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#1 「健康にいい」の落とし穴

ジョギング〝やった感〟の落とし穴 初心者にいいのはウォーキング?

「ウォーキング」にも意外なメリットがある。※画像はイメージ
「ウォーキング」にも意外なメリットがある。※画像はイメージ 出典: Getty Images
「何か運動を始めよう」と思い立ったとき、イメージしやすいのが「ジョギング」。ただ歩く「ウォーキング」よりも走る方が“やった感”はありそうですが、実際のところはどうなのでしょう。初心者は軽いジョギングとウォーキング、どちらからスタートするべきか、消費カロリーと効率の面から考えます。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎)
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「前後の時間」という落とし穴

新年度になり、「何か運動を始めよう」としている人も多いのではないでしょうか。そろそろ健康診断シーズンで、自分の健康状態も気になるところです。

ここで「運動」としてイメージしやすいのがジョギング。ただ歩く「ウォーキング」よりも走る方が“やった感”はありそうです。もちろん、どちらも身につけば、いい習慣なのですが、運動を始めたばかりの人が見逃しがちなポイントもあります。

まず、ジョギングとウォーキングの消費カロリーをみていきましょう。ここではジョギングを7キロ/時くらいの軽いもの(A)、ウォーキングを4キロ/時くらいの「出かけるときに普通に歩く程度」(B)とします。

体重60kgの人が10分間、Aのジョギングをしたとき、消費カロリーは約60kcalです。Bのウォーキングをしたときは約30kcalになります。

※消費エネルギー(kcal)は「1.05×エクササイズ(METs・時)×体重(kg)」計算。METsとは活動強度を表す単位で、Aは6METs、Bは3METsに相当(国立健康・栄養研究所『身体活動のメッツ(METs)表(改訂版)』より)。

つまり、一定の時間の中でのカロリー消費の効率は、ジョギングの方が2倍も有利だと言えます。ここまではイメージどおりというところでしょう。

でも、ここに落とし穴があります。それは「10分のジョギングに必要な準備の時間は10分では済まない」こと。

走りやすいウエアに着替え、ランニングシューズを履き、準備体操をして……といった準備や、走り終わったあとの着替えや整理体操、シャワーのことも考えると、前後の時間も必要になります。仮に前後それぞれ10分ずつだとすると、合計時間は30分です。

もし着の身着のまま、この30分間、Bのペース、つまりごく普通の外出のように歩き回ったとすると、消費カロリーは約90kcal。逆に、ウォーキングの方が1.5倍も有利に。

もちろん、長めに走ることができるようになれば、カロリー消費効率のいいジョギングがどんどん有利になります。

例えばAのペースで20分ジョギングした消費カロリーは約120kcal、30分なら約180kcal。前後の時間を加味したとき、20分のジョギングには合計40分、30分のジョギングには合計50分かかります。ここで、40分Bのペースで歩き続けたときの消費カロリーは120kcalでジョギングと同じ、50分だと150kcalで、このあたりからジョギングがウォーキングを逆転してきます。

ウォーキングと差をつけたいなら、もっと長く走るか、もっと速く走るかしなければいけないことになりますが「最初から長い/速いジョギングをしようとする」のは挫折しやすいもの。

また「何か運動を始めよう」としたとき、ジョギングを思い浮かべてしまうと、そもそもウエアやランニングシューズを揃える面倒くささに直面してしまい、運動自体が始まらないことも十分にあり得ます。

続けられるのであれば、どちらでも気に入った方でOK。ただ、始めたばかりの頃は、こうした全体像が掴みづらいものです。初心者の方ほど、まずは気合を入れすぎず、普段着とスニーカーでいいので、好きなところをブラブラと少し長めに歩き回ってみるのはどうでしょうか。

やがて、長く/速く走るための体の準備もできてくるでしょう。これも十分すぎるほどの「運動」なのです。
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【連載】「健康にいい」の落とし穴
世の中で「健康にいい」と言われていることや、イメージされることは、よく考え直してみたり、正しい知識を持ったりすると、実は“そうでもない”ばかりか、かえって健康から遠のいてしまうことも――。身近なトピックをフカボリします。

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