ネットの話題
ネガティブな気持ちを代弁 「ハンコの気持ち」に込めた思いを聞いた
ハンコが「デジタル化を阻害するもの」として扱われたことへのもどかしい思いがきっかけでした
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ハンコが「デジタル化を阻害するもの」として扱われたことへのもどかしい思いがきっかけでした
ちょっと伝えづらい気持ちをさりげなく伝える「ハンコの気持ち」が発売されました。17種類のデザイン案をベースにオリジナルのハンコを作れる商品です。企画の背景には、道具であるハンコが「デジタル化を阻害するもの」として扱われたことへのもどかしい思いがありました。
インターネットのはんこ屋さん「印鑑はんこSHOPハンコズ」を運営する岡田商会(大阪市)が先月末に発売した「ハンコの気持ち」。
ちょっと伝えづらい今の自分の気持ちを、ハンコを押すことでさりげなく相手に伝えるコミュニケーションツールです。
まずは専用サイトでハンコの素材を9種類の中から選び、次にベースとなるデザイン案を選択します。
デザイン案は17種類あり、名字が頭を下げて謝っているように見えたり、チラチラのぞき見していたりと、ネガティブな気持ちを代弁してくれるものがそろっています。
オーダーが入ると、専属デザイナーがタイポグラフィーの要素をとり入れながら、注文者の名前や名字に合わせて制作。
価格はハンコの素材によって変わりますが、一番安いインク内蔵式でポンポン押せるタイプだと税込み2200円です。
「言いたいことがあっても忖度(そんたく)が必要だったり、空気を読まなくてはいけなかったりで、自分の気持ちを正直に相手に伝えづらい場面が少なくありません。ネガティブな気持ちを代弁してくれるハンコがあったら面白いのではないかと思いつき、企画しました」
そう話すのは、常務取締役の岡山耕二郎さん(46)です。
実はこの商品、ハンコ屋としての「言いたいけど言うに言えない気持ち」も込められてるそうです。
きっかけは近年の脱ハンコの流れ。
「ハンコがデジタル化を阻害している」「ハンコがあるからテレワークでも出社しなきゃいけない」と、悪者のように扱われる風潮がありました。
「ハンコはあくまで『道具』であって、これまで人がハンコに求めてきた『使い方』が時代に合わなくなってきたことが原因であるのに、悪者や邪魔者のようにされてしまい、肩身が狭い思いをしました。そんな言うに言えない気持ちをこの企画に込めています」
商品化にあたってまず取り組んだのが、日常で抱きがちな言いづらい気持ちを洗い出し、整理する作業。
ハンコを押すことで感情を表現でき、気持ちが楽になることが大切と考え、あまり毒々しいものは採用しませんでした。
また、押した人も押された人もクスッと笑えるように、ユーモアを感じさせるデザインにこだわったといいます。
どのデザインにも思い入れがあってなかなかオススメを選べないという岡山さん。
現時点で一番注文が多いのは、チラチラのぞき見しているように見えるデザインだそうです。
コミュニケーションツールとして企画しましたが、無心になってひたすらハンコを押すことでたまったストレスを発散する、という使い方も提案しています。
「これまでの使い方が時代に合わなくなったのなら、新しい時代に価値のある使い方ができるようにみんなで考えた方が楽しいですよね。SNSで『こういう遊び心って必要だな』『こんなハンコが使える世の中って余裕があるような気がする』といったコメントがありましたが、それこそが豊かさであり、クリエイティビティなのではないか、という気がしています」
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