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連載

#107 ○○の世論

河野太郎氏の発言にハラハラ 「脱原発」総裁選をどれだけ左右?

自民支持層でも4割が「進めるべき」

自民党総裁選の候補者討論会に臨む河野太郎行政改革相=2021年9月18日午後2時3分、東京都千代田区、藤原伸雄撮影
自民党総裁選の候補者討論会に臨む河野太郎行政改革相=2021年9月18日午後2時3分、東京都千代田区、藤原伸雄撮影

目次

「次の首相」を事実上決めることになる自民党総裁選の4人の候補者が連日、論戦を交わしています。その焦点のひとつが原発・エネルギー政策。なぜなら、だれが「次の総裁」にふさわしいか聞いた各種世論調査で、かねて「脱原発」を唱えてきた河野太郎・行政改革相が一歩リードしているからです。河野氏は、党内の原発推進派や経済界の理解も得ようと、持論を封印しているという指摘もあります。次の首相が脱原発を進める必要があるかどうかで世論は割れていますが、各候補者の支持模様にどう関係しているのでしょうか。
(朝日新聞記者・磯田和昭)

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60歳以上で強い脱原発志向

朝日新聞の世論調査(9月11、12日)では、調査時点で出馬を検討していたものの、のちに不出馬を表明した石破茂・元幹事長も含め5人から、だれが「次の自民党総裁にふさわしいか」選んでもらいました。結果は、河野氏が33%でトップ。石破氏16%、岸田文雄・前政調会長14%、高市早苗・前総務相8%、野田聖子・幹事長代行3%と続きました。

さて「脱原発」という言葉でイメージする内容には、人によってかなり差があるとみられます。今すぐ原発は停止すべきだという「即時」論者もいれば、原発には原則40年という運転期間があるのだから、建て替えも新増設もしなければ、いずれ原発はなくなる――それでいいじゃないかという立場の人もいます。

実際、河野氏も18日の公開討論会で高市氏から原発に関する考えをただされ、「耐用年数のきた原発は廃炉になっていき、緩やかに減っていく。それ以上のものではない」と説明しました。

東京電力福島第一原発事故から10年たったいま、「脱原発」をめぐる意識はどうなっているのか、ざっくりではありますが、まずはこの点を押さえることにします。次の首相は「脱原発」を進めるべきだと思うか、その必要はないと思うか、という形で聞いてみました。

すると、「進めるべきだ」が48%で、「その必要はない」(40%)より少し多い結果でした。男女で大きな違いがあり、男性では「その必要はない」が47%と、「進めるべきだ」(43%)よりやや多いのに対して、女性では「進めるべきだ」52%、「その必要はない」33%と脱原発志向が強くなっています。

年代別にみてもかなり違っていて、40代以下では「その必要はない」の方が多数派なのに対して、50代以上では脱原発を「進めるべきだ」の方が多くなっています。とりわけ60代では「進めるべきだ」61%、「その必要はない」29%と際だっています。

今度は支持する政党別にみてみます。

「自民党を支持する」と答えた人たち(自民支持層)では、全体とは逆に「その必要はない」が46%となり、「進めるべきだ」(43%)よりやや多くなっています。立憲民主の支持層では「進めるべきだ」が7割あまりと多数ですが、全体の半分を占めボリュームの大きい無党派層では、「進めるべきだ」48%、「その必要はない」37%という結果です。

 

「脱原発」と河野氏の支持は無関係?

次の首相が「脱原発」を進めるべきだと思うかどうかの違いで、候補者4人の支持模様に差があるか見てみました。

「進めるべきだ」と答えた人では、河野氏が次の総裁にふさわしいと思う割合が34%でした。一方、「その必要はない」という人でも、河野氏を挙げた割合は33%。回答者全体で見た場合、河野氏が「ふさわしい」という割合が33%ですから、このテーマに対する考え方の違いは、今のところ河野氏支持の強さの違いにはあまり影響していないようです。

ちなみに、「進めるべきだ」という人では、石破氏を推す人の割合が19%で、全体で見た場合の16%より少し多くなっています。「その必要はない」という人では、高市氏の支持が全体よりやや強めです。

河野氏は今回の調査直前の9月10日に記者会見して立候補を表明しました。ここにいたるまで、所属する派閥領袖の麻生太郎・副総理兼財務相と連日会談するなど、調整に明け暮れました。それもこれも、党内でも「異端児」といわれる、これまでの政策的立場があるからでした。

原発をめぐっては、安倍晋三・前首相が新増設にからむ議員連盟の顧問に就いたほか、細田派や麻生派に経済産業省の推進路線を推す幹部たちがいます。

10日の会見で河野氏は「安全が確認された原発を当面は再稼働していく」としつつ、新増設は「現時点で現実的ではない」と表明しました。推進派の支持を取りこぼさないようにする一方で、「脱原発」派の離反も招きたくない――そんな微妙な口ぶりに聞こえました。

そして何より推進派の警戒感を呼んだのが、原発の使用済み燃料からプルトニウムなどを取り出して再び発電に使う「核燃料サイクル」の見直しに触れた点です。実際、岸田氏が「核燃料サイクルを止めれば、現実に動いている原発すら動かすことが難しくなる」と指摘しています。

 

持論封印? 電力業界はハラハラ

河野氏は公約パンフレットに「産業界も安心できる現実的なエネルギー政策をすすめます」と掲げましたが、公開討論会では「原発より再生エネルギーの方がコストが安いことが明確になった。廃炉コストも入れれば原発コストはさらに高くなっていくと思う」と指摘しました。電力業界なども論戦の行方に、ハラハラすることになりそうです。

今回の世論調査では、「次の首相に最も必要なもの」を4択で選んでもらいました。「実行力」を選んだ人が64%と圧倒的に多かったのですが、「誠実さ」を選んだ人が2番手で15%いました。菅義偉首相は「発信力」が足りないと言われてきたので、多いのかと思っていたら、「発信力」を挙げた人は10%。「政治信条」が7%でした。

「誠実さ」重視の人の中では、「次の総裁」に河野氏を挙げた割合が20%と、石破氏(25%)より少ない結果でした。

総裁選の論戦は、党所属国会議員の投票日の9月29日までの長丁場。河野氏は「脱原発」にからむ立ち位置を引き続き問いただされそうです。首相の座に上り詰めた際、原発・エネルギー政策にどう取り組むのか。持論との政策的整合性をどう説明していくのか。そこに「誠実さ」が求められるのは、まちがいありません。

 
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