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IT・科学

街録chの三谷三四郎さんを街録してみた テレビより稼げるって本当?

「炎上したことは?」「ないですね」

〝街録中〟のYouTubeチャンネル「街録ch」を手がけるフリーのディレクター・三谷三四郎さん
〝街録中〟のYouTubeチャンネル「街録ch」を手がけるフリーのディレクター・三谷三四郎さん

目次

「あなたの人生、教えてください」をキャッチコピーに、一般人から著名人までひたすらインタビューをするYouTubeチャンネル「街録ch」。「妻がホスト狂いで1700万円の借金」「元女受刑者 覚醒剤で逮捕/母はストリッパー」など、壮絶な過去を語る人々の姿を映し出し、多くの視聴者を魅了している。動画を作るのは、フリーのディレクター・三谷三四郎さん。実はこの度、私たかまつななも出演させていただくことに。せっかくの機会なので、「街録chのディレクターに街録してみた」ということで、逆インタビューを決行。テレビマンを経て、今の形へとたどり着いたいきさつを聞いた。

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“美しい形じゃない”から撮れた

――街録ch、本当に面白いですよね。なぜ人気だと思いますか?

三谷:
動画としては、美しい形態じゃないんですよ。1人の話だけで30分以上回して、画角もそんなに変わらない。テレビの逆をいくような作り方で、誰もやっていなかったから目立った。あとは、他で聞けない話が聞ける場合もある。


――そこが面白いですよね。

三谷:
撮っているときは横に座ってしゃべっているだけなので、最初は緊張していても、15~20分も経つと慣れてくる。時々、「そんなつもりなかったけど、しゃべっちゃいまいした」ということもあって、そこがうまみだったりする。

ちょっと勝算もありました。テレビをやっていた頃に東野幸治さんの番組で、街録chと似たような企画をやったことがありました。

鳥取砂丘で70歳くらいのおじいちゃんがパラグライダーの練習をしているんですが、風にあおられてボロボロだったんです。話を聞いたら、「奥さんが10年以上前に亡くして、やることがなくなった。元自衛隊で同窓会みたいなのに参加したら、モーターパラグライダーを始めた友達がいた。『人生の最後に一緒に飛ぼう』って誘われたから頑張ってる」みたいな話でした。それをいい感じで編集したら、長文のメールでめちゃくちゃ感謝されて、これはやる意味があると思った。

「金は貯まるけど、人生楽しいのかな」

――今、テレビは全くされていないんですか?

三谷:
YouTubeで月30万円くらい稼げるようになったところで辞めました。


――なぜテレビを辞めたんですか?

三谷:
雇われディレクターなので、やりたい企画なんてほぼ通らない。あと頑張って作ったとしても、放送作家さんとか総合演出とか権力を持っている人の好みでなければ使ってもらえないのも不満でした。そういう時は心を殺すんですが、「金は貯まるけど、これで人生楽しいのかな」と思い始めました。


――テレビの方が収入は良かったのでは?

三谷:
最初はそうでしたけど、今は超えました。


――収入が減ってもいい、と割り切りがあったんですか?

三谷:
ありました。当時は、たぶん同世代の大企業に勤めている人よりも稼いでいた。でも寿命は短いし退職金も出ない。睡眠時間も少なくて休みもほぼない。

ディレクターを続けたら、そのうち「演出」っていう立場になります。番組の責任者であるテレビ局の「総合演出」の意図を汲んで、下のディレクターに指示してまとめるような仕事。僕はサラリーマンができないと思ったからこの仕事をしているのに、演出って中間管理職みたいだなと思った。

30代前半に演出をやるチャンスはあったんですが、それをやっても面白くない。YouTubeは、視聴数は少ないけどリアルタイムで感想がもらえるのがうれしかった。これなら一生続けられるかもしれないと思いました。


――テレビを辞めて後悔はないですか?

三谷:
全くないですね。今が一番楽しくて幸せ。テレビやっていたら子どもと遊ぶ時間もなかったでしょうね。今は週2回取材に出て、あとは編集と事務作業をしています。今は毎日7時間くらい寝てます。

過激なのに訴訟なし、秘訣は人間関係を築くこと

――今は街録を中心にされていますが、それだけでも面白いですか?

三谷:
面白いですよ。これ以上の話は出てこないんじゃないか、と思うこともあるんですけど、続けていると新しい話が出てくる。意外な人が自ら出演してくれることもある。

テレビでタレントさんとロケをする場合、タレントさんに技量があると面白いからほとんど編集しないこともある。それだとディレクターがいらないんですよ。逆に腕がないタレントさんだと、バキバキに編集される。それも面白くない。

一方で、一般人とやりとりして面白くする方が、ディレクターのスキルとしては高い。そこにやりがいを感じていうるちに、25分やり取りするだけで飽きずに見られる、テレビ業界のやつらも納得するようなものを作れるようになったんですよ。


――YouTubeだと自分で責任取らなきゃいけないと思うんですが、疲れたりしませんか?

三谷:
どちらかというと、テレビ時代の方が最悪でした。僕たちが取材先とやり取りして内容を決めた後に、番組の会議があって内容を変更しなければならないこともある。その変更が取材先にとって不本意な形だとしても、うまい言い方をしてOKをもらうんですよ。でも、オンエアされた時にやっぱり「不本意だった」となれば、取材先の信頼を失うのは現場の僕らです。

だから今の方がいい。今はなるべく相手が損しないように、得するようにということを心掛けている。


――炎上したことは?

三谷:
ないですね。


――過激すぎて広告が付かないことはありますか?

三谷:
しょっちゅうです。過激なものはワードを削ったりしたこともあるんですが、やりすぎるとつまらなくなる。あとは、例えば「風俗」って言うだけでアウトなんですよ。「〇〇」とかに変えた方がいいので努力はしますけど、やりすぎると信用を失う。取材を受けてくれた人に「せっかく赤裸々にしゃべったのに、コンパクトにされた」と思われちゃう。

その人の思いは波及するので、チャンネル登録されなくなる。広告がつかなくても、登録者数が増えた方がいいですね。


――トラブルに巻き込まれたことはないんですか?

三谷:
元家族の人のことをしゃべった人がいて、「自分だとバレると迷惑なので、取り下げないと裁判起こします」と電話がきたことはあります。そんなつもりはないので消して、該当部分をカットしてアップロードさせてもらったことはありました。しゃべりすぎたせいで、周りの人から嫌な反応があった、という時も取り下げました。そのくらいです。

“数字が取れるか“は関係ない

――取材対象の人選はどうして決めているんですか?

三谷:
数字が取れなさそうでも、初めての話なら聞きたいというのが1つ。もう1つは、街中で気になる人をその場でつかまえて、何も準備していない状態で聞き出して作ったりしています。その方が、面白さがあると思う。


――相手が一般の人だと、ボツになることも多いですか?

三谷:
ボツにしないようにしています。1分以内に見極めて、10分とか20分拘束しちゃったらちゃんと作ります。最近は、2,3本まとめて1つにすることもありますね。最初の3か月はガチで街録していましたが、最近は立候補とか他薦、こちらからのオファーが9割です。


――有名な人はどうやってキャスティングしているんですか?

三谷:
一番は東野さんのおかげです。それまで一般人だったので、「1万人記念で出てくださいよ」ってインスタグラムのDMで送ったんですよ。いい意味でネジが外れてる素敵な人で、リスクしかない中、引き受けてくれた。そしたら「東野幸治が出ているなら大丈夫かな」というのができたんでしょうね。おかげで芸人さんは間口が広くなりました。

”やらせ”をしておいて「演出だよ」はダメ

――今のマスコミにやってほしいこと、やってほしくないことはありますか?

三谷:
最近は、お笑いブームもあって、お笑い系の番組が増えてきたので、それは続いてほしいですね。お笑い番組が増えて若手芸人さんのチャンスが増えているから、それはいいことだと思います。

やってほしくないことは、”やらせ”をしておいて「演出だよ」ということ。あとは、やらせをさせていいのは、高額なギャラがもらえるタレントたちだけで、無料で協力している一般人はだめ。一般の人に対して平気でボツにするのも止めてほしいですね。

その人は「カメラが来るから」って、わざわざ部屋を掃除したり、髪を切ったりメイクしたり、服も買っているかもしれません。カットされる可能性も一応伝えているとは思いますけど、まさかそうなるとは思っていなかったりするんです。


――これだけ過激なものを作っていて、訴訟がないとか、そこまで大きなクレームがないというのはすごいですね。

三谷:
相手に嫌な思いをさせてしまうことがあっても、告発まではしないような人間関係を築く努力はしています。

あと、僕は別に悪いことはしていないんです。他の人にとってウソだとしても、少なくとも本人にとっての事実をしゃべってもらっている。それが真実かどうかは、究極その人じゃないと分からない。唯一リアルなのは、その人がカメラの前に来たということだけです。

ただし、取材対象者がコメントで叩かれるときは、できるだけ消しています。最近、追いつけなくなってしまっているんですけどね。


――どういう基準で消してるんですか?

三谷:
バカみたいな子どもみたいな悪口とか、「ブス」「頭おかしい」とか。応援だったらいいんですけど、匿名で書いてる時点で何の責任もない。一番エライのは、取材を受けてくれた人。その次がそれを応援してくれる人。誹謗中傷する人は、僕より下。その意見をどう扱うかはこっちの判断で決めてもいいと思ってます。

クラファンの様子を撮って感じた手ごたえ

――今後の野望はありますか?

三谷:
2022年にチャンネル登録数100万人いったらいいですね。あとはZepp東京とか借りて、街録chに出てくれた人をピックアップするようなイベントがしたい。

あとは、取材したゲイバーのオーナーが経営に困っていて、動画を回しながらクラファンのやり方をレクチャーしたんですよ。そしたら、視聴回数が上がったのと、クラファンが1週間で100万円くらい集まったんですよ。


――めっちゃ素敵ですね。

三谷:
自分の生活を投げうってまで人のことを助ける必要はないですが、いい意味で人助けがエンタメ化できればいいなと思います。僕は再生回数で収益を得て、向こうも助かる、面白いと言ってくれる人もいる。誰も損していないからいいなと思います。

三谷:
出演者によってチャンネル登録数が伸びる人と、イマイチだなというのは数字に表れる。本当はしゃべりたくないような恥ずかしいことを話してくれると、基本応援されるんじゃないかな。


――(たかまつ自身が出演したことについて)赤裸々に話せたかな…?

三谷:
赤裸々でしたよ、かなり。インテリ層特有の劣等感みたいなものを、嫌なフィルターなく聞ける話で面白かったですよ。

――ほんとですか。ありがとうございました。


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