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連載

#32 「きょうも回してる?」

「本当に削れる」かき氷ガチャ 執念のこだわりで食品衛生法もクリア

トイズスピリッツの「本当に作れる!ダイキャスト製!ざ・かき氷マシーン」=いずれも筆者撮影
トイズスピリッツの「本当に作れる!ダイキャスト製!ざ・かき氷マシーン」=いずれも筆者撮影

目次

ショッピングモールの空き店舗などを活用して、売り場面積が増えているガチャガチャ。小さなカプセルに、メーカーはそれぞれの想いを込めています。ミニチュアでの再現性に定評があるトイズスピリッツが開発したのは、「本当に氷が削れる」かき氷機のガチャガチャです。今年5月に再販されたほどの人気商品の裏側を、ガチャガチャ評論家のおまつさん(@gashaponmani)が取材しました。
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ガチャガチャ評論家おまつの「きょうも回してる?」

広がるガチャガチャ売り場

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が各地区で発令され、私たちの日常は変化しました。とくにリアルな体験ができるイベントなどが制限され、子どもの学校行事なども中止せざるを得ない状況になりました。

リアルな体験ができる機会が少なくなっていくなか、コインを入れて商品を購入するというアナログな体験ができるガチャガチャ売り場は、2020年から実は急拡大しています。

2020年にオープンした店舗の一例を調べていくと、ルルアークが運営する「ガチャガチャの森」が20店舗以上、トーシンが運営する「#C-pla」も20店舗以上、ドリームカプセルが運営する「ドリームカプセル」も15店舗以上と増えました。

ルルアークが運営する「ガチャガチャの森」
ルルアークが運営する「ガチャガチャの森」

とくにバンダイナムコアミューズメントが運営する「ガシャポンのデパート」は、2020年8月にオープンして以来、28店舗(7月時点)まで拡大しています。

出店をみると、ショッピングモールの空き店舗を活用してケースが多いです。人手を必要としない面があるものの、リアルな体験が少なくなっているからこそ、非日常的な、何が出るかわからないワクワク感が味わえるガチャガチャ売り場が求められているのではないでしょうか。

バンダイナムコアミューズメントが運営する「ガシャポンのデパート」
バンダイナムコアミューズメントが運営する「ガシャポンのデパート」

カプセルに詰まった情熱

ガチャガチャでは、直径65mmのカプセルが中心に使われています。その小さなカプセルに、各メーカーはそれぞれの想いを込めて商品を作っています。

「直径65mmのカプセルのなかに、何かをつめこむことは正直、何を作るにしても難しいです。ガチャガチャは低単価商品ですので、コスト制限もあります。その制限なかで、どれだけ良い商品を作り上げていくか。難しいですが、その分楽しいです」。こう話すのは、トイズスピリッツの代表の西村圭太さんです。

トイズスピリッツのガチャガチャには、一つ一つに作り手の情熱とこだわりが詰まっています。このコラムでも紹介しましたが、西村さんは大のミニチュア好き。ガチャガチャに魂を吹き込むほど、ものづくりに対する姿勢は目を見張るものがあります。

西村さんは企画・開発する上で、「トイズスピリッツの商品を手にとって、心から喜んでもらえる商品を作りたい」と教えてくれました。また、お客さんが売り場のディスプレイを見て購入し、カプセルを開けたときに、「これ、すごいじゃん!」や「もう1個欲しいな!」という声を聞くことが一番の喜びだと言います。

そのために西村さんは、商品のディスプレイ以上の価値を提供することを大事にしています。

かき氷機をガチャガチャに

今回紹介するのは「本当に作れる!ダイキャスト製!ざ・かき氷マシーン(以下、かき氷マシーン)」です。2020年6月に販売して好評を博し、今年5月に再販されました。

トイズスピリッツの強みは、中国の生産工場で長く経験を積んだ西村さんが商品の素材を熟知しており、ミニチュアの再現性が高いことにあります。かき氷マシーンは、その強みが存分に詰まっているガチャガチャです。

確かに、かき氷機のガチャガチャは他社でも販売しています。しかし、西村さんは「お客様がカプセルから取り出したときの喜びと感動が見たい」と、商品作りに妥協せず、本格的なかき氷機をガチャガチャで表現しました。

ガチャガチャのサイズで、本格的なかき氷機を表現
ガチャガチャのサイズで、本格的なかき氷機を表現

「本当に作れる」にこだわり

具体的には、実物のかき氷機を再現するために、プラスチック素材ではなく、鉄のダイキャスト製にして、強度を高めています。これだけでも、リアルさは十分伝わりますが、本当に氷を入れて削れるように、安全に配慮したギミック(巧妙な仕掛け)を作りました。

複雑なギミック構造を使った商品作りもトイズスピリッツの強みです。長年の玩具製作に携わった経験から、様々な技術を持つ西村さん。

「小さいカプセルのなかに、本物のかき氷機の構造を用いることはできません。埋め込むギミックは簡素化せざるを得ませんが、すればするほど不具合が起こる可能性がでてきます。テストを繰り返していくと、構造上、どこが欠点なのかわかりってくるので、不具合を起こさないように改善していきます」と話してくれ、まさに経験則が活かされたガチャガチャとなっています。

また、「食べられません」という表示を商品ディスプレイに付けているメーカーが多いなか、実際に氷が削れるよう食品衛生法上の試験にも合格しました。氷を固めるための容器には、十字のマークが施され、固まった氷が削るときに滑らないように工夫しているなど、西村さんの本気度が随所に伝わってきます。

氷を固めるための容器には、十字のマークが施されている
氷を固めるための容器には、十字のマークが施されている

「良いものをできるだけ低単価で提供することで、お客様に手に取ってもらい、感動してもらえる機会がガチャガチャにはあります。そこがガチャガチャの魅力。だからこそ、どうしても夢中になってしまうんです」

     ◇

「本当に作れる!ダイキャスト製!ざ・かき氷マシーン」は、かき氷機(青)、かき氷機(緑)、かき氷機(桃)、かき氷機(赤)、かき氷機(黄)の5種類。1回500円。

この連載は、20年以上業界を取材しトレンドをチェックしているおまつさんが注目するガチャガチャを毎週金曜日(原則)に紹介していきます。

     ◇
ガチャガチャ評論家・おまつ(@gashaponmani
ガチャガチャ業界や商品などをSNSで発信中。著書に「ガチャポンのアイディアノートーなんでこれつくったの?ー」(オークラ出版)。テレビやラジオなどのメディアへの出演や素材提供も多数ある。
ガチャガチャ評論家おまつの「きょうも回してる?」

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