連載
#1 特別じゃない日
スマホを手にした老夫婦が「残したいもの」 どんな気持ちで撮った?
「特別じゃない日」をテーマに描き続けている漫画家・稲空穂さんが、スマホを手にした老夫婦の「残したいもの」について描きました。作品に込めた思いを聞きました。
「おじいちやん 頭の上のメガネ 探しています」と、慣れないスマホで娘と孫に写真を送ったおばあちゃん。
写真には、頭の上にメガネを乗せたまま、自分のメガネを探して部屋をさまようおじいちゃんの姿が写っていました。
そんなおじいちゃんにスマホを勧めても、返事は「カメラがある」。
そうは言いながらも、おばあちゃんが来客対応している間に、置いていったスマホを触ってカメラで何かを撮影しようとします。
少し迷った後、記念すべき1枚目としてこっそり撮影したのは、玄関で話をしているおばあちゃんの笑顔でした。
スマホやSNSの普及により、瞬間的に今自分の目の前で起こったことを記録し、他の誰かに共有できる。
今はとてもすごい時代になったと思っています。
「写ルンです」を使っていた私の学生時代と比較すると、とんでもない進化です。
スマホやSNSは悪い側面が取り上げられがちですが、大事な人が何を素敵だと思っているのか。
カメラ越しにすぐ見ることができる今を大切にしていきたいと思っています。
SNS等でアップされる写真には1枚1枚必ず撮った人がいて、どのような気持ちでそれを撮ったのか、どんな状況で撮ったのか。
そんなことを思い浮かべてもらえたら嬉しいな、と思いながら「残したいもの」を描きました。
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〈稲空穂=いな・そらほ〉 静岡県出身・在住の漫画家。会社員を経て2017年に「おとぎ話バトルロワイヤル」(KADOKAWA)でデビューし、「特別じゃない日」で日常をテーマにした作品に挑戦中。老夫婦や女子高校生、主婦、バイトの青年……それぞれの小さな幸せがつながっていく物語を描いていて、実業之日本社から第1集が書籍化されています。Twitterアカウントは@ina_nanana
withnewsでは原則隔週水曜日に、稲さんの漫画とともに作品に込めたメッセージについてのコラムを配信しています。
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