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連載

#67 「きょうも回してる?」

サッカー元日本代表、〝グッズ愛〟で転身「プレーと営業、基本同じ」

あふれるJリーグ愛

グッズを手にするサッカー元日本代表の伊野波雅彦さん
グッズを手にするサッカー元日本代表の伊野波雅彦さん

目次

今年30周年を迎えたサッカーJリーグ。多くの選手が活躍してきた舞台ですが、引退後も選手たちの人生は続きます。元日本代表でもあり、昨年現役を引退した伊野波雅彦さんはいま、Jリーグのチームのユニフォームなどをモチーフにしたぬいぐるみグッズで、かつての「職場」に貢献をしています。タッグを組んでいるのはガチャガチャのメーカーです。ガチャガチャ評論家のおまつさんが取材しました。

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伊野波さん、Jリーグさらに盛り上げるため……

スポーツの世界で活躍するトップアスリート。どんなに実力のあるアスリートでも、人は必ず年齢を重ね、現役を引退します。引退した後も、人生は続きます。セカンドキャリアとして、新たなフィールドを見つけたアスリートがいます。

元日本代表の伊野波雅彦さんです。伊野波さんは、AFCアジアカップ2007をはじめ、AFCアジアカップ2011、FIFAワールドカップブラジル2014などを経験したトップアスリート。現役最後のクラブでは、2022年に南葛SCに在籍し、同年シーズンで現役を引退しました。

伊野波さんは引退後、鹿児島県垂水市でサッカー教室を開くなどサッカー界と関わりつつ、セカンドキャリアとして選んだのは、ガチャガチャとの関わりでした。

昨年末、伊野波さんはJリーグをさらに盛り上げるために、ガチャガチャの商品開発・販売を手がけるメーカー「クオリア」と業務提携をしたとツイッターで発表しました。きっかけは、クオリアの代表・小川勇矢さんとの出会いです。この出会いで伊野波さんはガチャガチャの世界に触れることになります。

伊野波雅彦さん(左)と、クオリアの代表・小川勇矢さん
伊野波雅彦さん(左)と、クオリアの代表・小川勇矢さん

「グッズ」に着目、意気投合した二人

伊野波さんは、現役時代からビジネスチャンスを考え続け、情報収集をしていました。そのひとつがスポーツ界のグッズ。特にJリーグのグッズに興味を抱いていたそうです。

Jリーグのグッズについて、伊野波さんは「17年間の現役生活を通じて様々なグッズを見てくる中で、将来、もっとお客さんが喜んで満足してもらえるようなグッズを作りたいという想いがずっとありました」。

そこで、小川さんからガチャガチャのぬいぐるみを作っていることを教えてもらい、伊野波さんがグッズに対する考え方を伝えたところ、意気投合したそうです。
また小川さんと出会った当時、伊野波さんは南葛SCでプレーをしつつ、スポンサーを探していました。小川さんも伊野波さんを応援したい気持ちがあり、スポンサー契約を結びました。

小川さんはこの出会いについて「伊野波さんの活躍は僕が高校や大学生の頃から知っており、サッカーをやっている人からしたらレジェンド的な存在です。そんな伊野波さんが、クオリアのコンテンツに興味を持ってくれていることを知り、Jリーグのぬいぐるみの商品化に繋がりました」と話します。

「恩返しを…」無報酬の営業活動

それ以降、伊野波さんはサッカーの練習の合間を縫って、今までの人脈を辿り、約20のJリーグクラブに営業をかけたそうです。

サッカーでプレイするのと、ビジネスで営業をすることを 伊野波さんは「基本的に一緒です」と話します。
「人によって考え方が違いますが、僕らアスリートは一年間プレーして結果を残さないと首を切られます。結果を残さないといけません。会社勤めの人も、結果を残さなければいけないこともありますよね。営業でどれだけ売上を作り、会社に対して貢献できるか、これはサッカー界と同じです。プロサッカー選手としてやるか、営業としてやるかの違いだけです」

Jリーグのぬいぐるみを商品化する過程の営業活動は当初無報酬だったそうです。そこには、伊野波さんなりの信念がありました。
「スポンサーになってくれたクオリアさんの要望を叶えたい。僕は何かやってもらったことに対して、恩返しをすると自分のなかで決めています」と伊野波さん。利他の精神を貫く伊野波さんの姿勢が垣間見た気がしました。

SAMURAI BLUEのぬいぐるみ
SAMURAI BLUEのぬいぐるみ

10月から販売、瞬時に完売したチームも

今回ぬいぐるみを商品化するにあたり、ひとつ課題がありました。Jリーグのグッズ販売の仕方と、ガチャガチャ業界の販売の仕方の違いです。

Jリーグの業界では、1カ月単位で商品を販売します。1カ月で商品が売り切れたとき、次の企画で商品を販売する流れになっています。また発注数でも、選手も入れ替わりが激しいことが理由のひとつにありますが、多くとも1000~2000個単位の数になっているそうです。ガチャガチャ業界では、この数ではビジネスは成立しません。多くとも5000個以上販売しないと、収益面でとんとんあるいは、わずかな利益しかでないからです。

ここで小川さんは勝負に出ます。伊野波さんの協力のおかげで、5000個から導入しようと決めました。

一番最初は、2022年10月にサガン鳥栖のぬいぐるみを販売します。続いて、同年11月にジェフユナイテッド市原・千葉のぬいぐるみと、鹿島アントラーズのぬいぐるみ、12月に川崎フロンターレのぬいぐるみと、日本代表「SAMURAI BLUE」のぬいぐるみを立て続けに発表します。

今年2月には、横浜FCのぬいぐるみを発売しました。発売したところ、反響が大きく、鹿島アントラーズのぬいぐるみや川崎フロンターレのぬいぐるみは瞬時に完売。とくに鹿島アントラーズは、4日間で7500個売れたそうです。

この反響について、伊野波さんは、「どうしても選手に依存する商品が多いのが現状です。Jリーグのクラブは、選手の商品に頼らず、クラブのキャラクターやコンテンツをもっとアピールすれば、もっと盛り上がると思います。クオリアさんが作るぬいぐるみのサイズは今までありませんでしたし、クオリティーが高いです」と手応えを語ります。

「スタジアムで500円で販売したら、おみやげで買うきっかけにもなります。ぬいぐるみだと、新しく観戦に来た人が買いやすい。ぬいぐるみを買ったのがきっかけで、サッカーを好きになる。逆にサッカーを見に来てクオリアの商品だとわかり、売り場でクオリアの商品を購入するきっかけにもなり、相乗効果も期待できます」と話してくれました。

鹿島アントラーズのぬいぐるみ
鹿島アントラーズのぬいぐるみ

伊野波さんの3つの夢、「成功の証」に挙げたのは

今後の展開について、伊野波さんは、3つの夢を挙げます。

一つ目は、今までJリーグでやっていなかったフィギュアを作りたいということ。2つ目は、このぬいぐるみのビジネスを海外のクラブチームでやりたいということです。

最後の3つ目の夢については、伊野波さんは「現在、Jリーグマスコット総選挙があります。将来、Jリーグのぬいぐるみ総選挙をやってみたい。だからこそ、Jリーグのチーム、すべてのぬいぐるみを手掛けていきたい。それが達成したらひとつの成功した証になると思います」と教えてくれました。

伊野波さんのお話を聞いていくうちに、ガチャガチャ業界 の新しい可能性を感じさせるとともに、ガチャガチャという小さい一歩からサッカー界を盛り上げていきたいという伊野波さんの熱い想いが伝わってきました。

     ◇
商品は1個500円。基本的にスタジアムとスタジアムショップで展開されています。また、SAMURAI BLUEのぬいぐるみに関しては一般のロケーションでの発売になっており、全国のガチャガチャ売場で販売しています。

ガチャガチャ評論家おまつの「きょうも回してる?」
この連載は、20年以上業界を取材しトレンドをチェックしているおまつさんが注目するガチャガチャを紹介していきます。

     ◇
ガチャガチャ評論家・おまつ(@gashaponmani
ガチャガチャ業界や商品などをSNSで発信中。著書に「ガチャポンのアイディアノートーなんでこれつくったの?ー」(オークラ出版)。テレビやラジオなどのメディアへの出演や素材提供も多数ある。

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