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ネットの話題

「働けばいいと思うよ」工事業者のエヴァ風求人広告が必死すぎて人気

愛全開「らしい」フォントで再現

人気アニメ「エヴァンゲリオン」シリーズでおなじみの文字表現を、すさまじい精度で再現した企業の求人広告が、ネット上で話題を呼んでいます。
人気アニメ「エヴァンゲリオン」シリーズでおなじみの文字表現を、すさまじい精度で再現した企業の求人広告が、ネット上で話題を呼んでいます。 出典: 諏訪技建提供

目次

長野県の道路沿いに現れた巨大求人広告が、ツイッター上で話題をさらっています。人気アニメ「エヴァンゲリオン(エヴァ)」シリーズの世界観を、文字のみで再現。あまりの完成度の高さと、行間に見え隠れする働き手への渇望が注目を集めているのです。製作の背景について取材しました。(withnews編集部・神戸郁人)

「カッコいい年のとり方」を考えたら、見えにくいモノが見えてきた(PR)

作品愛あふれるパロディーの数々

話題を呼んでいるのは、工事業者の会社敷地内に掲げてある広告です。高さ1.8メートル、幅2.7メートルの建設用骨組みの正面に6枚、両側面に2枚張られた、ターポリン(防水・防音シート)にあしらわれています。

正面側の6枚は、白と黒の背景のものを、交互に配置。それぞれ、表面に文字が刻まれています。「エヴァ」本編エピソードのタイトルカットなどに多用され、作品を特徴付ける意匠を、明らかに意識したものです。

テレビアニメ版第一話の題名「使徒、襲来」や、物語のキーターム「人類補完計画」をもじった、「第壱話 現場、襲来」「人材補完計画発動」といった単語の他、キャラクターの発言に由来する一文も満載です。

「総員第一種仮設準備」
「動け、動け、動け、動け」働け
「まさか、募集?」
「働けば…いいと思うよ」

そしてよく目をこらすと「足場職人募集」「福利厚生」といった単語が見え、求人広告であることに気付きます。5月に入り、関連画像がツイッター上で拡散され、「作品愛にあふれてる」「面接に行きたくなるほど好き」と好評を博しました。

6枚のターポリンには、文字で構成された求人メッセージが、所狭しとちりばめられている。
6枚のターポリンには、文字で構成された求人メッセージが、所狭しとちりばめられている。 出典: 諏訪技建提供

自由な社風を伝えるのに最適

広告を作ったのは、長野県諏訪市の工事業者・諏訪技建です。2020年創業の若い企業で、建設現場向けに足場の組み立て作業などを請け負っています。製作経緯について、長崎聖平代表(31)に聞きました。

同社では地元のハローワークなどを通じ、働き手を募ってきました。しかし反応が芳しくなく、国道20号沿いに社屋が立地する点を活かし、大々的に求人広告を打とうと判断したといいます。

「弊社は30代以下の社員が多く、活気ある職場です。自由な社風が伝わる広告にしたいと思いました。その点、『エヴァ』風のデザインは最適で、かつ同業他社と絶対被らない。道行くドライバーの認知度も高いと考えたんです」

「エヴァ」の象徴と言えば、特殊フォント・マティス-EBで大胆につづられる文字表現です。今回の広告ではHGP明朝体を駆使し、縦横比を調整することで、「らしさ」の再現を試みました。

強く意識したのが、原作の名台詞(めいぜりふ)を、事業内容にひもづける形に改めることです。自らも「エヴァ」愛好家という長崎さんは、お気に入りである「一枚二千枚の特殊踏板(ふみいた)」の一文を例に挙げ、説明してくれました。

〝元ネタ〟は劇場アニメ「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に」で、汎用人型決戦兵器人造人間「エヴァ弐号機」の構造に言及した台詞「一万二千枚の特殊装甲」。「装甲」を建設作業用の足場部材「踏板」に置き換えています。

求人広告のうち「一万二千枚の特殊踏板」と書かれた部分の拡大図。
求人広告のうち「一万二千枚の特殊踏板」と書かれた部分の拡大図。 出典: 諏訪技建提供

〝社長いじり〟に込めた思い

広告製作を実務面で進めたのが、同社主任の鮎沢穂高さん(30)です。中学時代に「エヴァ」に魅了され、物語の重要人物・加持リョウジが大好き。デザインに活かす台詞を抜き出すため、シリーズ全作を三日間かけて観直しました。

「自宅でDVDを流しながら、『おっ』と思った一言があれば、一時停止してメモする。その繰り返しで、本編を全然楽しめなかったのは残念でした(笑)」

台詞のパロディーについては、挑戦的な一文を、なるべくたくさんつくるようにしたといいます。

「社長、活動限界まで三十秒」を始めとした〝社長いじり〟も、その一環です。敵と交戦中、エヴァの稼働用電力が尽きかけた際の台詞を、求人がはかばかしくなく、疲労する長崎代表の姿に重ねました。

「正直、怒られるかなと思った」と苦笑する鮎沢さん。しかし意外にも好評で、そのまま採用することになったのです。このようなユーモア全開の表現に、求人情報を混ぜ込むことで、企業への理解が自然に促される内容に仕上げました。

「個人的な一押しは、人気が高いエピソード『ヤシマ作戦』がモチーフの『アシバ作戦』です。広告デザインを基にチラシを作り、近隣の飲食店にも配ったところ、とても喜んでもらえた。アニメの世界観と職業を、うまく融合できたと思います」

諏訪技建が近隣の飲食店などに配った求人チラシ。
諏訪技建が近隣の飲食店などに配った求人チラシ。 出典: 諏訪技建提供

業界の状況を変えるきっかけに

同社が今年2月に広告を公開して以降、各種メディアから取材を受けるなど、思わぬ反響が続いています。その影響もあってか、広告を見て面接を希望してきた人物に、職場に加わってもらうこともできました。

長崎さんは「予想を超える結果。街の活性化にもつながって欲しい」と喜びます。その上で、次のようにも話しました。

「建設作業は体力勝負の仕事です。現場では粗暴な言動が目立ちがちで、若手職人が定着しづらい事情もあります。こうした状況を変えたいと、弊社では社員の業務負荷軽減、プライベートの充実など、時代に合った働き方を追求しています」

「今回の広告を通して、一連の取り組みが周知され、業界全体で人を大切にする流れができていけばうれしい。そして同業他社の中からも、目にした人を楽しい気持ちにさせる広告を作るところが、ぜひ出てきて欲しいですね」

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