連載
#174 #小山コータローの4コマ劇場
何が書かれていたの…〝文豪〟がグシャグシャポイッ! 発した一言
ガサガサ
「違う!」となった思い出…割と最近ありましたね。まぁこれ「違う!」というより
「違う…違うんだ…俺なんだ…あそこにいたのは…俺なんだよ…!」という話なんですが。
知らない人に説明しておくと、僕は専業漫画家ではないので平日は普通に会社勤めをしています。
本業は現場仕事が多く、現場に行ってあれやこれやと力仕事をしたり技術的な仕事をしたりします。
ある現場での出来事でした。
割と付き合いの長い元請けのおじさんと丸一日仕事をしたのです。
そこには僕と同僚のA君と元請けのおじさんがいました。
みんなで世間話なんかもしましたよ。冗談を言い合ったりだってしました。なんせ付き合いも長く、上下関係もあってないようなもんです!
そして1日仕事を一緒にして、会社に戻ったあとその元請けの人から僕に電話がかかってきたんですよ。
「あれ?なんだろ?なんか不備でもあったかな?ワハハハハ!」
そんな思いで電話に出たところ、その人がこう言ったのです。
「小山さんどうも!ご無沙汰しております!今日、A君と一緒に仕事したんですけど伝えて欲しいことがあって!」
一瞬脳がバグりながらも、理解しました。僕と認識していなかったんだってね!
あの時話していた僕は、僕ではなかったようです。僕に少しの勇気があれば「あ、今日僕もいましたよ」と言えたのに…そんな簡単な一言がどうしても出ませんでした。初恋を思い出しました。
「よくわからない男とずっとあんなにも和気あいあいと喋っていたのか…?俺じゃない男と…?」
そんな、存在しない男への嫉妬心までつのりました。
「違う!違うんだ!俺だよ!俺なんだよ!」
そんな心の声を振り絞りなら「はい、A君に伝えておきますね。」とウィスパーボイスで答えるのが僕には精一杯でした。
<こやま・こーたろー>
漫画家。「違和感」を作風とし、漫画家のSNS「コミチ」やTwitterで毎日4コマ漫画を発信中。前後関係を無視したセリフや、突拍子もない理不尽な展開が得意。初の書籍「デリシャス・サンド・ウィッチーズ」(扶桑社)発売中。Twitterアカウントは@MG_kotaro。
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