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#16 #令和の専業主婦

子どもの不登校、働き方変えた母…支援団体の調査で「収入減」3割

子どもが不登校になり、働き方に変化があったと答えた人は76.4%に。

子どもの不登校によって働き方を変える親も。写真はイメージです=Getty Images
子どもの不登校によって働き方を変える親も。写真はイメージです=Getty Images

目次

不登校の子どもは年々増え、2021年度には不登校の小中学生が過去最多の24万4940人にのぼりました。子どもが学校に行きたがらないとき、悩ましいことのひとつが保護者の仕事や生活をどうするか、ということです。支援団体の調査では、退職を選ぶしかなかった現状や、収入が下がってしまった実態も浮かび上がってきます。息子が不登校という母親に、仕事との両立への思いを聞きました。

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子の不登校で仕事は「1割」に

この春、小学校3年生になる息子を育てている関東地方の40代女性は、「息子が学校に行きたがらなくなったのは小学1年の夏休み明けぐらいからでした」と振り返ります。

士業に就いている女性の息子は、現在は不登校。フリースクールに行く日もありますが、家で過ごすことがほとんどで、女性の仕事の状況は「しっかり働けているときと比較すると、いまはその1割程度しかできていない」といいます。

女性が現在の仕事を始めたのは、2021年のこと。それまではホテルで働いていましたが、新型コロナの影響で仕事が減り、退職。それを機に、収入の上がる職業にも目を向けるようになりました。「子どもが成長したときに、金銭的な面で選択の幅を狭めたくないと思ったんです」と、資格を取ることに決めました。

女性が資格を取ろうと考えた理由には、「収入を上げたい」という思いと、もう一つの「予想」がありました。
「息子には繊細なところがあり、小学校に上がったら『なにかあるだろう』とは思っていたんです」

それを見越して、息子が小学校に上がる前に、個人で開業するケースも多い職業を選びました。

女性は「小学校に上がったら『なにかあるだろう』とは思っていたんです」と振り返ります。写真はイメージです=Getty Images
女性は「小学校に上がったら『なにかあるだろう』とは思っていたんです」と振り返ります。写真はイメージです=Getty Images

最初は両立できていたけど…

2021年4月、息子が小学校に入学。1学期は学校にも、放課後の学童にも通っていました。
ところが、夏休み明け、少しずつ学校に行き渋るようになったといいます。

理由を聞いても「分からない」と答える息子。学校に行くよう促しても、ソファから動けない状況になりました。

「いまになって本人が『算数の授業中、計算が終わるまでのタイムを計られるのがいやだった』と言うようになりました」と話します。

2学期の途中からは、一日を家で過ごすように。
当初は、家でテレビを見たりしながら、ゆっくり過ごさせていたため、女性も在宅で「なんとか仕事はできていた」といいます。一方、息子はだんだんとその生活にも飽きてきたようでした。

それと並行して息子は徐々にプログラミングなどの習い事に行くようになりましたが、それにも行き渋り始めました。息子の生活に合わせながら仕事を続けていた女性も、徐々に両立がつらくなってきて、当時の勤め先に退職を伝えました。

しかし、雇用主に引き留められ、現在は少ないながらも案件を持たせてもらっています。

見据える子の成長…「いまがずっと続くと思ってない」

とはいえ、現在も平日の日中は基本的に息子と二人で過ごします。
仕事に取り組むことができるのは、息子がゲームなどに集中している時間。女性自身も集中したいので、違う部屋に仕事道具を置いていますが、実際にはその部屋で長時間取り組むのは難しいといいます。

週末は夫と役割を交代し、土日のどちらかは職場に出勤して環境を変えて働くようにしています。最近は夫にも平日に有休をとってもらい、平日にしかできない仕事をこなす試みも始めました。

「仕事は好きなのでやりたい」と話す女性。案件は少なくても辞めずに続けているのは、「この状態がずっと続くとは思っていない」と希望を持っているからだといいます。

「息子は人と関わるのが嫌いなわけではないので、成長とともに一人で出かけるようにもなると思います。『それができるようになるまで』と思って、いまは息子のやりたいようことにあわせて過ごしています」

親の生活も守るには

子どもが不登校になったとき、子どもの心身を守りながら、親の生活も守るためにはどうしたらいいのでしょうか。

女性は、子どもの居場所について「不登校になる前から、家と学校以外に安心して過ごせる子どもの居場所がほしい」と話します。

不登校になった後の、最も不安定な時期を乗り越えた子どもの居場所が学校と自宅以外にも確保できれば、親も安心して仕事に行きやすくなると考えます。

また、子どもが不登校になってからは、その〝解決〟には「時間が必要ではないか」と女性は指摘します。「親がその時間を共にしたあとにも戻れる職場があればいいのではないでしょうか」と指摘します。

学校と家以外の居場所があることで、親の生活が保たれることにも。写真はイメージです=Getty Images
学校と家以外の居場所があることで、親の生活が保たれることにも。写真はイメージです=Getty Images

76%が「働き方に変化があった」

NPO法人「登校拒否・不登校を考える全国ネットワーク」は昨年10月、不登校家庭へのアンケートを実施。不登校家庭の親の就労や支出の状況などについても聞きました(調査はインターネットで実施し、有効回答は640件)。

その中で、なにかしら働き方に変化があったと答えた人は76.4%に上りました。内訳は、「早退・遅刻が多くなった」(25.6%)、「休みがちになった」(18.3%)、「退職した」(13.3%)、「休職・転職した」(12.7%)「雇用形態が正規から非正規になった」(7.5%)でした。

調査をとりまとめた朝倉景樹さんは「特に退職となると家計に直結し重みが違う」と話します。不登校になってからの収入の増減を聞いた別の質問では「収入が減った」と答えた人は33.6%にのぼりました。


朝倉さんは、不登校の親の働き方が変わる背景について、「共働きの家庭が多い中、子どもが小学校低学年の時は特に、一人で家においておけないという事情がある」と話します。
それを受け、子ども側、親側の環境について二つの提案を挙げます。

子ども側への支援については、調査の中で子どもの居場所について質問した際「主に家にいる」という回答が91.3%にのぼったことから「子どもやその家族は、社会から向けられる視線から外に出るのが怖く感じられたり、『不登校なら家にいるのが普通』と思ってしまっていますが、子どもに無理が無ければ、家を基盤に色んなところにいられるのが理想です。他国では、図書館を居場所にして司書さんと過ごすことが日常化しているような子もいます」と話します。

一方、親側についてはこう提言します。
「雇用主は、リモートワークやフレックス勤務など、働き方を柔軟にしてほしい。その人(労働者)にとって必要なことが生じたときに応えられる職場や社会である必要があります」

 ◇

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