算し、きちんと組み立てないと動きません。「すべて緻密に計算して作っているガチャガチャです」(西村さん)。ハンドルを回すと、コンベヤが動くようにしてしまったことに驚きを隠せません。この話はガチャガチャの話ですが、すべて計算し尽くされたデザインで完璧に作られたのが、今回のベルトコンベヤのガチャガチャです。
オークラは出来上がった商品を見て「こんなミニチュアで本当に動くなんて考えられない」との驚きがあったそうで、オークラ は試作品を見て一発OKだったとのことです。
今回のガチャガチャについて、西村さんは「ベルトコンベヤの質感がたまらなくないですか! まさにベルトコンベヤは男のロマンを感じさせます」と熱を込めます。
「お客様が手に取った時の感動や笑いを伝えたい。人がくだらないと思う時こそ、真剣に作ってすごいとお客様に言わせたいです。だからこそ、依頼していただいた企業様にも喜んでもらえています」 。
遊び方について尋ねると、西村さんは「ベルトコンベアを繋げていくと、無限の山あり谷ありの、あなただけのコンベヤベルト工場が出来上がります。無事に段ボールが運ばれるかを体験してほしいですね」と話してくれますが、あまりのこだわりが詰まったガチャガチャすぎて言葉が見つかりません。そして実際に、夜一人でベルトコンベヤを回しましたが、シュールな感じでたまらなく、思わず一人で笑ってしまいました。
最後に、西村さんは 今後の商品づくりについて、「こだわりが強すぎて、ニッチな商品はなかなか数がでず、原価率が高くなってしまいます。弊社はなかなか儲かる会社ではありませんが、本当に自分が面白いと思える商品、本当に手に取ってくれる人が面白いと笑ってくれる商品。そんな商品を作れる会社であり続けたい。そのためなら、不断の努力と技術を注ぎ込みます。なかなか利益がでませんけどね」と笑って話してくれました。
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つなげる。遊べる。ベルトコンベヤマスコット(オークラ仕様)は、ベルトコンベヤショート(ショート脚)、ベルトコンベヤショート(ロング脚)、ベルトコンベヤロング(ショート脚)、ベルトコンベヤロング(ロング脚)、ベルトコンベヤスロープ(ショート脚&ロング脚)の5種類。1回400円。
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