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連載

#20 「きょうも回してる?」

「ゲットワイルド退勤」ボタンのガチャ、本当に作った代表のこだわり

「ほんと、そっとしておいてください(笑)」

ドリームカプセルの代表の都築祐介さん=ドリームカプセル提供
ドリームカプセルの代表の都築祐介さん=ドリームカプセル提供

目次

ツイッターで「#ゲットワイルド退勤」というハッシュタグを目にしたことがある人もいるのではないでしょうか?昨年、ツイッタートレンドにあがった「Get Wild退勤」に「大爆笑した」経営者が、このおもしろさをガチャガチャにしてしまいました。それなのに、「別に売れなくてもいいんですよ」と利益を求めない姿勢を貫くわけとは――。ガチャガチャ評論家のおまつさん(@gashaponmani)が取材しました。
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ガチャガチャ評論家おまつの「きょうも回してる?」

ガチャガチャ業界ではされていない「当たり前」

ガチャガチャの商品はベンダー(機械を設置している会社)がメーカーの営業資料をもとに、どの商品を販売するかを決めて売り場に並べて販売をします。

ガチャガチャ業界が他の家電や食品などの業界との違う点があります。それは、商品の発売日が公表されないことです。
別の業界の商品は通常、新商品を出す際に宣伝し、お客様がどこで買えるかがわかるようにするのが一般的です。

しかし、ガチャガチャ業界は違います。今ではメーカーがSNSを活用して宣伝する機会が増えましたが、お客様は売り場に訪れて初めて新商品を目にします。
SNSが広まっていない時代には、メーカーが新商品を作っても、お客さんが知らずに販売され、どこで売っているのかわからず、何も知らないまま、その商品が無くなってしまいました。この傾向は今でも続いております。

このような環境下、お客様の不便さを少しでも解消したいという想いから、Twitterで売り場の店舗での販売開始の告知をするため、商品のサイズ感などを紹介し、出来る範囲で商品サンプルをプレゼントする企画を始めたのが、ドリームカプセルの代表の都築祐介さんです。

従業員に伝える「楽しく働けるところまででいい」

都築さんは2009年、サラリーマンでいることに限界を感じドリームカプセルを立ち上げ小売業を始めます。

インテリア雑貨の販売を中心に、ガチャガチャの機械の設置や運営をし、小売業として、自分の目で選んだ商品をお客さんにお勧めし、実際に買っていただく喜びを都築さんは大切にしています。

喜びを感じて欲しいという意味では、従業員に対しても同じ気持ちです。
「楽しく仕事がしたい。僕はサラリーマンが辛くて独立したので、従業員にも仕事が嫌で辛くてしょうがないと思って働いてもらうのが嫌です。だから従業員には『楽しく働けるところまででいいよ』と話しています」

ドリームカプセルの代表の都築祐介さん=ドリームカプセル提供
ドリームカプセルの代表の都築祐介さん=ドリームカプセル提供

100円玉の重みで感じる「手応え」

そして、都築さんは「営業スタッフがガチャガチャの機械から集金し、100円玉がいっぱい入った袋を持ち帰ってくると、一人で持ち上げられないほどの重さになる。『お金の重さ』を肌で感じ、商品を売る手応えを実体験できる」とお客さんにお勧めして買っていただける喜びと同時に、小売業ならではの充実感も社員に伝えています。

小売業だからこそ、現場のニーズが理解できるという考えがあるため、都築さんはガチャガチャの企画をメーカーに提案した上で、月3~4個を商品化しています。

ツイッターの「ゲットワイルド退勤」で大爆笑、そして…

今回紹介するのは「シチュエーションBGMボタン」。
この商品のきっかけは、昨年秋にTwitterで見かけたひとつのつぶやきでした。それは、Twitterでトレンド入りし話題となった「Get Wild退勤」です。このGet Wild退勤のツイートを新幹線の中で見た都築さんは大爆笑しガチャガチャにしたいと思い、メーカーのJドリームに声をかけ商品化が決まりました。

Get Wildは、1980年代のアニメ「シティーハンター」のエンディングテーマであり、TM NETWORKさんの曲です。
都築さんは現在48歳。ちょうどシティーハンターを見ていた世代であり、TM NETWORKが大好きだったそうです。

この企画をあるメーカーに話したところ「普通だったら、この企画が上がってもスルーされ、商品化までいかないです!尋常じゃないです!」と驚かれたそうです。それでも、都築さんは、Get Wild退勤が心に響いたため、商品化しましたが「この商品で儲けようなんて全然考えていません」と笑っていました。

GetWildがかかる「Leavework」=ドリームカプセル提供
GetWildがかかる「Leavework」=ドリームカプセル提供

「オジサンがオジサンに向けて作った商品」

確かにこの商品は、ボタンを押すとイントロが約30秒流れるだけです。ただそれだけです。ただ、5種類のうちGet Wildがかかる「Leave work」は、Get WildのCDを持っている人しかわかりませんが、フォントやボタンの色までこだわって作っています。

さらに、都築さんはこの商品について、「僕は団塊ジュニアの世代。シティーハンターを見ている人が多い世代です。だから同世代に向けて懐かしく思ってもらえれば」と話し、「40代は就職氷河期の世代で、あまりいい思いをせずに年をとってしまいました。この世代のサラリーマンの多くは中間管理職で間に挟まれ、奥さんと子供もいますし、住宅ローンもあります。ものすごい辛い人生を送っているかもしれません。この商品を手にとって、『あの頃は楽しかったな』と思ってもらえればいい。オジサンがオジサンに向けて作った商品です」と商品への想いを語ってくれました。

都築さんの話を聞いて、シチュエーションBGMボタンはまさに40代に向けたオジサンへの応援歌のように思えました。

商品化が進むにつれ、シティーハンターの公式にも取り上げられ、都築さん自身も反響の大きさに驚いたそうです。

シチュエーションBGMボタン。商品ディスプレイにはモザイクが=ドリームカプセル提供
シチュエーションBGMボタン。商品ディスプレイにはモザイクが=ドリームカプセル提供

「売れなくてもいい。そっとしておいて(笑)」

前述しましたが、現場のニーズをよく知っているのは売り場です。ベンダーがどんなものが流行っているかを理解しているため、メーカーと一緒に商品を作るケースがあります。

しかし、都築さんは違いました。会社を立ち上げたときの「辛いことはしない。楽しく働く」という想いと同じようにために、都築さんが楽しいことをしたいがために、生まれたシチュエーションBGMボタン。そのため、この商品にはドリームカプセルや都築さんの名前は一切ありません。都築さんは企画料等も一切もらわないそうです。ただ、Jドリームが作ったというだけにしてあります。

しかも、都築さんのドリームカプセルの店舗と公式ネットショップでしか販売はしません。だって、都築さんの想いだけで作ってしまった商品ですから。

しかもメーカーがこの商品で赤字にならないように、最低個数は全責任を持って買い取ったそうです。そこからは都築さんの熱意が伝わってきます。
最後に「ほんと、そっとしておいてください(笑)。別に売れなくてもいいんですよ。だって、僕は経営者なので、売れなくても自分の責任です。売れなくても『売れると思ったんだよなー!』とネタになりますからね」と都築さんは笑って話してくれました。

ちなみにこの商品はGet Wildがかかる「Leave work」以外の4曲はネタバレしないように、発売まで商品ディスプレイにはモザイクをかけて秘密にしてあります。販売開始と同時に発表されるので、どんな曲があるのか楽しみです。

      ◇
「シチュエーションBGMボタン」は5月下旬発売予定で1回300円。Leave work含め5種類。

ガチャガチャ評論家おまつの「きょうも回してる?」
この連載は、20年以上業界を取材しトレンドをチェックしているおまつさんが注目するガチャガチャを毎週金曜日(原則)に紹介していきます。

     ◇
ガチャガチャ評論家・おまつ(@gashaponmani
ガチャガチャ業界や商品などをSNSで発信中。著書に「ガチャポンのアイディアノートーなんでこれつくったの?ー」(オークラ出版)。テレビやラジオなどのメディアへの出演や素材提供も多数ある。

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