連載
#7 特別じゃない日
ケーキ屋さんに来た4歳児 「特別な日」迎えるための特別じゃない日
「特別じゃない日」をテーマにした単行本が発売された漫画家・稲空穂さん。ツイッターで発表して注目を集めた漫画「誕生日一週間前」に込めた思いを聞きました。
誕生日を前に、お母さんとケーキを予約しに来た男の子。
お母さんは指を1本立てて、店員さんに「1歳」と伝えています。
ケーキ屋さんのメモには「りょうたくん ロウソク1 おたんじょうび 4号 いちご」の文字が。
翌年も同じように予約に訪れ、2歳になったりょうたくんは笑顔で指を2本立てています。
ケーキ屋さんのメモには「りょうたくん ロウソク2 おたんじょうび 5号 チョコ」。
ケーキのサイズが大きくなり、いちごよりチョコが好きになったことがわかります。
3歳になって訪れたりょうたくんは、指を3本立てて自らの年齢を伝えます。
さらに次の年、4歳になって指を4本立てるのかと思いきや、なぜか立てた指は1本だけ。
りょうたくんの隣には、1歳になる妹の姿がありました。
この日は自分の誕生日ケーキではなく、妹のためにいちごのケーキを買いに来たのでした。
「特別じゃない日」という主題を一番意識した作品です。
「特別な日」は誕生日当日、じゃあそれ以外の日は?
きっとお祝いする気持ちは、誕生日当日よりずっと前から生まれていると思っています。
私がよく行くケーキ屋さんスーパーの中にある「ボンとらや」さん。
普段そこまで甘いものを買うことがないため、買い物をするのは誕生日やクリスマスくらい。
行くたびに店員さんが「今日は何にされますか?」と笑顔で声をかけてくださるのがとてもうれしく、一緒にお祝いしてもらえている気持ちになります。
「特別な日」に向かう「特別じゃない日」が私はとても大好きです。
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〈稲空穂=いな・そらほ〉 静岡県出身・在住の漫画家。会社員を経て2017年に「おとぎ話バトルロワイヤル」(KADOKAWA)でデビューし、「特別じゃない日」で日常をテーマにした作品に挑戦中。老夫婦や女子高校生、主婦、バイトの青年……それぞれの小さな幸せがつながっていく物語を描いていて、実業之日本社から第1集が書籍化されています。Twitterアカウントは@ina_nanana
withnewsでは原則隔週水曜日に、稲さんの漫画とともに作品に込めたメッセージについてのコラムを配信しています。
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