連載
#246 #withyou ~きみとともに~
不登校だった20歳、振り袖でゲレンデ滑走 祝福の嵐「うれしい」
「自分にあった環境に身を置けるとうまくいく」
振り袖をなびかせながら、すいすいとスノーボードで滑走していく女性。9日の成人の日に投稿されたツイートが、話題を集めています。不登校だった期間が長く、「ずっと家にいた」時期もあった女性でしたが、この日、多くの人たちからお祝いの言葉を受け取りました。
成人式行ってきました!!! pic.twitter.com/CLQKVC1o5l
— 𖦹蚊取り線香᪤ (@Katorisenkou_ks) January 9, 2023
「成人式行ってきました!」という言葉とともに、赤い振り袖姿のポーズ写真と、振り袖のままスノーボードでゲレンデを滑走していく動画を投稿したのは、京都市に住む大学2年生の「蚊取り線香」さん(@Katorisenkou_ks)。
9日の成人の日、長野県の上田市武石番所ヶ原スキー場で撮影しました。
真っ赤な振り袖のまま、すいすいと斜面を滑っていく様子は爽快です。
ツイートには10日午後10時現在、24万以上の「いいね」がつき、「素敵な成人式」「かっこよすぎる」などの感想とともに、お祝いの言葉が連なっています。
「もう地元を離れているし、地元にいる間は不登校だったので、成人式には行かなくていいかなってずっと思っていたんです」
蚊取り線香さんは現在、地元の青森県を離れ、京都で漆芸を学んでいます。
成人式に行くという選択肢は当初からありませんでしたが、成人の日が近づくにつれ、
「せっかく二十歳なのに何もしないのはつまらないな」と思うように。振り袖を着てみたいという気持ちもふつふつとわいてきました。
蚊取り線香さんの趣味はコスプレです。そして、蚊取り線香さんいわく、「界隈では、コスプレをして滑走するという文化があるんです」。
蚊取り線香さんの中で、振り袖と滑走の二つがつながりました。
「自分らしくいこう」と考え、昨年10月には振り袖を購入。高校時代にアルバイトをしていた縁で、長野県のゲレンデで滑ることを決めました。
中でも、番所ヶ原スキー場は、コスプレイヤーにも寛容なゲレンデとして有名。以前からスキー場で働く人たちともつながりがあったため、ここで自分らしい成人式を敢行することにしました。
当日は、知り合いの女性に着付けを頼みました。女性は「おもしろそうだし、いいよ」と着付けを快諾してくれ、スキー場でも着崩れするたびに直してくれました。
安全ピン1ケース分を使い、お端折りや襟、足元などがはだけないように調整したそう。
スキー場では、支配人から「成人おめでとう。似合っているね」、リフトの担当者からも「うまいね。振り袖が似合っているよ」など、次々に声をかけてもらいました。
「本当にアットホームな、いいスキー場なんです。番所でやってよかったなと思いました」
番所ヶ原スキー場の支配人は、スキー場の特色について「コスプレさん、痛板さん( アニメなどがデザインされたスノボやスキーの板を使う人)大歓迎です」と説明した上で、注意点をこう話します。
「振り袖やコスプレをして利用される方は、リフト乗車時に裾や装飾品が搬器にひっかからないようにしてください」
「また、滑走時は、お客様の熱い視線で火傷しないようにしてください」
蚊取り線香さんには不登校の経験があります。
小学校4年生で起立性調節障害の診断を受け、学校には行けたり行けなかったりする日々が続きました。
中学も行ったり行かなかったりで、中学3年生からはほとんど登校せず、高校は通信制の高校を選びました。
学校に行けなかった期間、当初はやることもなく家でアニメを見たりしながら過ごしていました。
ただ、中学3年生の頃から絵を描くように。高校生になってからは個展も開きました。
「集団行動が苦手で、多くの人がいる場所になじめない」という蚊取り線香さんでしたが、得意な絵を通じて多くの人とつながり、通信制高校の間に始めた、長野県での冬季のアルバイトで、生まれ育った地とは別の場所にも居場所を獲得しました。
「自分にあった環境に身を置けるとコミュニケーションがうまくいくのかな、と感じています」
今回、振り袖姿で滑走したところ、スキー場のスタッフや、ツイート投稿にリプした多くの人たちからお祝いの言葉をもらったことについてはこう話します。
「成人式には行かないつもりだったので、誰からもお祝いの言葉をもらえると思っていなかったんです。それなのに、投稿に対してすごい数のお祝いの言葉をもらっています。日本で一番祝われているんじゃないかな?本当にうれしかったです」
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