連載
#26 「きょうも回してる?」
超ニッチ!偉い人の会見台ガチャガチャ、売れるかわからなくても…
「全国で何十万個売れるよりも…」
売り場で販売しているガチャガチャは、約半年前に企画で商品化が決まり、販売の3か月前にベンダー(ガチャガチャ機械を運営する会社)が何を売り場で販売するかを決定します。そして発売月に商品を売り場に並べます。これが一般的な商品化までの流れです。
ここ10年の間で、メーカーの数は30社以上となり、今までは10万以上売れればヒット商品、20万個で大ヒット商品となりましたが、メーカーが増えた分、商品点数が増え、私の肌感覚だと、オリジナル商品は5~6万個売れればヒット商品になっていると感じます。
今やメーカーにとっては、売り場は激戦区。厳しい状況のなか、「一人ひとりの『面白い』を大切にしてます。まずは『面白い、やってみよう』と企画から商品化までのスピード感があるのが当社の特色です」と話すのは、J・ドリームの企画・営業の小松薫憲さん。
J・ドリームは、アミューズメント事業、カプセルトイ事業、物販事業を展開。カプセルトイ事業は6年前に発足し、キャラクター商品ではなく、オリジナルのガチャガチャを作っています。
5人体制でハイターゲット層(大人向け)を中心に毎月約15アイテムを戦略的に出しています。毎月15アイテム出せるのは、商品化までのスピード感があるからこそであり、商品によっては、約3カ月で商品化するものあるそうです。
小松さんは「確かに商品によっては、受注数が少ないこともたくさんありますが、それが財産になります。この商品の何が駄目だったのか、出してみないと駄目な理由もわからない」と話します。
今回紹介するは、5月に発売された「分子構造ラバーマスコットBC」「証言台×会見台マスコット2」。
学校の化学で習った分子構造がガチャガチャになるなんて、と驚くと同時に、正直、売れるのかと心配してしまいました。
しかし、ここには、J・ドリームのひとつの戦略がありました。
小松さんは「当社は強烈なキャラクターなどの知的財産があるわけでもありません。だからこそ、どうやって差別化するかが重要です」と話します。
「確かにニッチだけれども、絶対に刺さる人が一定数いる分野があります。例えば、学生時代に文系だった人よりも、理系の人をはじめ、化学や理科が好きな人は親しみやすいですよね。そこを狙った商品です」
「全国で何十万個売れるよりも、必ず好きな人が買う3万個を目指しています」と話してくれました。
確かにJ・ドリームの商品には厨房器具、大工道具、掃除道具などあまり身近ではないけれども、それに関わる職業の人が使うものを商品化しており、ニッチ中のニッチを追求してます。
証言台×会見台マスコット2については、昨年トランプ大統領の演説や小池百合子都知事の会見をヒントに、「当初、記者会見台をガチャガチャにできないかを考えましたが、カプセルに入れることは難しい。証言台ならカプセルに入れることができる」(小松さん)と考え、商品化に至りました。「証言台×会見台マスコット2」も法律に関わる人に興味が沸くような商品です。
2つに共通しているが知育玩具の要素があること。学校で勉強したことはなかなか覚えなくても、実際に手にして遊ぶ形で知識になることが多いです。とくに「分子構造ラバーマスコットBC」は、身近に感じれば親しみが沸き勉強が楽しくなる要素が詰まっています。ガチャガチャには、ただの子どもの玩具ではなく、知育玩具としての活用でき、「知」を楽しむ要素があります。それが、Jドリームのガチャガチャです。
しかも、「証言台×会見台マスコット2」では、「証言台×会見台マスコット1」が発売された時に、ユーザーが「山吹色のお菓子マスコット2」を使って、裁判の証拠品として遊んでいる写真をTwitterで上げているのを小松さんが発見して、「証言台×会見台マスコット2」と「山吹色のお菓子マスコット3」の再販を決めたそうです。
時代劇で「お主も悪よのう~」というセリフで、お菓子の下には、千両箱が…というシーンを見たことがありませんか。小松さんは時代劇を見てこれをガチャガチャにしたら面白いと考え、山吹色のお菓子マスコットとして商品化。
そして、多くのユーザーが証言台×会見台マスコットと山吹色のお菓子マスコットを使って遊んでほしいと思い、「証言台×会見台マスコット2」では、裁判長の机とハンマーと、海外風にリニューアルした会見台Bを追加。
「山吹色のお菓子マスコット3」は、バリエーションを変えて再度販売を決めました。しかも、ユーザーが両方の商品を手に取って遊んでもられるように、発売日を5月に合わせました。ここにも、オリジナルだからこそ、販売にも戦略を立てていることがわかります。
オリジナルの商品は正直、世に出してみないと、売れるか売れないかわかりません。だからこそ、J・ドリームは商品の差別化や販売などを工夫しながらものづくりをしているのです。
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「分子構造ラバーマスコットBC」は1回300円。水素、水、メタン、アンモニア、二酸化炭素の5種類。
「証言台×会見台マスコット2」は1回300円。裁判長の机とハンマー、会見台A(ナチュラル)、会見台A(ダーク)、証言台(ナチュラル)、会見台Bの5種類。
「山吹色のお菓子マスコット3」は1回300円。千両箱、大福、どらやき、ものなか、まんじゅうの5種類。
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